……遭えたかどうか、ですか? 

はい。それはもう呆気なく。

あまりに簡単に遭遇できたものですから、少し気落ちしたくらいです。

やはり噂は噂でしかなくて、普通の人がその話の種として弄ばれただけなんだと。

そう思い、早々に踵を返そうとしたのですが……ふと、あることが気になったんです。

       『ズルリ。 コキ。』

遠くからこちらに近付いてくる彼に合わせて、音が鳴っていることに。