ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
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ルビィ「え!? じゃあどうしてヨハネちゃんが」
シスター「そこが理由に繋がるわけですよ、彼女…善子さんもまた、とても運の悪い女の子でしてね」
シスター「遠足当日に雨が降る、クジ引きには一回も当たったことがない、何もないはずの道端で転んだりと…例を挙げるとキリがないのですが」
シスター「とにかく、そういったことが頻?に彼女の身に起きていたんです」
ルビィ「す、すごいね……」
シスター「そしてそんな善子さんが名乗りはじめたのがこのヨハネという名前でした」 ルビィ「え!? じゃあどうしてヨハネちゃんが」
シスター「そこが理由に繋がるわけですよ、彼女…善子さんもまた、とても運の悪い女の子でしてね」
シスター「遠足当日に雨が降る、クジ引きには一回も当たったことがない、何もないはずの道端で転んだりと…例を挙げるとキリがないのですが」
シスター「とにかく、そういったことが頻繁に彼女の身に起きていたんです」
ルビィ「す、すごいね……」
シスター「そしてそんな善子さんが名乗りはじめたのがこのヨハネという名前でした」 シスター「由来はこうです、自分がこんな目に遭っているのも、きっと神様の怒りによって堕天使にされてしまったからなんだと」
ルビィ「!」
シスター「そう、天使である自分の美しさが神の怒りに触れたからという、聞く人が聞けば頷きそうな理由をつけてね」
シスター「そうして彼女は自身を ─神によって悪魔に変えられた存在─ 堕天使ヨハネと名乗り、生きることにした」
シスター「勿論そんなことは実際には起きていませんよ、分かっているとは思いますけど」
ルビィ「うん」 シスター「ただ、善子さんにはこういう話が必要だった」
シスター「つまりはですね、この話は運の悪い彼女が前向きに人生を歩むために」
シスター「そう自身に言い聞かせている、いわば自己暗示のようなものだと私は解釈しています」
シスター「ですが、重なったんでしょうね…そういうところが」
ルビィ「じゃあ、ヨハネちゃんは…」
シスター「ええ、あの天使は善子さんに自分の面影を垣間見たんですよ」 シスター「そしてそんな善子さんを放っておけなくて、自分が見守ろうと思った」
シスター「彼女が善子さんを選んだのはそういう理由です」
ルビィ「ヨハネって名前を使っているのも、自分が本当の…天使だから?」
シスター「かもしれませんね、姿は見えずとも善子さんにそれを証明するために」
シスター「いかにも彼女が考えそうなことです」
シスター「だからこそ、私はあの天使が嫌いなんですけどね……深入りしすぎなんですよ毎回」 ルビィ「……」
シスター「人の命は重い…形を移ろい続ける私たちが背負うには余りにも過ぎた代物です」
シスター「なのに、そんなものを事あるごとに全て抱えようとすれば、いずれその身を亡ぼすことは想像に難くありません」
シスター「そういう理由も含めて不干渉にしているんでしょうが」
シスター「大馬鹿者ですよ彼女は、天使であることの意味を…全く理解していない」 ルビィ「…シスターさん、優しいんだね」
シスター「…どうでしょうね、自分では分かりかねます」
ルビィ「そうかなぁ? ルビィは優しい天使さんだと思うよ」
シスター「あまり実感が湧きませんが……まあ貴女の前なら、それも悪くはないかもしれませんね」クスッ
シスター「…っと話が逸れてしまいましたが、まあ彼女の事情は大体そんな感じです」
