X



【SS】サヨナラの意味【音乃木坂46】
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/11(金) 20:36:53.16ID:YLJ37Jp/
占占占

果南「いや〜、まさか希が代表に選ばれるとはね〜」

希「たまたまやって」

果南「今年は私だと思ってたんだけどなあ」

にこ「あんた何回同じ話すんのよ…演舞の指導補佐やるんでしょーが。それで満足しなさいよ」

果南「そうだけどさー。全然違うじゃん」

にこ「ってか、そんなにやりたい? あれ」

果南「そりゃやりたいよ。目立つしさ。でもま、希ならいいや」

にこ「私は目立つからこそあんなのやりたくないけどね」

果南「にこは選ばれないよ。舞台に立っても遠くから見えないじゃん」アハハ

にこ「ぬぁんですって?! あんたなんかどう可愛く化粧したって男じゃないのよ!」ガタッ

果南「お、やるかー?」ガタッ

希「二人とも。喧嘩するなら静かにやらないかんよ」
0089名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:05:32.94ID:W2PjMw5p
刀を握る手に力が入る。

壇の中央には黒澤ダイヤ。

その周り、彼女を囲うように棘人と人が半円を為す。

一歩、また一歩。

やがて、黒澤ダイヤの正面へ。


すう…

刀を構える。

同じくして、黒澤ダイヤが両手を挙げる。

顔を隠すように拡げられた両の手。

そして、拡げられた黒澤ダイヤの両手が小刻みに震え。

ぐぐぐーー……と、手の甲から幾本もの『トゲ』が生える。


ダイヤ「希さん」

希「ダイヤちゃん」
0090名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:06:06.61ID:W2PjMw5p
私の役目は、そのトゲを斬り落とすこと。

仮面を砕き、皮を引き剥ぐかのように。

棘人が棘人たるための証をーー尊厳を。


スゥ…

息を吸い、


ーー息を吸い、木剣を振り下ろす。

ーーダイヤちゃんが表情を歪める。

ーーなにを謝ることがありますか。

ーーこれは私と希さんに課された『役割』の為すこと。

ーーそこに、


ーー希さんの意思はないでしょう?


そう。

そうなのだ。

この壇上で、私の行いは過去をなぞるもの。

そこに、私の意思は、ない。


希「…それこそが、ずっと続くもやもやした気持ちの正体」

ダイヤ「…希さん?」


息を吸い、刀を脇へと放り投げた。

占占占
0091名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:06:48.74ID:W2PjMw5p
占占占

刀は甲高く会場に水を打ち、いっときの静寂を生んで。


『ネコは再び躍り出ます』


太鼓も、囃子も、棘人も、人も。


『刀を前に、幾百もの冷蔑の前に、その身を晒して、叫びます』


その全てが口を噤む。


『そんなことせずとも、私たちは手を取り合えるはずだろう!』


ダイヤ「希…さん? なにを…」


『トゲを斬り落とすようなーー尊厳を奪うような真似をせずとも!』


希「トゲで身体が傷付いてもいい。ケンカで心が傷付いてもいい」


『ネコは振り向きます』


希「ウチは、ウチを傷付けない相手と仲良くなりたいわけやない」


『構えられた刃に背を向け、泣きじゃくる少女に向き合います』


希「ウチは、黒澤ダイヤと仲良くなりたいんや」


『ネコは無数のトゲをその身に受けて、かたく少女を抱き締めます』


希「行こう。ダイヤちゃん。ウチはウチの意思でーー」


希「貴女の手を握るよ」

占占占
0092名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:07:47.12ID:W2PjMw5p
◇◇◇

