……ホントはね。
 さっき言った通り、グラッサージュはただチョコを溶かすだけでも大丈夫なの。

 それをわざわざ一手間加えたのは……。
 もちろん、味は美味しくなると思うよ。
 生クリームとバターが加わることで、なめらかになって濃厚さが増すと思うし。
 ほら、風味も抜群だし!

 ただ、そういう調理上の理由は全部後付け。
 本当は、最後の一工程まで手間暇を惜しみたくなかったから。

 手間暇かけると、その分作業の総量が増える。
 気を付けなきゃいけないことも増える。

 だからその分、調理の最中に込めることができる思いの分量も増えていく。


ことり「……美味しくなりますように」

ことり「……喜んでもらえますように」

ことり「……少しでも多く私の気持ちが込められますように」

ことり「……少しでいいから、伝わりますように」


 そんな風に、思えるから。