ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
そこからさらに月日が経って…
ルビィ「ヨハネちゃん! メリークリスマス!」
ヨハネ「メリークリスマス、元気ねえルビィは」
ルビィ「えへへっ、だってお母さんたちがお友達と遊んできてもいいよって言ってくれたから…嬉しくて」
ヨハネ「そう、よかったわね」
ルビィ「うん! あっそうだ、ヨハネちゃんこれ」ハイ ヨハネ「…マフラー?」
ルビィ「その格好だとちょっと寒いと思って、どうかなぁ?」
ヨハネ「うん、大丈夫…暖かくなったわ」
ヨハネ「ありがとね、ルビィ」
ルビィ「そっか、よかった」ニコッ ヨハネ「それにしても賑わってるわねえ…流石クリスマス」
ルビィ「飾りつけも綺麗だもんね、キラキラしてて」
ヨハネ「そうね、でもその割にはあまり嬉しそうじゃないように見えるけど」
ルビィ「えーっとね、多分…これよりずーっと綺麗なものを見てるから、かなぁ」
ヨハネ「ふーん、そんなのあったかしら?」
ルビィ「ヨハネちゃんのことだよ?」 ヨハネ「私?」
ルビィ「うん、ヨハネちゃんから貰った天使の羽」
ルビィ「あれがね、一番綺麗だから、ルビィの宝物なんだぁ」
ヨハネ「そ、そう…? まあ、そう言われると悪い気はしないわね」
ルビィ「あははっ、ねえヨハネちゃん、次はあっちに行ってみようよ」タッ ヨハネ「ちょっとー転んだら危ないわよー!」
ルビィ「大丈夫だよー! 早く早く!」フリフリ
ヨハネ「……全く」クス
ヨハネ「今行くから待ってなさい!」タッ
……
… ─
ルビィ「あー楽しかった!」ニコニコ
ヨハネ「本当、珍しいくらいのはしゃぎっぷりだったわね」
ヨハネ(いつも学校や習い事で我慢してたから、その反動かしらね……なんにせよ)
ヨハネ「楽しめたんなら、それだけで十分よね」フフッ
ルビィ「ヨハネちゃん?」キョトン
ヨハネ「別に? なんでもないわよ」 ヨハネ「それよりそろそろ帰らないと、みんな心配するわよ」
ルビィ「あっ本当だ、もうこんな時間…」
ヨハネ「先に行って、後で私も部屋に戻るから」
ルビィ「うん、じゃあ先に戻ってるね!」
ヨハネ「ええ、また後でね…………ふう」
シスター「随分お疲れのようですね」
ヨハネ「まあね、色々連れ回されたからさ…………って」
シスター「その割には気持ち悪いくらいに顔が綻んでますが」
ヨハネ「だーーっ! 神出鬼没かあんたは!!」バッ シスター「化け物を見たかのような反応しないでくださいよ、傷つきますね」
ヨハネ「だったらいきなり出てこないで!」
シスター「私なりに気を遣っていたのですがね、彼女と二人きりのほうがよかったでしょう?」
ヨハネ「……まあね」
シスター「妙なところで素直ですよね」
ヨハネ「うっさいわね…で、何か用?」
シスター「はい、年の瀬も迫ってきたので始末書を持ってきて差し上げましたよ」
ヨハネ「はあ!? ……いや、ちょっと…このタイミングでやるの!? どういう理屈よ!」 シスター「年末が一番気の緩みやすい時期なんですって、このどさくさに紛れて面倒ごとは済ませておきなさい」
ヨハネ「ホンットいい性格してるわよねあんた……分かるけどさあ」
シスター「なら決まりですね、ああそれと」
ヨハネ「まだ何かあるの?」
シスター「ええ、貴女がいない間に溜まっていた書類もこちらにありますので、それもお願いしますね」
ヨハネ「…何、嫌がらせ?」
シスター「半分はね、残りは単にこれが私の仕事だからです」 ヨハネ「…最悪だわ」
シスター「恨むなら私に当たらず、そこに思う存分書き殴ってください」
シスター「では今日の辺りはこれで…………いや、違いますね」