シスター「理解していただけましたか?」
ルビィ「うん、ありがとうシスターさん」 シスター「そうですか、それは何よりです」
ルビィ「でも、どうしてルビィに話してくれたの?」
シスター「ああ、それはですね……ルビィさんが一つだけ勘違いをなさっていたので」
ルビィ「勘違い?」
シスター「はい、自分では彼女を助けられない、貴女はそう言いました」
シスター「でもね、そうじゃないんですよ…守るのも、助けるのも」ポン
ルビィ「んっ…」
シスター「貴女にしか出来ないことなんです、私に頼むこと自体が間違っているんですよ」ナデナデ ルビィ「ルビィにしか、出来ない……」
シスター「先ほどの話を聞いて、ルビィさんはどう思いましたか?」
ルビィ「ルビィは…」
シスター「何か言いたいことがあったはずです、それが答えですよ」
トンッ
ルビィ「!」
シスター「いきなさいルビィ、大丈夫、そのときまで私が何とかするから」
ルビィ「…うん! ありがとう……お姉ちゃん!」タッ シスター「……お姉ちゃん、ですか…まあ確かに」
シスター「私らしくはなかったかもしれませんけど」
シスター「……それにしても」
シスター「あー全く嫌ですねえ、これじゃあ私も始末書ものじゃないですか」
シスター「しかも、おかげで私情がどうだの深入りしすぎだの自己満足だの、ぜーんぶ自分に跳ね返ってきてますし」
シスター「本当に冗談じゃありませんよ、最悪です。 ……けどまあ」
シスター「自分自身が正しいと思った判断を下す。これだけは何一つ曲げていませんがね」フッ
シスター「なればこそ、貴女たちも貫いて見せなさい……その想いを、誰が何を言おうともね」 ルビィ「ルビィがヨハネちゃんに出来ること…」
ヨハネ「私がルビィに出来ること……」
「それは──」 そこからの時間は早いか晩いか…しかし、少なくともその日が来るまでの間
それは二人にとって瞬くほどのものであっただろう
そう、あれからまたさらに日は巡り……そして
ついに3月───
黒澤ルビィ、卒業の日である。 ルビィちゃんとヨハネちゃんの優しさが心に沁みる…… ルビィ「……」
「ルビィ」
ルビィ「…お姉ちゃん」
ダイヤ「卒業おめでとう、また一つ大きくなりましたわね」
ルビィ「えへへ、ありがとうお姉ちゃん」 ダイヤ「一応お世辞とかじゃなく、本心よ?」
ダイヤ「ルビィ、貴女はこの一年で随分としっかりしたというか」
ダイヤ「少し大人びた…そんな気がしますわ」
ルビィ「そう、かな」
ダイヤ「ええ、立派ですわよとても」
ダイヤ「それもきっと夏休みに出来たお友達のおかげ、なのかしらね」フフッ ルビィ「そうかもしれない……ううん」
ルビィ「絶対そうだよ、ヨハネちゃんがいなかったらルビィは……」
ルビィ「…ねえお姉ちゃん」
ダイヤ「何かしら?」
ルビィ「ルビィね、もう少しだけここにいたいの」
ルビィ「お友達にね、お別れの挨拶…しなくちゃいけないから」
ルビィ「だから、お願い」
ダイヤ「…………そう、分かりましたわ」 ダイヤ「じゃあ私は先に帰っていますわね」
ルビィ「うん」
ダイヤ「……」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「なに?」クルッ
ダイヤ「今日は貴女の卒業祝いです」
ダイヤ「みんな、ルビィのことを待っていますからね」スタスタ
ルビィ「…うん」ニコ サーッ サーッ…
ルビィ「…………」
ルビィ「……」
ルビィ「…やっぱり来ないよね」
「どうしてそう思うのよ、そんなわけないでしょ?」
ルビィ「!! あ……」
