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「……なんか動いたか? 気のせいか?」

善子「!」

道を歩いていると、唐突に。

そう、本当に唐突に────小さな見張り小屋の前を通ったとき、その声がした。

びっくりした私はその場で停止。指一本動かさずその声の主人を見る。

「オレはよ……動いてるもんしか見えんのよ」

黒い犬だった。ジャーキーを口に咥えた、妙にダンディズム溢れる喋り方をする犬……

……あ、ライラプスに似てる!? ライラプス!!

ライラプス?」動いたもんには容赦しねえ。そう、たとえば……ニンゲンとかな」

善子「えっ」