シスター「最後に一つ、言い忘れてたことが」
ヨハネ「…?」
シスター「ダイヤさんが、貴女に感謝していましたよ」 ヨハネ「! ルビィのお姉さんが…?」
シスター「はい、貴女のおかげでルビィが最近よく笑うようになりました、ありがとうございますと…独り言のようなものでしたが」
ヨハネ「そう、だったの」
ヨハネ「ねえ……どうしてそれを私に教えたの?」
シスター「決まっているでしょう“仕事だから”ですよ」
ヨハネ「ブレないわね、貴女は……そういうところは、尊敬してるわ」
シスター「それはどうも……さて、今度こそ戻りますか」
シスター「ルビィさんによろしく伝えておいてください…では」バサッ ヨハネ「…行ったわね」
ヨハネ「それにしても、この量……終わらせられるかしら…?」タメイキ
ヨハネ「けどまあ、やるしかないわね…私の不始末だし」
ヨハネ「ちゃんと終わらせて、早くルビィに付き合ってあげなくちゃ」
ヨハネ「きっとそれが…今の私の“仕事”だから」 申し訳ありません、ある事情によりssの続きが書けない状況となってしまいました
落ち着いて書き込み出来るような状態になったらもう一度スレを立てて完結させようと思っていますので
このスレは一度落としてもらえるとありがたいです。 ツイッターで本人フォローしてるから知ってるけど北海道在住だから仕方ない >>137
135です、トリップ付けてみましたがちゃんと表示されているでしょうか?
これで本人だと証明出来ればいいのですが >>139
ごめんなさい
正直なりすましを疑ってたので
いつか再開するのを待ってます したらばの方も含め再開楽しみにしてます
余震等気を付けて >>142その認識で大丈夫です
>>68-73で触れていますがヨハネは善子の姿をした天使
シスターはダイヤさんの姿をした天使という設定で話を進めています
それとご心配いただきありがとうございます。
現在自分の地域は特に大きな問題もないのでこのままスレが残っていればまた再開出来そうです
早ければ翌日あたりに更新するかと思いますのでよろしくお願いいたします。 そして…
─新年
ルビィ「ヨハネちゃん、明けましておめでとう!」
ヨハネ「ええ、今年もよろしくねルビィ」
ルビィ「うん! じゃあルビィ他の人に挨拶しにいってくるから」
ヨハネ「はいはい、いってらっしゃい」テヲフリ
ヨハネ「…大変ねえ、あの子の家も」
シスター「家柄的に仕方ないでしょう」 ヨハネ「…いつの間にかいるし、もう慣れたけど」
シスター「向こうのほうに顔を出すわけにもいきませんから」
ヨハネ「あー、ややこしいことになるもんね」
シスター「いやはや、同じ顔というのも中々面倒なものです」
ヨハネ「ねえ、あんたにも挨拶しなきゃ駄目かしら」
シスター「結構、特にもらって嬉しいものでもありませんので」
ヨハネ「あっそう……ところで思ったんだけどさ」
シスター「なんでしょうか」 ヨハネ「クリスマスのときもそうだけど、私たち天使がこういう行事に顔出すのってどうなのかしらね」
シスター「人によっては刺されかねませんね、ですがそれはあくまで人間側の都合ですので」
シスター「私たち天使には関係ない、ということにでもしておきましょうか」
ヨハネ「あんた意外と図太いわよね…」
シスター「人に下ってしまったらそれはもう天使ではありませんよ」
シスター「まあそこはともかくとして、さっきの言葉はあんまりじゃないですか?」
ヨハネ「何のことよ?」
シスター「今年もよろしくとルビィさんに言っていたでしょ、いいんですか?」 ヨハネ「!」
シスター「一緒にいられる時間など、一年どころかあと一月程度しかないというのに」
