理亞「冬の夜更けに?」聖良「はい。怪談話、です」
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聖良「……」カリカリ
聖良「……」カリカリ カリカリ
聖良「……」
カラン
聖良「……ふう。今日はこれくらいにしておきましょうか」
聖良「終わりがないのが勉強とはいえ……これだけ量をこなすのは流石に疲れますね」
聖良「まあ、今までスクールアイドルに専念していたツケと思えば」
聖良「たったこれだけで済んでいるのは有難いことでしょうか」 奇妙、いえ、恐怖。とにかくその場にもういたくなかった。
恥ずかしいですが、脇目も振らずに家へと帰りましたよ。
……ええ。あの時息がいつもより上がっていたのは、そういうわけ。
あれは……結局、なんだったんでしょうね。
バックトラックと同じように、何かから逃げるための陽動として用いていたのなら。
いえ、それにしたって用意周到すぎます。
それならば……むしろ、逆だったのではないでしょうか。
何かから逃げるのではなく、何かを捕らえる。
好奇の目で近付いた獲物を、誘うための罠だとしたら―― ……いえ、この話はここで終わりにしておきましょう。
あれ以来――また理亞と二人で朝練をする様になってからは、一度も遭遇していませんし。
変に邪推するより……謎は謎のままであった方が。
やっぱり綺麗だと思いませんか?
第二話 『足跡』 終 ⌒°(*癶ω癶)° ⌒ 理亞ちゃん、漏れルビィしてそう…。 第三夜 『シグマ』
小さいころ、どこかに行くことを禁止されたことはありますよね?
……まあ、無い人の方が珍しいと思いますけど。
大抵そういった禁則地にされる場所は、近所の沼や渕、山が中心でしょう。
もしくは廃墟など……要は、人の手が入り辛い所が多いですね。
そういった所には当然ながら、様々な危険が潜んでいる。
だから事前に注意を施して、子供が近づかないようにしているんでしょう。建前上は。 ええ、そうです。
禁則地になる場所には、危険以上の理由が付き纏うことも多いんです。
それも、往々にして私たちに見せたくないものが混じっていることが。
私の友人……そうですね、Cとしましょうか。
Cもそのような禁則地を知っていた一人と言えるでしょう。
彼女はここより北にある、小さな村の出身だったのですが……
事のあるごとに、彼女の祖母からこの様に言い付けられて育ったそうです。
『北の山はね、深くまで入っちゃだめだ。シグマに食われちまうから』 ここでいうシグマ……とは、Cは祖母から教わることはなかった様ですが。
イントネーションから、どうやらヒグマのことらしいと思っていたようです。
ヒグマという字は、漢字にすると「羆」と書きますよね?
ですから「四」と「熊」が組み合わさって、「シグマ」……それがきっと古い読み方だと。
それで祖母はその読み方を使っているのだと、Cは理解していたみたいです。
……ヒグマが出るだけなら、ただの注意で終わるんですが、ね。 Cが中学に入った頃。彼女の友人たちがその北山の奥を探検しようと言い出しました。
『北山にあるヨドコボシの下にはお宝が埋まってるらしい』
ヨドコボシ。これも村特有の呼び方らしいのですが……彼女もこの時初めて聞いた名前だそうで。
言いだしっぺの友人が言うには、北山にしか生えない茸の一種だと。
そして、どうやらその根元に宝があるという噂を聞き付けたようです。
噂はいつの時代も話の種。まして反抗期なら、言い付けに逆らいたくもなるもの。
『うちも親がそう話をしているのを聞いた』
『大人たちも時々北の山に深入りしているし、私らも行ってみないか』
……そんな友人たちの誘いに、Cが乗るのも仕方なかったのかもしれません。 探検当日。北の山の中を、Cと友人はずんずんと歩いて行きました。
奥へ奥へ、周囲の気配を警戒しつつ、ヨドコボシが無いかを探して。
そしてすっかり頂上近くまで着いた所で……友人の一人が声を上げました。
『ヨドコボシだ!』
彼女の指の先にあったのは……片手程もある大きな、毒々しい色の茸。
その群れが、斜面の下にぽつり、ぽつりと広がっていたのです。 ……はしゃぐ友人たちを尻目に、Cはその茸の異様さに身がすくんでいました。
