新しい私の部屋
なんの思い入れもない私物の中でも最も目立つ場所に座る
梨子「作曲……」
かつての私なら出来たのかもしれない
そんな事を考えながら目の前の大きな箱ーーピアノの鍵盤蓋を開ける
ずらりと並ぶ白と黒に指を伸ばし一つ音を出す
梨子「今の私には無理ね……」
この音がドレミのどれかも分からない
上に平積みされた楽譜を開けても何も読めない
梨子「……?」
その中でふと気付く
題名の無い手書きの楽譜
何枚も何枚も何枚もある
梨子「……私が、作ったのかな……」
素人の私でも一つ一つが違う曲だという事くらいは流石に分かった
梨子「……これをあげれば……って千歌さんも楽器はやってないんだったっけ」
一心不乱に勧誘してくる彼女の顔を浮かべながら楽譜を戻す
何も出来ない私にはーー彼女達の力になれない