ヨハネ「……それは」
シスター「貴女のことを心配しているわけではありません、寧ろどうでもいいです」
ヨハネ「言うと思ったわ」
シスター「ですが」
シスター「彼女は違います…ルビィさんにとって、数ヶ月の時間を一緒に過ごしてきた貴女は大切な存在なんですよ」
ヨハネ「……」
シスター「…以前私は天使について余計なことを言うなと貴女に忠告しました、しかし」
シスター「彼女と関わったそのけじめは、つけるべきものだと思いますよ」
シスター「貴女もルビィさんのことを大切に想っているのなら、尚更」 ヨハネ「……そうね、あんたの言う通りだわ」
シスター「…“今回は”物分かりがいいですね」
ヨハネ「おかげさまで」
シスター「…そうですか、とにかく」
シスター「私からは以上です、あとは貴女が自分でどうにかしてください…では」フワッ
ヨハネ「……けじめ、ね」
ルビィ「ヨハネちゃんただいま! あれ? どうしたの?」
ヨハネ「ルビィ……ううん」
ヨハネ「何でもないわよ」ニコッ ルビィ「ならいいんだけど」
ヨハネ「ええ…」
ヨハネ「……」
ヨハネ「……ルビィはさ」
ルビィ「ん?」
ヨハネ「私と一緒にいて楽しい?」
ルビィ「うん、楽しいよ? とっても楽しい」 ヨハネ「……そっか」
ルビィ「やっぱり元気ないね…ヨハネちゃん大丈夫?」
ヨハネ「平気よ、それよりルビィ」
ルビィ「なに?」
ヨハネ「今じゃなくてもいいわ、でも近いうちに時間を作ってもらえるかしら?」
ヨハネ「あなたに話しておきたいことがあるの…大事な話よ」
ルビィ「大事な…?」
ヨハネ「そう、お願い」
ルビィ「……」
ルビィ「わかった」 ヨハネ「うん、言いたいことはそれだけだから…またね」
ルビィ「一緒に帰らないの?」
ヨハネ「そうしたいけど今日はちょっと用事があるから、ね…」
ヨハネ「せっかくの新年なんだもの、家族で楽しく過ごすのもいいんじゃない?」
ルビィ「そうだね、じゃあまたねヨハネちゃん!」タッ
ヨハネ「ええ、また明日」
ヨハネ「…………」
ヨハネ「楽しい、か……あまり聞きたくなかったわ、その言葉」クルッ 二週間後…
ルビィ「ヨハネちゃんヨハネちゃん、見てお星さま! 綺麗だねぇ」
ヨハネ「本当ね、でもこんな時間に家を出て良かったの?」
ルビィ「少しの間だけならいいってお姉ちゃんが」
ヨハネ「そう…悪いわね」
ルビィ「ううん、それで大事なお話しって?」 ヨハネ「私がここに来た理由、言っておこうと思って」
ルビィ「ヨハネちゃんの?」
ヨハネ「うん……あと少しで、戻らなくちゃいけないから」
ルビィ「…………やっぱりそうなんだね」
ヨハネ「…ごめんなさい」
ルビィ「ヨハネちゃんが謝ること…」
ヨハネ「ううん、私が悪いのよ」
ヨハネ「最初にルビィと出会ったの、わざとやったんだから」 ルビィ「わざと……?」
ヨハネ「貴女のことを見かけてからね後をつけていたの、途中で木に引っかかって落ちたのは想定外だったけど」
ルビィ「どういうこと…?」
ヨハネ「ルビィ、わたし前に友達がいるっていったわよね」
ルビィ「うん」
ヨハネ「その友達ね、あなた担当の天使だったのよ」
ルビィ「え……!? ルビィの…?」
ヨハネ「今ここにはいないけどね、それも私のせいだけど」 ルビィ「…えっと、じゃあ」
ルビィ「ヨハネちゃんはルビィがそのお友達とそっくりだったから、ルビィのところに来たってこと?」
ヨハネ「その通りよ、信頼できる彼女が選んだ子ならきっとって…そんな自分勝手な理由で貴女のことを巻き込んだの、最低でしょ?」
ルビィ「でも、理由があったんだよね?」
ヨハネ「そんなの、言い訳にもならないわ……ルビィ」