穂乃果 こんなところにいらしたんですね。

千歌 はあ…はあ……ずいぶん捜し回っちゃいましたよ。

ダイヤ …………

穂乃果 ダイヤ先輩。後は、あなただけなんです。

千歌 どうか、私たちに力を貸してください。

ダイヤ …みんな、あなたたちの元に集ったのですね。

穂乃果 はい。

千歌 言い出したのは穂乃果ちゃん。そこに海未ちゃんが乗って、梨子ちゃんが乗って、二年生みんなが乗って、希先輩たち三年生も、ルビィちゃんたち一年生も。

ダイヤ あなたたちは、なにを望むのですか。なにがしたくて、私たちを集めようとするのですか。

穂乃果 ……本当に、簡単なことなんです。

千歌 ……私たちの願いは、最初から一つだけ。


ダイヤ 私たちの願いは、最初からーーたった、一つだけ。

◇◇◇
0093名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:08:29.84ID:W2PjMw5p
占占占

七年後ーー次回の棘刀式がどうなるのかは、わからない。

今年の棘刀式は、これまでの長い村の歴史において、まったく異例な式となった。

そんな中、ただ一つだけ、わかることは。


希「ウチがめちゃくそ怒られたってことだけやん…」ゲッソリ

にこ「あはははははははっ! あははははっひひぃ〜〜〜っ…おな、お腹…っおなか痛い…」ヒィヒィ

果南「あんなめちゃくちゃなことするからだよ…」


めちゃくそ怒られた。

南さんと御三家当主三名、計四名の大人に囲まれて、もうびっくりするくらい怒られた。


ーー歴史ある儀式をなんだと思ってるの!

ーーあんな醜態を晒してほしくてあなたを選んだんじゃありませんよ!

ーーあなたは沼津ヶ村とここに住まう人々、棘人、その全てを侮辱したんだぞ!

ーーとんでもないことをしてくれたものですね。


四人もの大人が寄ってたかって、目まぐるしく、入れ替わり立ち替わり、ここぞとばかりに、日本語には卑罵語が少ないなんて嘘やんと五千回くらい思わされるほどの豊富な叱責と罵倒を浴びせてきた。
0094名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:09:01.90ID:W2PjMw5p
希「耳と脚なくなるかと思った…」

にこ「死の直前、希被害者はそのように語っていたーーって感じ? …ププーーーーーッ、あっはっはっはっはっは!!」バンバン

希「笑いすぎやろ…」

にこ「いやいや、笑わずにいられないわよ! カラオケ大会で愛の告白したのとはわけが違うのよ、七年に一度の儀式であんな型破りな……ぶふぉーーーっ!!!」ゲラゲラ

希「許さへんからな…覚えときよ…」

果南「ま、まあにこの反応は過剰にしても…よく思い切ったと思うよ、私も」

希「そんなん…ウチだってそう思うよ…」

果南「…でもさ、後悔してないでしょ」

希「……」

希「うん」
0095名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:09:34.00ID:W2PjMw5p
本来ならば、装飾刀でダイヤちゃんのトゲを斬り落とし、それを次の棘刀式まで保管することで、棘人と人との向こう七年間の融和を示すものだったのだ。

それを私は盛大に無視した。

長年受け継がれてきた刀を放り投げて、トゲだらけのダイヤちゃんの手を取って、そのまま二人で会場から脱走した。

別に村から逃げ出そうという気があったわけでもない。

というか本当に、なんの企みもなければ、なんの思惑もない。

ただ、私が私の意思で「やろう」と決めたことをやっただけ。

お互いにごてごてとした格好、すぐに走り疲れてへたり込んでいるところに村の大人たちが駆け付けてきて、私たちは天の川よろしく引き離されーー

朝までたっぷりお説教コースと相成った。
0096名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:10:16.79ID:W2PjMw5p
にこ「結局、ダイヤのトゲだって予定通り斬って保管すんでしょ?」

果南「だってね」

希「それを誰がやるかで大揉めになってるらしいで」

にこ「あんた立候補してきたらいいじゃない。リベンジで」

果南「無理だよ! 私が希をそそのかしたんじゃないかなんて言ってる人もいるくらいだし!」

希「そこは一応弁解しておいたんやけど、あんまり意味なさそうやったなあ…」

にこ「しばらくはやりづらくなるわね〜」

希「ごめんな、果南」

果南「まー、別にいいけどさ。希の度胸のお釣りと思えばね」

希「えへへ…ありがとさん」

にこ「相変わらず、希に甘いわねえ」

希「あ」

希「ウチ、ダイヤちゃんとこ寄ってくから」

果南「うん。行ってらっしゃい」

にこ「昨日の今日で、よくまた黒澤邸に入ろうなんて思えるわね…いってら」

希「ほな、また明日ね」

占占占
0097名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:10:59.66ID:W2PjMw5p
占占占

黒澤邸の門扉をくぐり、母屋までの道を行く。

確かにしこたま怒られたけれど、その場所は紛れもなくこの黒澤邸だったけれど、実はそこまで怯えてもいない。

だって、


南『はあ……はあ……』

園田『…これくらいにしておきましょう。よく伝わったでしょうから…』

希『 』(← !DEAD!)

南『それじゃ私たちは、先に失礼しますね…よかったら泊めてあげて』フラフラ

黒澤『ええ。離れを使わせます。お休みなさい、皆様』


黒澤『聞こえていますか。今日は泊まっておゆきなさいな』

希『は………はい………』

黒澤『希さん』

希『はい………』

黒澤『…ありがとうございました』


その言葉で、私の中に後悔などわずかにも残らなかったから。

占占占
0098名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:11:33.29ID:W2PjMw5p
占占占

トントントン、と気持ちよく響く廊下を進む。

突き当たりの、ダイヤちゃんの部屋。

コンコン。


希「ダイヤちゃ〜ん」


返事がない。


希「あれ? ダイヤちゃん?」

希「うーん…」

希「失礼しまー…す」


不躾を承知で、戸を引く。

けれど、うたた寝…ということもなく、部屋は空っぽだった。

来るって伝えておいたんだけどな。

出掛けているとも言われなかったし。


希「……ん、あれ…」
0099名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:12:09.52ID:W2PjMw5p
更なる不躾を承知で、部屋に踏み入る。

机に置かれた本とノート。

本は、私の『棘人とネコ』。

そもそも今日は、とりかえっこしていたこれを再び交換するために来たのだ。

私も鞄から『棘人とネコ』を取り出し、そっと机に置く。

代わりに、ノートを手に取る。


『みんなで叶える物語』


そう銘打たれている。


希「…ごめん」


ここまで来たら不躾ついでと、ノートをめくる。

そこには、年齢も性格も違う23人の少女たちが手を取り合い、大きな一つのことを成し遂げるーー

そんな物語が綴られていた。
0100名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:12:42.22ID:W2PjMw5p
少女たちは目標を掲げ、仲間を集め、そして力を合わせる。

言ってしまえばありふれたその物語は、ダイヤちゃんが書いたのだろうか。

…問うまでもなく、そうだろう。

なぜなら、その23人の少女は、私とダイヤちゃんを含めたこの村の住人。

私たちが、全く違う世界で、全く違う出会い方をして。

そして、全く違う道を歩んでいく物語。


希「…ダイヤちゃん」


これはダイヤちゃんの願い。

そして、私たちみんなの願い。
0101名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:13:28.66ID:W2PjMw5p
そこには、なにもない。

棘人が人を。

人が棘人を。

棘人が棘人を。

人が人を。

恐れ、嫌い、憎み、侮り、見下し、蔑み、嗤い、貶し、恨み、妬み。

そんな確執が、一つもない。


希「きっと…きっと、こんな世界もあったはずよね」


『あなたたちは、なにを望むのですか。なにがしたくて、私たちを集めようとするのですか』

『……本当に、簡単なことなんです』

『……私たちの願いは、最初から一つだけ』

『私たちの願いは、最初からーーたった、一つだけ』


『みんなが手を取り合って、笑い合う。そんな世界に生きたかったーーただ、それだけです。 黒澤ダイヤ』



終わり
0102名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/05/12(土) 01:14:27.01ID:W2PjMw5p
スレタイからもわかるよう、乃木坂46の『サヨナラの意味』という曲のPVを元にしたものです。
というか、ほぼまんまです。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況