ヨハネ「ま、心配させた私が悪いんだけどさ…ごめんね、遅くなって」 ルビィ「ヨハネちゃんっ!!」ダキッ
ヨハネ「わっ……とと、危ないわねもう」
ルビィ「会いたかった……」
ヨハネ「…ええ、私も」
ルビィ「…ねえヨハネちゃん、天界のほうは大丈夫だったの?」
ヨハネ「一応ね、追放の期限も過ぎて天界に戻ったあと」
ヨハネ「シスターがさ、色々手を回してくれたみたいで」 ヨハネ「ルビィの卒業の日にもう一度だけ、会わせてやってくれないかってね」
ルビィ「…ルビィたちの為に」
ルビィ(約束、守ってくれたんだ…)
ヨハネ「…今回は頭が上がらないわね、感謝してもしきれないわ」
ルビィ「そうだね、ルビィも…シスターさんにお礼言いたかったな」
ヨハネ「大丈夫、私が伝えておくから」
ルビィ「じゃあ、お願いしようかな」 ヨハネ「ええ……ってゆっくり話をしている場合じゃなかったわ」
ルビィ「え?」
ヨハネ「あんまり時間がないの、今日中に帰るって約束だから」
ルビィ「そっか…」
ヨハネ「うん、だからねルビィ」
ヨハネ「私とライブ、見に行かない?」
ルビィ「…?」 ─
ヨハネ「よかった、ギリギリ間に合ったみたいね」
ルビィ「…スクールアイドル?」
ヨハネ「ええ、この近くで卒業記念のライブをやるって話を聞いたの」
ヨハネ「ルビィ、好きだったでしょスクールアイドル? だから一度くらい」
ヨハネ「あなたと一緒に、見ておきたかったのよね」
ルビィ「ヨハネちゃん…」 〜〜♪ 〜〜♪
ヨハネ「素敵ね、ルビィが好きになる気持ち…分かった気がする」
ルビィ「ありがとう、ヨハネちゃん」
ヨハネ「…見てたわよ、卒業式」
ルビィ「!」
ヨハネ「とても輝いていたわ」
ルビィ「そんなこと…」 ヨハネ「私にとってはそう見えたの、少なくとも胸を張っていたあのときの貴女は」
ヨハネ「ここにいる彼女たちの誰よりも輝いていた」
ルビィ「…!」
ヨハネ「ねえルビィ、スクールアイドルやりたいんでしょ」
ルビィ「…うん」
ヨハネ「ならその道を突き進みなさい、自信をもって」
ヨハネ「大丈夫、ルビィならできるわ、私が保証する」 ルビィ「…ありがとう、ヨハネちゃん、ルビィ頑張るね」
ヨハネ「ええ、応援するわ、もちろん最後までね」
ヨハネ「見届けるのが天使の仕事だから、私がルビィに出来ることはそれしかないけど」
ヨハネ「でも、忘れないでルビィ……どんなに遠くに離れていたって私が傍にいるってこと」
ヨハネ「いつでも貴女を見守っているってこと」
ヨハネ「それだけはね、伝えたかったの」ダキッ
ルビィ「うん……うん!」ギュウ ヨハネ「……そろそろ時間みたいね、それじゃあ…」
ルビィ「ま、待ってヨハネちゃん!」
ヨハネ「ルビィ?」
ルビィ「帰っちゃう前にこれ…貰ってほしいの」
ヨハネ「髪飾り? ……! 私の羽…」
ルビィ「うんお守り、ルビィからのプレゼント」 ヨハネ「私に…」
ルビィ「あのね、ルビィねヨハネちゃんやシスターさんにお話を聞いてから、色々考えてみたの」
ルビィ「天使さんのこと…それでね、ずーっと思ってたことがあるんだ」
ヨハネ「……なに?」
ルビィ「ヨハネちゃん、ヨハネちゃんが不幸ならルビィがずっと守ってあげる」
ヨハネ「!」 ルビィ「ヨハネちゃん、さっきルビィに傍にいるっていったよね」
ルビィ「ルビィも同じだよ、その髪飾りはねルビィの気持ち」
ルビィ「ヨハネちゃんから悪いものがなくなりますようにっておまじないをかけながら、作ったんだ」
ヨハネ「もしかして、ずっとこれを?」
ルビィ「うん、間に合ってよかった」
ヨハネ「ルビィ……あなた」 ルビィ「ヨハネちゃん、だから大丈夫だよ…この先もずっと」