ヨハネ「本当にごめんなさい…今まで私の都合で貴女を巻き込んだこと、ずっと謝りたかったの…」
ルビィ「ヨハネちゃん……それでも」
ルビィ「ルビィは楽しかったよ、ヨハネちゃんと一緒に暮らせて」
ヨハネ「─!」 ルビィ「だから、ありがとう」ニコッ
ヨハネ「やめてよ……そんなこと言われたら、私…」
ヨハネ「……私は…」
ヨハネ「…ごめんね、それと…ありがとうルビィ」
ルビィ「うん」
ルビィ「ねえヨハネちゃん、ここに来た理由…ルビィに教えて?」
ルビィ「ルビィね…ヨハネちゃんのこと、もっと知りたいから」 ヨハネ「ルビィ…そうね、何でも協力するって言ったのは私だしね……それに」
ヨハネ「ルビィのお願いを断りたくなんてないもの」クスッ
ルビィ「えへへっ、そっか」
ヨハネ「でもね、あんまり聞いてて気分のいいものじゃないかもしれないわよ」
ルビィ「いいよ、それでも」
ヨハネ「ありがとう、なら聞いてくれる?」
ルビィ「うん」 ヨハネ「……昔ね、今よりも自分のことが嫌いな時期があったの」
ヨハネ「他とは違う自分が…嫌だった」
ルビィ「……」
ヨハネ「私さ、天使のくせにすっごい不幸体質でね…運が悪いっていうか」
ヨハネ「自分が呪われてるんじゃないかって…そう思っていたくらいには酷かったの」
ルビィ「呪い?」
ヨハネ「ええ…私が担当した人間ね、ほとんど寿命じゃなくて事故で死んじゃうの」
ルビィ「!」
ヨハネ「もちろん他の天使にもそういったケースはあるわ、でも私の場合…それが明らかに他より多いのよ」
ヨハネ「そんなものだから周りの天使の姿が変わらないまま、私だけ体の移り変わりが激しくてさ……おまけに妙な噂までたって」 ルビィ「うわさ?」
ヨハネ「あいつは関わった人を不幸にさせる…堕天使って、そう呼ばれた」
ルビィ「! そんな、ひどいよ…」
ヨハネ「まあそんなことを言った奴らはごく一部で、その連中もシスターに即告発されて追放されたんだけどね」
ヨハネ「あの人、そういうの凄く嫌うタイプだし」 ルビィ「シスターさんが…」
ヨハネ「ただ、それ以降も私が関わった人間が事故に遭う件数が減ることはなかった」
ヨハネ「だから、みんな直接口には出してなくても、それが偶然だと分かっていても」
ヨハネ「もしかしたらって、心のどこかではそう思っていたんじゃないかしら……私自身もそうだったから余計に、ね」
ヨハネ「そして……そんな“空気”は少しずつ、けど確実に周りに侵食していって」
ヨハネ「いつの間にか、私は一人になっていたの」 ルビィ「……」
ヨハネ「そんな状態がしばらく続いたころかしらね、あの子に出会ったのは」
ルビィ「ルビィの……」
ヨハネ「そう、純粋で芯の強い子だったわ」
ヨハネ「子供が老人になるまでずっと見守って、見届けて…人間のことが大好きで」
ヨハネ「特に、まだ見ぬ夢に思いを馳せる無垢な子供が…彼女は好きだった」 ヨハネ「今は彼女の性格を知っているから納得出来るんだけど、最初に会ったときは驚いたわよ」
ルビィ「どうして?」
ヨハネ「だってその子ったら、いきなり私に近付いてきたかと思えば」
ヨハネ「手を引っ張ってこう言うんだもの、“一緒に遊ぼう”って」
ヨハネ「……この子、一体何考えてるんだろうって思ったわ」
ヨハネ「私の噂知らないのかしら? って……でもね、正直そんなことよりも」
ヨハネ「こんな私に、真っ直ぐ自分の想いを伝えてくれたことが…何より嬉しかった」 ルビィ「うん」
ヨハネ「不幸とか、呪いとか、どうでもよくなりそうなくらい…その笑顔は眩しくて」
ヨハネ「気付けば肩を並べて歩いていた、彼女の隣にいるととても心が安らいで」
ヨハネ「私は救われたような気になったの…それが私と彼女の出会い」