だからこそ、斜面を下って地面に目を凝らす友人たちに一足遅れ。
そして気付いたのでしょう。
斜面の上の地面……森の中、一本の木の、その根っこのあたり。
そこに、同じ茸が生えているのにも。
ええ、そして。食べてはいけないと一目でわかるその茸。
その傘に――齧られた跡があったのにも。 あまりにも、遅すぎました。
Cを心配して友人たちが戻って来たその瞬間に。
ふらりと……音もなく森の奥から現れた、ヒグマ。
異様なほど痩せこけ、目は異様なほど虚ろにくぼんでいて。
不気味なほど逆立っている毛並みは、ところどころがまだらに赤み。
だらんと手を下げ、二足で立ち上がっているのが、生理的嫌悪に拍車をかけていて…… 『ああああああああああああああ!!』
悲鳴を上げて逃げ出したCと友人。
それをヒグマ……いえ、シグマが追ったのです。
……はい。シグマという名前は、実際なんということはなく。
死の臭いを色濃く漂わせるから、「死熊」。
ただ、それだけのことだったと。 ……それからどうなったのかは、Cもほとんど覚えていないそうです。
ただ事実なのは、Cが生き延びていること。
それから誰かが――Cか友人かは分かりませんが、北山を燃やしたこと。
そしてCとその家族が、逃げるようにその村から引っ越したこと。
彼女が話してくれたのは、それくらいでした。 ああいえ、最後に。Cが村を発つ前に、祖母から話を聞いたみたいなんです。
昔からそういう村だったらしい、って。
ヨドコボシ。食べると星の様な幻覚が見えるから"夜床星"なのか。
あるいは、中毒者の様子から名前がついて"涎溢し"なのか。
いずれにせよ、誤食した熊がバケモノと化して山の中をうろつく代物。
表に出せない「そういうもの」を売った金でなんとか成り立っている村。
それがCの故郷だったのだと。 ……私たちが普段見ている、表の部分。
それだけが全てではありません。
羆が一つの茸によって、死熊へと転じたように。
バケモノが闊歩する山が、村を支える金脈であったように。
表裏というのは密接でいて、しかし異なる顔を持っているのですから。
……少し、教訓めいた最後になりましたが。今日の話はこれで終わりにしましょうか。
第三夜 『シグマ』 終 第四話 『先走る影』
表があれば裏がある。日の射す所には影がある。
表裏が切り離せない関係であるのと同じように。
私たちと影もまた、非常に密に繋がっているわけです。
……当たり前のことだと、言いたげな顔をしていますね。
いえ、いいんです。それが普通の反応ですから。
ですが。映し身である以上、影は私たちと同じだけの能力、潜在性を有しています。
私たちが主導権を握っていられるのは、均衡が偶然こちら側に傾いているためで。
この事を忘れてしまえば……理亞も文字通り「足元をすくわれて」しまうかもしれませんよ? ……とある漫画家の描いた短編にも、似たような話が出てきます。
ある気弱な主人公が、影に肉体を乗っ取られてしまう話なんですが。
兆候として、影が薄くなり。その反面、肌の色は段々と黒く変質し。
実体となった影の代わりに、影の国へと押し込められてしまう。
……最終的には、主人公は肉体を取り戻して無事に終わるんですけどね。
ただ、現実でも全てが漫画の様にいくかというと、早々は上手くいかないのです。 立場のひっくり返った状態でつり合いがとれてしまうと、再び覆すのはほぼ不可能に近いです。
……それだけ影の方が、支配力が強くなってしまった証ですからね。
ですから、私たちはその前に手を打たなければならないのです。
そのためのコツとして、影の兆候を見逃さないこと。
均衡が崩れつつある時には、必ず影に異変が起こるはずですから。
おおよそ見られるものとしては……やはり、自身と影との「ずれ」でしょうか。 ええ。普段影を制御できているのもまた、私たちが無意識に押さえつけている賜物であって。
あちらが優位になるほど、当然影の方が身体に先行して動いていく。
そのために、少しずつずれが生じていくのです。
これがひどくなった状態が……俗に言う、「影が消えた状態」ですね。
まあ、仮にそこまで進行してしまったなら、身体を取り返すのは絶望的でしょうけど。 ……そういえば。