ルビィ「ヨハネちゃんが幸せになれるように、ルビィもたくさん頑張るから」
ルビィ「ルビィと会ったことが不幸じゃなかったって思えるように…ずっと…ずっと! 頑張るからっ!!」
ヨハネ「…っ!!」
ルビィ「だから……元気でね、ヨハネちゃん…ルビィのこと、忘れないでね」ポロポロ
ヨハネ「……なに、いってるのよ…」
ヨハネ「忘れるわけ……ないじゃないっ…」ポロポロ
ルビィ「…えへへっ、よかったぁ……」
ルビィ「……」
ルビィ「…ばいばい、ヨハネちゃん」ニコッ ─
ルビィ「ただいま」
ダイヤ「おかえりなさい……もういいの?」
ルビィ「うん…ねえお姉ちゃん、お話しがあるの」
ダイヤ「話し?」
ルビィ「あのね、ルビィね───」 ヨハネ「……」
シスター「無事、済んだようですね」
ヨハネ「……ええ」
ヨハネ「……言っておくことがあるわ」
シスター「なんでしょうか?」
ヨハネ「今日のこと、ありがとうございました……私と、ルビィからです」 シスター「そうですか」
ヨハネ「……それと」
シスター「まだ何か?」
ヨハネ「私ね、やっぱり人間に入れ込むことにするわ…最後まで」
ヨハネ「あの子に胸を張れるような、そんな天使でありたいから」
シスター「……好きにしなさい、貴女の価値観など知ったことではありませんから」クス
ヨハネ(ルビィ、見ててね……私、負けないから)キラ ========
─それから3年後……
======== ─浦の星女学院
「スクールアイドル! スクールアイドルやりませんかー!」
「あなたも! 貴女も! ってあれ…?」
「…………」
「気になるの?」
「え…ルビィは」
「…………」
「あの、ライブとかやるんですか!?」
「いやあ、それはまだ決めてないんだけど……」 「でも一応は……」
ガサガサッ
「…って、ん? なに?」
「嘘!? ……えっ…いや、ちょっと待って…………あっ」
「!」
「いやああああああ!落ちるううううううう!!」
ドンッ 「ええ!? 木の上から女の子が降ってきたよ!?」
「いっっ…たぁ〜……ああもう、最悪……」
「何なのよもう……ん?」
「…………」
「……何よ」
「もしかして善子ちゃん?」
「いや、誰よ?」
「マルだよ、花丸! ほら、幼稚園のとき一緒だった」
「幼稚園? あー確かに、見覚えがあるような……」 「やっぱり! ねえルビィちゃんは……初めて会う…」
「ルビィ、ちゃん?」
「……ぁ……」
「ちょ…貴女なんで泣いてるのよ! 私何かした!?」
「ルビィちゃん!? ど、どうしたの!?」
ナンデコウナッテルノ!? ワカラナイヨ! ヨウチャンタスケテ! エエッ!?
ワーワー …… ─
ヨハネ「……すごい騒ぎね、まあ仕方ないんだけど」
ヨハネ「それにしてもこれは偶然か、運命か…」
ヨハネ「いや、どっちでもいいわね」
ヨハネ「私たちのやることは決まっていて、変わることはないから」
ヨハネ「私が貴女の傍にいて、貴女が私の傍にいて」
ヨハネ「いつか約束を果たすそのときまで、きっと」 ヨハネ「だからねルビィ、見届けるわあなたの幸せ」
ヨハネ「“私たち”が最後まで…約束よ」
「ねえ、そんなところで何してるの?」
ヨハネ「! ………そうねぇ…」
ヨハネ「多分……待ってたのよ」
「ふーん…ねえ、誰を?」
ヨハネ「……フフッ」
ヨハネ「それはね───」 ──────
ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
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