ルビィ「大好きなんだね、その天使さんのこと」
ヨハネ「……そうね、だからこそ」
ヨハネ「今になって後悔しているんでしょうね」 ルビィ「え?」
ヨハネ「私と彼女が仲良くなってしばらく経ったある日、それは起こったの」
ヨハネ「私が担当していた人間が亡くなってね、珍しく…寿命だったわ」
ヨハネ「だから余計にかしらね、その人を最後まで見届けたいって」
ヨハネ「体はもう、今使ってるこの女の子のものになってたんだけどね」
ルビィ「今のヨハネちゃんに?」
ヨハネ「ええ、違う姿になってしまったけれど、それでもって……ただ」
ヨハネ「一つだけ、大きな問題があったの」 ルビィ「…?」
ヨハネ「彼女の葬式…その当日がね、一年に一度行われている天界の重要な会議と重なっちゃってさ」
ヨハネ「…………私、行かなかったのよ」
ルビィ「……」
ヨハネ「天界のほうに」
ルビィ「!」 ヨハネ「当然、騒がれたわ…異例の事態だ、どういうことだって」
ヨハネ「話も私の上司であるシスターのところにすぐに行って…」
ヨハネ「彼女に問い詰められたの…なんでこんなことをしたのか、その理由を」
ヨハネ「今思えばあのとき、素直に自分の非を認めて謝罪していれば……罰も今よりは軽いもので済んだかもしれないわね……だけど」
ヨハネ「…私には出来なかった」 ──
─
(何故、無断で会議を欠席したのですか…答えてください)
(今、貴女のせいで天界は大騒ぎになっているんですよ)
(……それは、見届けてあげたいと、思ったから)
(見届ける? ……ああ、そういえば先日は貴女が担当していた人間の葬儀でしたね)
(成るほどそうですか、そんなことのために) (…は? 何よ、そんなことって)
(何か問題でも?)
(人の死を見届けるのがどうでもいいっていうの!?)
(私たちにとっては天使の意義を、これからのことを、改めて認識する会議のほうがよほど重要です)
(あんな当たり前のことを話す行事がどれほどのものだっていうのよ!)
(……いい加減にしてください、あなた天使のことを、自分を何だと思っているんですか) (先ほど見届けたいからと言いましたよね、自惚れも大概にしてくださいよ)
(自惚れって何が!)
(私たち天使は人間を観察し、記録するのが仕事です……つまり)
(人間は私たちのことを知らないわけです、貴女は担当した人間のことを知っているつもりでも)
(向こうからすれば赤の他人、何の関わりもない、どこかにいる誰かなんですよ)
(!) (別に、人の死がどうでもいいとは思っていませんよ私は、でもね)
(その出来事は貴女が思っているほど、天使にとって身近にあるものではありません)
(彼女の死、それは彼女が送ってきた人生の中で出会い、苦楽を共にし歩んできた)
(親族や伴侶、ご友人が見届けるべきものでしょう)
(それは……)
(生涯を終えれば次の人へ、それが私たちの役目です)
(貴女のやっていることは誰のためにもならない、ただの自己満足ですよ)
(馬鹿馬鹿しいにも程があります)
(っ!!) (…なんですかこの手は)
(……違う…天使は、そんなのじゃないっ!)
(決めたからには最期まで! 終わりの間際まで傍にいるのが天使の仕事だ!)
(家族や友人が見届けるって言ったわね! でも死んで魂になったその後はどうするのよ!!)
(そこで支えるために…私たちがいるんでしょうが! 見てるんでしょうが!)
(それを馬鹿馬鹿しいだなんて…言ってんじゃないわよっ!!) (……)
(はあっ……はあっ……)
(…………反省の余地なし、ですか)
(……あ…)
(そこの天使を連れていきなさい、上には私が報告します) (待ってよ…私は……っ…!)