先日、Aqoursの一年生の皆さんが泊まりに来ていたじゃないですか。
今は一旦、いろいろなことは隅に置いておきますが。
その時、花丸さんからこんな話を聞いたんです。
『マルの見間違いかもしれないんですけれど……』
『善子ちゃんの影が、少し変なんです』って。 どうやら新曲のPVを内浦で撮っていた時のことらしく。
皆で走っていくシーンを、映像の中に入れようとしたみたいなんですが。
休憩時間につい、善子さんが花丸さんの膝枕で眠ってしまったそうで。
その時に、千歌さんの思い付きというか、サプライズというか。
『よーし! じゃあ、このままドッキリで善子ちゃんを起こしちゃおう!』
……よくやりますよね。そのまま撮影を始めたそうなんです。 狙い通り、善子さんは花丸さんの膝から落下してしまって。
『ちょっと! 撮影を始める前にちゃんと起こしなさいよ!!』
そんなことを言いながら、他のメンバーより出遅れたそうなんですよ。
そしてそのまま、花丸さんのすぐ後ろを走っていたらしいんですけど。
ひょいと前の方を見ると……何故か、善子さんの影がある。
思わず振り返ってみれば、そこには善子さん本人がいたままで。
しかし皆の半歩前にも先頭を切るかのように、善子さんの影が蠢いていた……とのことです。 ……はい。そのまさか、かもしれません。
あまりにも状況が、似すぎています。しかもこれが事実なら、相当進行している。
花丸さんの言う通り、見間違い……であればいいんですけど、ね。
……どうか彼女が呑まれないことを、切に願うのみです。
第四話 『先走る影』 終 例えに使ってる漫画のせいでなんか和やかな雰囲気にw 三話終わりでまとめられたせいで今だコメント0の駄作扱いになってますなピンク ごめんなさい、死んでいました
生きています、また明日から後半を再開します (q|`˘ ᴗ˘)ʅʅ カイダンなう . . .
. . \ っ \っ. . . ノJ(`σ_ σ´リノし かいだんなう
. . . . )_) ̄)_) . . . . /っ /っ . . .
. . . . . . . . . . . . . . .)_)てノ . . . . . .
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 第五夜 『二枚舌』
……理亞、大丈夫ですか? 眠くはない?
そうですか……いえ、昨日の今日ですから、てっきりつかれているものかと。
平気ならいいんです。それだけ理亞がまた強くなったのでしょう。
では今日の話ですが……ふむ、こんな話はどうですか。
慣用句の一つに、「二枚舌」という言葉があります。
相手や場所によって違ったことを言ったり、矛盾したことを言ったり。
まるで舌が二枚あるかのように嘘をつく様子を表した言葉ですよね。 実は昔は、同じ意味合いの言葉として「陰舌(かげじた)」という言葉もあったらしいです。
嘘は陰気なものだから、というのもあるのですが。
ほら、爬虫類……トカゲなんかは、舌が二つに分かれているじゃないですか。
なので、トカゲ舌からとって「陰舌」という言葉が使われていたそうですよ。
……信じましたか?
すみません、今のはほんの冗談で……ふふ、ごめん、謝りますってば。 こほん。今のような軽い冗談ならいざ知らず。
普段から嘘をつき。すっかり二枚舌となっているような人たちは、いつしかしっぺ返しを喰らうものです。
口から零れて、ぐるりと巡り巡った嘘に、自然と押し潰されてしまうんですよ。
……さて、では逆に。「嘘をつくから二枚舌になる」のではなく。
「二枚舌になったから嘘をつくようになった」人の場合はどうでしょうか。
ええ、いたんです。私の友人にそういう人が。
……もっとも、彼女は相当特殊なケースだったのかもしれませんけど。 彼女……そうですね、Yとしましょう。Yは中学、高校と付き合いのあった友人でした。
まあ、付き合いがあったとはいえ、一緒に遊ぶことは少なかったですけれど。
彼女は友人が多かったですし……それに、私にはスクールアイドルがありましたから。
ですが、Yは快活というか、そういうことを気にせずに分け隔てなく接する子でして。
こう……クラスにいるだけで場が騒がしく、華やかになる。そういう人っていますよね?
