本編開始の時点で海未は絢瀬絵里に対して一定の敬意があった
でもそれは見た目の立ち振る舞いや生徒会長としての能力などに由来するもので、他の諸先輩方への敬意と同じようなもの
少なくとも海未自身の認識では恋愛感情ではない

ただ、この時点でも特別なシンパシーに至る種はあったと思う
絵里は見た目からして異質で、有無を言わせない雰囲気があった
倫理的、社会的には正しいけれどどこか受け入れられないこともあっただろう
絶対バレないようなズルでもできずに場を壊しかねないのは絵里と海未ふたりに通ずる

いわば絢瀬絵里には「穂乃果やことりと出会わなかった方の園田海未」と呼ぶべき側面が確実にある

そういう生真面目さや不器用さを本質的に感じ取っていた、というのがトリガーとしてはあったはず
だから海未は心の底で絵里の活躍を応援していた
自分と同じ種類の正しさが壇上で認められていることは、贔屓の球団が勝ち進むのに似た誇らしさもあっただろう

けれどもやがてスクールアイドルの一件で二人は対立してしまう
いや、ここは尊敬し合う相手と互いに正しさを抱えた上で対立ができたという点で、道場や弓道部と違った刺激が生じたことを喜ぶべきだ

この時に海未が感じるのは
「なぜあなたは(私と同じく)正しいのに(私たちが正しいと信じた)活動を否定するのか」
「私はあなたを信じていたのに、あなたは正しくなくなってしまったのか」
「もしあなたが正しくなくなってしまったのなら、私が正したい。けれども逆に私たちが誤ったのなら正してほしい」
「私はあなたに敬意を持っていて、あなたを信じてきたのだから、そうあってほしい」
といったものだと考えている

単なる敵対者であれば迷いはなかったが、海未は本能的に自分と似た正しさを絵里から感じ取っていたんだと思う
だから他の部員たちが絵里の行動を悪しざまにいうのを受け入れられずにいた

その上でバレエの動画を見たから
「やはり私の信じた絵里は(ある一面では)正しかったのだ」
と知らしめたくもなったのだろう
部活動では得られなかった「先輩に圧倒される」という経験を得られたのは大きい
本当は海未も自分の正しさに傷を入れられて、鍛えられたかったのだから

この時点で既に、海未にとっては絵里が認められること=自分自身が受け入れられること、になっていた
それならμ's加入が最終到達目標になるのも自然だし、後に絵里が見せる弱さが海未の心をくすぐるのも納得できる


要するに、海未は絵里を救うことで自分自身の心の一部を救おうとしてたんだと思う
自分の考える「海未が絵里に惹かれた経緯」はこういうイメージ