(重要会議の無断欠勤、加えて上司に対する反抗、暴行未遂…)
(それ相応の罰が下ることでしょう、覚悟しておくことですね)
(……くぅ……ああぁっ…)
(…さようなら)
──
─ ヨハネ「……なんか私の今までを否定されたみたいで頭に来てさ」
ヨハネ「彼女の言ってることも正しかったからそれが余計に腹立って」
ヨハネ「気が付いたら、また一つ罪を増やしてた」
ルビィ「……」
ヨハネ「結果そのせいで私は約四ヶ月の天界追放…追い出されることになっちゃったわけよ」
ヨハネ「それだけなら…まだよかったんだけどね」
ルビィ「他にも何か、あったの?」 ヨハネ「ええ、あの子…ルビィの天使が、私の罰に対して見直してほしいと上にかけあったって話を聞いたの」
ヨハネ「あの子らしいわよね……そんなこと、しなくていいのに」
ルビィ「それで…どうなったの?」
ヨハネ「問題にはなったけどあの子は私と違って信頼されてるから特に大事にはならなかったみたい」
ヨハネ「けど、私が刑を終えるまでは、私と会ってはいけないことになってね…別の仕事を任されてる」
ヨハネ「今思えばそれにも合点がいくわ、ルビィのお姉さん…黒澤ダイヤはあの人が担当しているんだからね」
ヨハネ「姉妹なら当然一緒にいる時間は多いから、その分あの人と会う回数も増えるし」
ヨハネ「それなら、彼女の部下である私にも接触する機会が多くなると考えたんでしょうね」 ルビィ「それじゃあ、その天使さんとは」
ヨハネ「あの日以降会ってない、全部私のせいよ」
ヨハネ「……だからこれはその償い、いや、やっぱり自己満足なのかしら…」
ルビィ「え?」
ヨハネ「私が代わりに見守らなくちゃって…ルビィのこと、あの子がいない分まで」
ヨハネ「だから私は貴女のところへやってきたの」
ルビィ「……そうだったんだ」
ヨハネ「…ええ」
ヨハネ(最初はそう、だったんだけどね…) 待ってました
保守するので無理のないペースでお願いします ヨハネ「これで私の話はおしまい、結構長くなっちゃったけど…分かってもらえたかしら?」
ルビィ「うん…」
ヨハネ「そう、よかったわ」
ルビィ「……ねぇヨハネちゃん」
ヨハネ「なに?」
ルビィ「ヨハネちゃんは、ルビィと会ったこと…運が悪いって思ってる?」
ヨハネ「……」
ルビィ「えっとね…あんまり上手く言えないけど、ルビィと今まで一緒にいたのもその天使さんのためで…だから……」
ルビィ「本当はルビィといるの、嫌…だったのかなぁって思っちゃって」 ヨハネ「…ルビィ、ちょっとこっち来て」
ギュウ
ルビィ「え?」
ヨハネ「飛ぶわよ、しっかりつかまっててね」バサッ
ルビィ「ええっ!?」
フワッ
ルビィ「ほ、本当に飛んでる……」
ヨハネ「いい? そのままね、手を離したら駄目よ」バサッ バサッ
ルビィ「う、うん」ギュッ ルビィ「でもヨハネちゃん、なんでいきなり…」
ヨハネ「うーん、そうね」
ヨハネ「ルビィ、前見てみて」
ルビィ「前? …………!!」
キラキラ
ヨハネ「どう? ちょうど星がよく見える位置まで昇ってみたの」
ルビィ「……綺麗」 ヨハネ「この景色が、私たちが積み上げてきたものよ、ルビィ」
ルビィ「え?」
ヨハネ「子供を、人間を抱きながら飛ぶなんて、普通なら考えられないの」
ヨハネ「でも貴女ならきっと大丈夫って思った、それはルビィも同じでしょ?」
ルビィ「うん、ヨハネちゃんはルビィを落とすようなこと絶対しないもん」
ヨハネ「そう、だからこの景色を見ることが出来たの」
ヨハネ「私たちが今まで一緒に過ごしてきて、お互いのことを知って、深く信頼しているから出来たことなのよ」