はい。Yもそういうタイプでした。
それに運動も出来るし、手先も器用で……時々、調子に乗って変な失敗もしていましたけど。
でも、それもまた愛嬌というか、彼女の人となりの一部として機能していたのでしょう。
事実、私もそんな彼女の横にいるのは、心地よかったと記憶していますから。 ……あれは、二年生になって少し過ぎた頃ですか。
桜の花が幾分か残っていましたから、五月の上旬くらいだと思います。
私が昼休みに廊下を歩いていると、何やら走ってくるYとすれ違いました。
はて、部活の昼練か。それとも呼び出しか何かでしょうか。
そんな風に適当に当て推量をしながら、何気なく声をかけたんです。
おや、部活ですか、と。 『うん、今から昼練!』『違うよ、委員会の当番忘れててさ!』
飛んできた返答は二つ。思わず首を傾げました。
所々重なりあった、正反対の答えを告げるその声は。そのどちらとも彼女のものだったからです。
どういうことかと考えるうちに、Yの姿は見えなくなってしまいました。
……その時は、てっきり彼女の冗談かとも思ったのですが。
次の日から次第に、彼女の言動に矛盾が目立つようになっていったのです。 初めて遭遇した時ほどは露骨ではありませんでしたが。
それでも、数分前に『知っている』と言ったことを聞けば、『知らない』と答えたり。
……いえ、その程度ならまだ良かったかもしれません。
教室の位置、曜日、人の名前、天気。食い違う発言が飛び出る回数は、日を追うごとにひどくなっていきました。
その割に本人は普段通りに、けろっとしているのです。
まるでそんな発言なんか、最初からしていないかの様に。 ……冗談で済ますには、無理が出てきたあたりでしたか。
友人たちが集まって、Yを説得しにかかったのです。
『言い方は悪くてごめん。でも、最近、変なことを言ってる自覚はある?』
『もしかしたら、何かの病気かもしれない。一度様子を診てもらった方がいい。』
友人たちがかけていたのはそんな感じの言葉だったと思います。
でも、Yだけはどうにもどこ吹く風でして。やはり気付いていなかったらしく。
困ったように笑いながら、こう言ったのです。
『『もう、みんなして。変なとこなんてどこにもないじゃん』』 ……その場にいた全員が、息を呑みました。
彼女の喉から出たのは……彼女の声ともう一つ。地を這うかの様な、低い声。
何より驚いているのは彼女自身で。咄嗟に口を手で押さえたのですが。
『どうしたの? みんな黙っちゃって』
Yの声が重なっていない分、はっきりと聞こえる、野太い声。
それが彼女の口から、漏れ出ていたのです。
その声を最後に、Yは教室を飛び出して行き。私たちは……暫く呆然とするばかりでした。 それきり。Yの声を聞くことはありませんでした。その日からYは学校を休んでいましたし……
彼女と次に顔を合わせることが出来たのは、葬儀場でしたから。
……ええ。自殺だったそうです。舌を噛み切ったことによる、窒息死。
多分、Yはあそこでやっと、もう一つの声に気付いたのでしょう。
それまで自分の声に重なっていて気付かなかった、二つ目の声に。
そして、それから逃れるために……自死を選んだのでしょう。 しかし、何故Yが。あんなに幸せそうだったのに。
通夜も粛々と終わり、そんなことをぼんやりと考えていたのですが。
不意に、誰かの喋り声が耳に飛び込んできました。
『……ショック死じゃないの? 窒息死って』
『ええ。どうにもそうらしいわ』
『でも親御さんは可哀想ねぇ、これで二人とも亡くしたことになるんでしょう?』
口ぶりから察するに、Yの親族の方々らしかったのですが。
彼女らの話す「二人とも」という部分が、不思議と引っかかったのです。 そのままこちらへ流れてくる話を聞くに。
Yはどうやら元々……二卵性の双生児だったようなのです。
ところが、生まれる直前というところでもう一人が亡くなってしまい。
それでYだけが生まれてきた、と。
……それならきっと、そのもう一人の仕業なのでしょう。
幸せに暮らすYに嫉妬したか、寵愛を貰えなかったことへの八つ当たりか。
そういった怨恨がYの中に根付き、そして絡みつく様にして……
このような結果を、引き起こしたのでしょう。 何故そう決めつけるか、ですか?
……彼女の死因は窒息死だって、言ったじゃないですか。
実はですね。彼女の舌、ちゃんと繋がって残っていたらしいんですよ。
これも親族の方々からの又聞きなので、信憑性は怪しいですけれど。
……ですが、これが本当なら。彼女は誰の舌で、窒息したのでしょうか。 ……二枚舌は、舌禍に通ず、といいます。
どういう形であれ、二枚舌は不幸を呼ぶのでしょうね。
それが……自身に起因するものでなくとも、きっと。これで話を、終わります。
第五夜 『二枚舌』 終 続きます
>>97
すみません、私の不徳によるものです……
次書く機会があれば直しますので…… ドラマCDの印象が強いかな
本編で妹相手に喋る場面数えるほどしかないし
(q|`˘ ᴗ˘)ʅʅ 大冒険なう . . .
. . \ っ \っ. . . ノJ(`σ_ σ´リノし 大冒険なう
. . . . )_) ̄)_) . . . . /っ /っ . . .
. . . . . . . . . . . . . . .)_)てノ . . . . . .
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