ヨハネ「ねえルビィ、それは嫌な人相手にでもやれることかしら?」ニコッ ルビィ「…ううん、思わない」
ヨハネ「でしょ?」
ヨハネ「私はね、ルビィのことちゃんと好きだって思ってるわよ、友達の天使のこととか関係なくね」
ヨハネ「確かに最初はその子のため、そして自分のためにやっていたわ…そこは否定しない」
ヨハネ「でもね、ずーっと一緒にいて二人で遊んだり、話したり…一緒に何か作ってみたり」
ヨハネ「たまには二人でシスターに怒られたりしてさ…フフッ、そうやって……」
ヨハネ「…そうやって生活していって、気付いたのよ」
ヨハネ「友達に似てるからでも、償うためでもない」
ヨハネ「私が好きになった、ルビィだから…力になってあげたいんだって」 ルビィ「ヨハネちゃん…」
ヨハネ「だからねルビィ、我慢しなくていいのよ」
ルビィ「!」
ヨハネ「私のためにそこまでしなくていい、言いたいことがあるなら…今ここで」
ヨハネ「言っていいのよ…ここには誰もいないから」
ヨハネ「私とあなたの、二人だけだから」 ルビィ「…………うん」
ルビィ「ヨハネちゃん…あのね、ルビィね」
ヨハネ「ええ」
ルビィ「うそ、ついてたの」
ルビィ「ヨハネちゃんが、帰るって…きいたとき…ルビィ」
ルビィ「たのしかったって言ったけど…っ……でも、ちがうの」
ヨハネ「……」
ルビィ「ほんとうは、ずっと、ぃやだ……って…」 ルビィ「かえっちゃ、いやだって……」ポロポロ
ヨハネ「…うん」
ルビィ「ヨハネちゃあぁぁん……いやだ、いやだよ…!」
ルビィ「帰らないでよ……ルビィのこと、置いてかないで…」
ルビィ「うぁ……うわああああぁぁぁぁん!!!」
ヨハネ「…………そう、よね…離れたくないわよね」
ヨハネ「私、も……おなじよ。ルビィ…」 ─それから…
ルビィ「…………」スヤスヤ
ヨハネ「…………」スゥースゥー
シスター「……ようやく寝ましたか」
シスター「全く、どうしてこんなお守みたいなことをしなくてはいけないのか」
シスター「はあ……ダイヤさんが心配していたからといって様子見など、するべきではありませんでした」 シスター「そもそも本人と顔を合わせてもいけないのなら報告の仕様がありませんし…ああ、私としたことが迂闊でした」
シスター「とんだ働き損です」
ルビィ「……うぅん……」ギュッ
シスター「…おっと、不味いですね、起こしてしまいましたか?」
ルビィ「……ヨハ、ネちゃん…」
シスター「…………ああもう…だから言ったじゃありませんか」
シスター「入れ込み過ぎるなって」 数日後…
ルビィ「ねぇ、ヨハネちゃん」
ヨハネ「なに?」
ルビィ「もう少しで一月……終わっちゃうね」
ヨハネ「…そうね」
ルビィ「うん……」
「…………」
ルビィ(…いいのかな、このままで)
ルビィ(このまま何もしないで、ヨハネちゃんとお別れして…いいのかな) ─
「わあ! クマさんのぬいぐるみだぁ! これ貰っていいの?」
「ええ、私からの誕生日プレゼントよ」
「ありがとうヨハネちゃん! ルビィ大事にするね」
「ヨハネちゃん、はいこれ!」
「ルビィが出来ることってこれくらいしかないから」
「……でも、こんなの割に合わないわよ」
「ヨハネちゃんに貰って欲しいの」
「ありがとねルビィ…大切にする」
「うん!」 「私ね、正直こんな関係はすぐに終わるものかと思ってたわ」
「うん、ルビィも」
「ルビィもね、本当は夢なんじゃないかなぁってそう思ってたの」
「フフッ…ルビィからすれば不思議な体験だものね」
「でも今は夢じゃなくて良かったなぁって」
「そう…」
「ルビィは楽しかったよ、ヨハネちゃんと一緒に暮らせて」
─ ルビィ(……ううん、よくない)
ルビィ「やっぱりこのままじゃ駄目だよ!!」ガタン
ヨハネ「うわっ! なによ、どうしたのよ急に!?」
ルビィ「ごめんねヨハネちゃん、ルビィちょっと用事があるからお出かけしてくるね!」ダッ
ヨハネ「いやそれはいいけど……ってもういないし、早っ…」
ヨハネ「というか駄目って何が…………もしかして」
ヨハネ「私たちのこと、言ってるの?」
ヨハネ「…確かにそうかもしれないわね、今のままじゃきっと…後悔する」
ヨハネ「…………よし」 ========
シスター「─成程、ルビィさん担当の天使が彼女の友達で」
シスター「ルビィさんに接触したのはそれが理由だと」
ルビィ「うん、だからルビィのところに来たってヨハネちゃんが」
シスター「……ああ、そう…」
シスター(…やっぱり私情じゃないですか)ハァーッ
ルビィ「シスターさんは知らなかったの?」
シスター「いえ、私もその天使のこと自体は知っていましたよ…ただ」
シスター「ヨハネとの関係性は存じていませんでした、天界に見直しを申し付けたのも人がいい彼女ならやりかねないと思っていましたから」
シスター「ですがまあ、そのような背景があったのなら色々と納得は出来ますがね」 ルビィ「そっか」
シスター「それで? 何故その話を私にしたんですか?」
ルビィ「それは、あの……ヨハネちゃんのことを守ってほしくて」
シスター「守る? 何から?」
ルビィ「ヨハネちゃん、今までいろんな天使さんに酷いこと言われてきて……ずっと一人っきりで」
ルビィ「それに、ヨハネちゃんのお友達になった天使さんも今は会えないんだよね? ……だから」
ルビィ「苦しいと、思うの」 シスター「…………」
ルビィ「だからあの、そういうときにシスターさんが味方になってくれたら…」
シスター「…言いたいことは大体分かりました、そのうえで答えさせてもらいましょうか」
シスター「嫌ですよ、冗談じゃない」
ルビィ「ど、どうして…?」
シスター「自分の問題くらい自分で解決しろというのもそうですが、何より」
シスター「私は彼女のことが嫌いなので」 ルビィ「…………」
シスター(…突き放すためとはいえ、この子には少々酷でしたか)
シスター「まあつまりはそういうことです、分かったら─」
ルビィ「……」バッ
シスター「…どうして頭まで下げる必要があるんですか」
シスター「貴女の好きな人に対して、嫌いだと抜かした相手ですよ」
ルビィ「……それでも、お願いします」 ルビィ「ルビィは、天界にいけません……ヨハネちゃんのこと、助けられません…だから」
シスター(…ここまで離れたくないとは、一言も言っていない)
シスター(全てヨハネの今後のためを想って……この子は、自分の気持ちを)
シスター「……これ以上は、流石に無様が過ぎますね」
シスター「分かりました、私の負けですよ……ですからもう、顔を上げてください」
ルビィ「シスターさん…! あ、ありがとうございます!!」
シスター(…それに、姿だけとはいえ私はこの子の姉ですからね)
シスター(あまりこの子を幻滅させるようなことをするのは、ダイヤさんにも悪い…) ルビィ「よかったぁ…これでヨハネちゃんもきっと」
ルビィ「シスターさん、本当にありがとう」ニコッ
シスター「いえ、私は…」
シスター「……」
シスター「……ルビィさん、一つ昔話をしましょうか」
ルビィ「え?」
シスター「いや昔と言うほどでもなく、割と最近のことなんですけどね」
ルビィ「なんのお話し?」
シスター「そうですね…彼女がヨハネと名乗っているその理由について、ですかね」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています