花丸「部室からいい匂いが……」クンクン
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花丸「このお腹に染みるいい匂い、もしかして……」
ーーースクールアイドル部 部室
ガチャリ
花丸「やっぱり、クッキーのいい匂いだ!」
千歌「あぁ、まるふぁんふぃふぁっふぁい(あぁ、まるちゃんいらっしゃい)」モシャモシャ
曜「ふぁっふぉー、まるふぁん(やっほー、まるちゃん)」モシャモシャ
花丸「……2人とも、食べながら喋るなんて、はしたないずら……」 ーーー浦の星 校舎裏
梨子「……ごめんね。こんな場所に呼び出して……」
花丸「ううん、いいの。……なんとなく、察しはついてるから……」
梨子「そう、だよね……。やっぱりわかっちゃうよね……」
花丸「オラも、ちょうど梨子ちゃんのこと呼び出したかったから、良かったずら……」
梨子「……奇遇だね」
花丸「奇遇でもなんでもないよ、だって今日は……」
梨子「バレンタインデーだもんね……」 梨子(……はぁ、ドキドキする……。いつものように、マルちゃんにお菓子をプレゼントをするみたいに渡したいのに……)
花丸(……梨子ちゃん、オラに目を合わしてくれない。緊張してるんだ……)
梨子(……心臓バクバク言ってる。嫌だなぁ、この大きな心臓の音、マルちゃんに聴こえてるんじゃないかな……)
花丸(梨子ちゃんが緊張しているの見てると、オラまで緊張してきちゃう……)
梨子(普段通りのことがいっさいできない……マルちゃんはいたって何にも変わらないのに……)
花丸(……これが、バレンタインの魔物……)
りこまる「……///」 梨子「……あの、あのねマ」
花丸「梨子ちゃん! えっとね……」
梨子「うわっ、ちょっとマルちゃん遮らないでよぉ……」
花丸「あああ、ごめんなさい……。どうぞ、梨子ちゃん。お先にどうぞ」
梨子「……そんな風に勧められると、なんだか喋り辛くなっちゃうよ……やっぱりマルちゃんから先に言って?」
花丸「えぇ……梨子ちゃんの方が先に喋ったんだから、梨子ちゃんからずら?」
梨子「だって、なんだか急に怖気づいちゃって……」 りこまる「……///」
花丸(どうしよう、梨子ちゃん黙っちゃった……オラから言った方がいいかな……)
梨子(……言い出したいのに、なんにも言えない……勇気が出ないよぉ……)
花丸「……梨子ちゃん何にも言わないなら、オラから先に言う!」ビシッ
梨子「えっ、あっ待って! その挙手下げて!」
花丸「待って、って言われても、梨子ちゃん何にも言ってくれないんだもん! それならオラが先に……」
梨子「り、り……梨子から言う! 梨子が先っ!」ビシッ
花丸「いいや、オラが先ずら!」ビシッ 梨子「梨子が先っ!」ビシッ
花丸「オラが先っ!」ビシッ
梨子「梨子がっ!」ビシッ
花丸「オラがっ!」ビシッ
梨子「梨子っ!」ビシッ
花丸「オラっ!」ビシッ
リコ!オラ! リコ! オラ!
………
……
… 梨子「……」ハァハァ
花丸「……」ハァハァ
梨子「……り、梨子が……」
花丸「ま、待って梨子ちゃん……。もう、この掛け合い疲れたよ。……提案なんだけど、二人同時に渡さない?」
梨子「……いいや、梨子がさ……」
花丸「ダメずら、梨子ちゃん意地になって変に頑固になっちゃった……とりあえず、深呼吸、深呼吸」 梨子「……」スゥーハァー
花丸「……落ち着いた?」
梨子「……うん、落ち着いた。あと同時に緊張もどこかへ飛んで行っちゃった」
花丸「ふふっ、それなら良かった。梨子ちゃん、誰が見てもわかるくらい、緊張してたから」
梨子「……やっぱり、わかった?」
花丸「うん、そりゃもう、どんな機微に鈍感な人でもわかるくらいに、ね」
梨子「まあ、ひどいっ」
花丸「本当のことだから仕方ないずら」
りこまる「……ふふっ」クスクス 梨子「マルちゃん、はい……コレ」
花丸「梨子ちゃん、コレ、どうぞ」
梨子「ありがとう、マルちゃん」
花丸「こちらこそ、ありがとう。梨子ちゃん」
りこまる「ふふっ……///」
花丸「中身、開けてもいい?」
梨子「うんっ、もちろんいいよ」 パカッ
花丸「……花丸だ! 花丸の形のチョコレートだ!」
梨子「色々、形は悩んだんだけど……安直だったかな?」
花丸「そんなことないよ、こんなチョコレート見たことないもん! 世界で一つだけの、オラのためのチョコレートずら!」
梨子「そうね。……世界で一つ、マルちゃんを想って作ったオリジナル、だね」
花丸「食べるのもったいないなあ……。これ、ずっと残しておきたいなあ……」
梨子「……食べてよぉ……せっかく作ったんだもん……」 アムアム アムアム
花丸「口の中がチョコの甘さで満たされて、とっても幸せずら……」ムフフ
梨子「マルちゃんの食べてる顔見てると、私まで幸せになっちゃうよ」フフッ
花丸「オラの顔ばっかり見てないで、オラがあげた包みも開けて見てほしいな?」
梨子「なんだろう、少し大きいなあ……」
ガサガサ ガサガサ 梨子「……これ、バラのバスケット……?」
花丸「それね、『ダズンフラワー』っていうの」
梨子「ダズン、フラワー?」
花丸「12本の花束、1ダースのお花だから『ダズンフラワー』なんだ」 花丸「そのバラ一本一本にはね、意味が込められてるの。感謝と、誠実と、幸福と、信頼、希望。それに情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠……最後に愛情」
花丸「12個の想いを込めた花束。……どうか受け取ってほしいな」
梨子「……こんな想いのこもった花束なんて、もらったことないから……嬉しいというか、私なんかがもらっていいのかな、って……」
花丸「……バレンタインデーは、意中の人に愛を伝える特別な日ずら? そんな特別な日に特別な意味を込めた、特別な花束を……特別な人に渡したいの」 梨子「……そこまで考えて、私にこれをくれるの?」
花丸「オラがそこまで考えちゃ、駄目……?」
梨子「嬉しい、とっても、嬉しいよ……」
花丸「……その割には、なんだか複雑そうな顔してるずら?」
梨子「……だって、私ったら安易な発想でマルちゃんにチョコを渡しちゃったから……」
花丸「いや、バレンタインデーはチョコを渡すのが普通というか、慣習というか……でも確かに外国では違うけど……」
梨子「……なんか負けたような、惨めな気分だよ……」
花丸「そんな落ち込まなくたっていいずら……」 梨子「……マルちゃんはここまで想ってくれてるのに、なんだか梨子ったら……ちっぽけだなぁ……」
花丸「ち、ちっぽけじゃないよ! チョコレート美味しかったし!」
梨子「ごめんね、私の想いなんて……所詮……」
花丸「……うぅ、そんなこと、言うなーっ!」
梨子「……!?」ビクッ 花丸「オラ! 梨子ちゃんの作ったお料理やお菓子はなんでも好き!」
花丸「梨子ちゃんの描いた絵も好き! 梨子ちゃんの弾くピアノの音色も好き!」
花丸「梨子ちゃんの優しい声が好き! 梨子ちゃんの優しい笑顔が好き!」
花丸「梨子ちゃんのこと全て……大好きなの! ……だから、いいの! これで!」 花丸「……」ハァハァ
花丸「……ごめんなさい、ムキになってまくし立てるように言っちゃって……」
花丸「ともかく、そんな否定的にならないでほしいずら。オラ、梨子ちゃんからチョコレートをもらえて嬉しいし、自分のと比較なんてしないから……」
花丸「……込められた想いの測り方は、その人の胸三寸次第ずら? オラには十分、伝わってるよ」 梨子「……マルちゃん……///」
花丸「……そんな赤らんだ顔でこっち見ないでほしいずら……///」
梨子「もう、気にしたりしないから……最後にもう一度……梨子のこと、大好きって言って……」
花丸「……おねだりさんだね、梨子ちゃんも」
梨子「……お願い」
花丸「……梨子ちゃんのこと全て、大好き、なの……」
梨子「……///」
花丸「……///」
終わり いや?まだまだいけますが?
甘々でピュアピュアなりこまるありがとうございます 梨子ちゃんのソロ曲Pianoforte Monologueいい曲ですね
二人っきりの音楽室で梨子ちゃんの弾き語りを聴いて感動して泣いちゃうマルちゃんとかいいですね ーーー花丸の部屋
カキカキ キュッキュッ
花丸「ふふふ、これで今日の分はよーし、と」
梨子「カレンダーの日付に印を書いて、何を心待ちにしてるの? マルちゃん」
花丸「三月のカレンダーをめくって見てみるずら?」
梨子「……三月?」
ペラッ
梨子「三月四日に、花丸がふってある……。あっ、そっか、この日は……」
花丸「そう、三月四日はオラのお誕生日ずら!」 梨子「そういえば、前にお誕生日のこと、話してたね」
花丸「オラ、お誕生日が楽しみ楽しみで……カレンダーに印を書いて、指折り数えて待ってるんだ!」
梨子「そうなんだ、どうりでカレンダーの印が、二月から始まってるわけだね」
花丸「立春を過ぎたあたりから、もうソワソワが止まらないの! 早く三月になってほしいずら……」
梨子「お誕生日も待ち遠しいけど、春ももうすぐ待ち遠しいよね」 梨子「なんでそんなにお誕生日が楽しみなの?」
花丸「だって、お誕生日の前の日は三月三日で桃の節句ずら? ひな祭りのお祝いをした次の日に、自分のお誕生日もお祝いするんだよ?」
花丸「ひな祭りのご馳走と、お誕生日のご馳走両方味わえて、まさに、お盆とお正月が一緒に来たみたいずら?」
梨子「そっか、確かにマルちゃんにとって、嬉しいことが重なるもんね」
花丸「オラにとっての春の訪れは、ひな祭りとお誕生日なんだ」 梨子「ひな祭りの後に生まれたマルちゃんって、もしかしたら、お雛様の生まれ変わりかもね」
花丸「どうして?」
梨子「だって、雛人形みたいに小さくて愛らしいんだもの」
花丸「んー……、でもオラ、お雛様みたいなおちょぼ口、なかなか作れないからお雛様の生まれ変わりじゃないと思うな」
チョビッ
花丸「……ほら、今必死におちょぼ口作ってるんだけど……」
梨子「おちょぼ口というか、ひょっとこみたいになってるね、確かに……」 花丸「……ここだけのお話なんだけど、実はオラ、本当なら、三月四日に生まれてなかったの」
梨子「えっ、そうなの?」
花丸「これは、お母さんから聞いたんだけどね。本来のオラの生まれる予定日は、四月八日だったんだって」
梨子「予定日よりも一ヶ月早く生まれたんだ」
花丸「早産だったから、色々大変だったんだって。体が小さい状態で産まれたから、呼吸器をつけられてしばらくの間、保育器に入れられて……」
梨子「病院のドキュメンタリーで放送されるような出来事が実際あったんだ……」
花丸「じいちゃんもばあちゃんもお父さんも、毎日仏様に拝んで、オラの無事を祈ったんだって」
梨子「……じゃあ、今のマルちゃんがあるのは、仏様のご加護のおかげ、かな?」
花丸「そうかもしれないずら」 花丸「さっき梨子ちゃん、オラのことを『お雛様の生まれ変わり』って言ったけど……。もし四月八日に生まれてたら、オラ『お釈迦さまの生まれ変わり』ってなってたかもね」
梨子「……お釈迦さま? どうしてお釈迦さまが出てくるの?」
花丸「だって、四月八日はお釈迦さまのお誕生日ずら?」
梨子「へぇ、それは知らなかった。初耳だよ」
花丸「うーん、キリスト様と比べると、やっぱり知名度が低いずら……」
梨子「キリスト様のお誕生日はクリスマスだもんね」
花丸「厳密に言うと違うんだけどね。クリスマスはキリスト様のお誕生を祝うのであって、実際のお誕生日は不明なんだって」 梨子「お釈迦さまのお誕生日をお祝いする行事があれば、みんなにも知ってもらえるかもね」
花丸「あるよ? お釈迦さまのお誕生日を祝うお祭り。『花祭り』が」
梨子「花祭り……?」
花丸「お花で飾られたお釈迦さまの像に、甘茶っていうとっても甘いお茶をかけて、お祝いするの。うちのお寺でも、毎年やってるよ」
梨子「そうなの? ……梨子も参加してもいい?」
花丸「もちろんだよ。……オラ以外だと、ほとんどおじいちゃんかおばあちゃんばかりだから、参加してくれたら嬉しいずら」 花丸「オラね、最近考えるんだ。『なんで三月四日に生まれたのか』って」
梨子「それは、マルちゃんのお母さんが急に産気づいたから……」
花丸「そうだけど、確かにそうなんだけど……そんなあっさり答えられると、自分の考えをお話できないずら……」
梨子「ごめんなさい。……お話、続けて?」 花丸「オラが三月に生まれたのは……『ご縁』のお力が、働いたからかな、って」
梨子「ご縁って、縁結びとかの『ご縁』?」
花丸「うん。もし予定日どおりに四月に生まれてたら……まずルビィちゃんと同じクラスにはなれなかったし、千歌ちゃんたちと中学校で一緒に過ごせるのは一年間だけだし、果南ちゃんたちとは学年が合わなくなるし……」
花丸「……何より、浦女には入学できなかったずら」
梨子「……そうだね、マルちゃんたち一年生が、最後の浦女の生徒になるから……」 花丸「もちろん、今と比べてそれが悪いことだとは思ってないよ? 学年が違えば、今中学三年生の後輩の子たちとクラスメートになれたし……」
花丸「浦女じゃなくて、沼津の別の高校に入学してたら、違う子とお友達になれたかもしれない」
花丸「何か一つ、ポイントが違ってたりしたら、それだけで人生って大きく変わるから……別の人生があったかもしれない、と思うとそれも捨てたものじゃないずら」
花丸「……だけどね、やっぱりオラ、三月に生まれてギリギリ浦女に入学できて、本当に良かったと思ってるの」 花丸「浦女に入学できなかったら、地元の子たちとは仲良くなれても、よっちゃんや鞠莉ちゃんとは仲良しになれなかったし……」
花丸「もし沼津の高校に通ってたら、スクールアイドルなんてなれなかったと思う。オラより可愛い子なんて、街にはたくさんいるから……」
梨子「……そんなことはないよ」
花丸「でも、一番。……一番良かったと思うのは……」
花丸「……梨子ちゃんと出会えたこと、かな」 花丸「浦女にいなかったら、東京から引っ越してきた子、って学校で話題になっても自分には直接関係ないから……」
花丸「例えば道ですれ違っても、『最近噂の、都会から来た女の子だ』って、思うだけで終わってたかもしれない」
花丸「……梨子ちゃんに無関心なままだったかも、って思うと、オラが生死の境に迷い込んでまで、予定日より早く生まれてきたってことは……それは『ご縁』なのかな、って」
花丸「大袈裟な話かもしれないけど、けど……人と人の出会いは、偶然と必然の表裏一体だと思うんだ」
花丸「結ばれてるの、ご縁の糸で。オラはAqoursのみんなと……梨子ちゃんと」 梨子「……」
花丸「……ご、ごめんなさい。オラ変な話しちゃって。……忘れてもらっても構わないずら」
梨子「……梨子も、その『ご縁』を信じたいな」
梨子「……オトノキに入学したことも、内浦に引っ越してきたことも、Aqoursに入ったことも。……マルちゃんと出会えたことも、その全てが『ご縁』で結ばれて、繋がってるのなら……」
梨子「……このご縁のお導きに、感謝したいな」 梨子「……ありがとう、マルちゃん」
花丸「こちらこそ……ありがとう」
花丸「……別にオラ、何かお礼を言われるようなことをしたわけでもないのに……でも、心がポカポカして、嬉しいずら」
梨子「……梨子も同じ気持ち」 梨子「……そういえば、マルちゃんはお誕生日プレゼント、何が欲しい?」
花丸「お、オラ、梨子ちゃんからもらえるのなら、なんだって嬉しいよ……」
梨子「そんな遠慮しないで? ……お誕生日の主役なんだから、わがまま言ってもいいんだよ?」
花丸「うーん……」
梨子「モジモジしないで、教えて? マルちゃん」 花丸「えーっと、それじゃあ、梨子ちゃん耳貸して?」
梨子「……この部屋に二人きりなんだから、別に小声で言うこともないんじゃ……」
花丸「……口に出すのも憚れるから……」
梨子「なあに? 耳貸してあげるから、何が欲しいの、言ってみて?」
花丸「……あのね……」 ゴニョゴニョ
梨子「……えーっ……それは、ちょっと……///」
花丸「でも、わがまま言っていい、って梨子ちゃん言ったずら」
梨子「それはそうだけど……マルちゃんの今のは……恥ずかしいよ……///」
花丸「……それじゃあ、やっぱり別の……」
梨子「……いや待って。……わかった、わかったよマルちゃん。……梨子、頑張るよ……すっごく、恥ずかしいけど……///」
花丸「……やったぁ///」
梨子「……というか、マルちゃんってば、その……変な小説読み過ぎよ……あんなことに憧れるなんて……///」
花丸「……ごめんなさい、助平で」
梨子「マルちゃんなら……うん、マルちゃんだから、いいけれど……///」
終わり ※ご想像にお任せします
ていうか俺ぁね、花丸ちゃんの名前の由来が聞きたくて聞きたくて仕方がないんですよ 人と人の縁ってホント不思議で素敵ですね
偶然と必然の表裏一体な二人の出会いに感謝です
花丸ちゃんの名前の由来も確かに気になります
あと、どんなお願いしたのか…妄想が膨らみますね〜 おはりこまる
お互いがこっそりお互いの寝そべりぬいぐるみ持ってる&抱きしめて寝てるのがバレてしまうりこまる ーーー次のライブに向けて
ーーー学年それぞれに分かれ
ーーー話し合いが行われていました
ーーー梨子の部屋
曜「……だからね、千歌ちゃん。なんていうかそれは……『グワーッ』ときて『ビシッ!』って感じでさ……」
千歌「違う、違うよ。そこはもっと『ドーン』ときて『ガシャーン』って……」
梨子「……二人とも、一体なんのお話してるの……?」 曜「何って、次のライブに向けてのお話だよ」
千歌「ライブを大成功させるための、演出のお話に決まってるじゃん」
梨子「演出の、お話ね……」
千歌「さては私たちの会話、ちゃんと聞いてなかったなー?」
曜「もしかして、上の空ってやつかなー?」
梨子「ちゃんと聞いてたつもりなんだけど……擬音が多くて、中身が具体性に欠けてるっていうか……」 梨子「曜ちゃん、……『グワーッ』って何? 」
曜「そりゃもちろん、『グワーッ』だよ、『グワーッ』」
梨子「……『ガシャーン』って、何か壊れちゃうの? 千歌ちゃん」
千歌「壊れるわけないじゃん、だってライブ中だよ? 機材壊そうものなら中止になっちゃう」
梨子「じゃあ『ドーン』ときて『ガシャーン』って、どういった内容なわけ?」
千歌「それはあれだよ、うん」 千歌「そう、あれだよ、あれ……」
千歌「……」ウーン
千歌「……あれだ、あれなんだよ、わかっておくれよ梨子ちゃん……」
曜「自分の言ったこと説明できないなんて、千歌ちゃんそりゃダメだよ」
梨子「……曜ちゃんはちゃんと説明できるの?」
曜「……」ウーン
曜「……ごめん、無理」
梨子「……もっと具体的に話しましょう……擬音なんかに頼らずに……」 梨子「……少し休憩しない? 一息入れてから議論の続きしましょ?」
千歌「賛成、ちょっと……頭冷やそうか」
梨子「そんな白熱もしてないと思うけど……」
ヨイショット
梨子「私、キッチンでココア作ってくるから」
曜「おー、もしかしてバンホーテン? バンホーテン?」
梨子「……ごめんなさい、うちは森永なの」 梨子「ちょっと、待っててね」
ドアガチャリ
曜「はぁ、やれやれだねぇ……話し合いっていうのも、疲れるね」
千歌「頭使うからね、ダンスの練習とかと違った疲労感だよね」
曜「……ていうかさ、梨子ちゃんの部屋って……いい匂いするよね」クンクン
千歌「この匂い、消臭力じゃないよね。これ完全にアロマの匂いだよね」クンクン
曜「え、これアロエなの? 梨子ちゃん、超シャレオツじゃん」
千歌「アロマだよ、ア・ロ・マ!」
(※消臭力の匂いです) 千歌「部屋もきちんと整理整頓されて、カーテンとか家具もパステルカラーでまとめられてて、『ザ・女の子の部屋』って感じ」
曜「私たちだって女の子なんだから、自分の部屋イコール『ザ・女の子の部屋』じゃん」
千歌「そうなんだけど、なんかさ、梨子ちゃんの部屋と比べたら、首を捻らざるを得ないというか」
曜「あー、そう言われたらね。確かに、千歌ちゃんの部屋、ダイオウグソクムシのぬいぐるみあるもんね。それだけでマイナス点高いもんね」
千歌「バカにすんなー! ダイオウグソクムシ、バカにすんなー! 沼津の誇りだぞ、あれはー!」 曜「ところでさ、梨子ちゃんのベッドの上……なんか膨らんでない?」
千歌「そういえば、掛け布団が妙にもっこりしてるね」
曜「もっこり言うな。なんかやらしいから」
千歌「なんか中に入ってるのかな?」
曜「……もしかして、私たちが来るから、散らかってた服とか隠すために、詰め込んでたりして」ニシシ
千歌「ないない、そんな女子力低いこと、梨子ちゃんに限って。曜ちゃんじゃないんだから」
曜「おい貴様、言っていいことと、悪いことがあるぞ」
千歌「貴様、って言ったよ。チカに対して貴様、って」 千歌「……ちょっと、めくって覗いてみようか」
曜「えー、梨子ちゃんいないからってそれはやめとこーよー。梨子ちゃんに嫌われちゃうよー」
千歌「……とかいいつつ、すっごい興味津々だよね」
曜「そう? わかっちゃったー?」
千歌「曜ちゃん、お主も悪よのぉ」
曜「千歌ちゃんほどではございませんよ」
ようちか「ふはははは」 千歌「それじゃ、せーの、で布団めくろうか」
曜「よっしゃ、オッケー」
ようちか「……せーの!」
バサッ
曜「……お、おお……千歌ちゃん、これって……」
千歌「うん、曜ちゃんこれ……」 千歌「何故、梨子ちゃんの布団の中にマルちゃんの寝そべりぬいぐるみが……」
曜「千歌ちゃん千歌ちゃん、このマルちゃん寝そべり、めっちゃ梨子ちゃんの匂いする」クンクン
千歌「ちょっ、何匂い嗅いでんの曜ちゃーん、ずるーいチカも匂い嗅ぐー!」
曜「待って待って、順番だから順番」クンクン
千歌「早く代われよー、はよ、はよ、はよ!」
曜「急かすなよー、あと10秒で代わるからー」クンクン
千歌「じゅーきゅーはちななろくごー……」
曜「数えるの早いって!」 千歌「……梨子ちゃんのフローラルな香りがする……」クンクン
曜「それにしても、なんでマルちゃんの寝そべりが布団から出てきたんだろ……」ウーン
千歌「……梨子ちゃんの匂いが染み付いた寝そべりぬいぐるみ、そして布団の中から出てきたという状況、そこから察するに……」クンクン
ピコーン
千歌「……謎は全て解けた! つまり梨子ちゃんはこの子を……寝そべりマルちゃんを日常的に抱いて寝ているのだ!」クワッ
曜「な、なんやて高海!」
千歌「なんで関西弁で驚いたの曜ちゃん」 千歌「だってさ、こんなに梨子ちゃんの匂いがするんだよ、このマルちゃん。一朝一夕でこの匂いがつくと思う?」
曜「……つかないね。老舗のうなぎ屋さんのタレみたいに、毎日毎日継ぎ足さないと無理だね」
千歌「……うなぎ屋さんで例えるのはイマイチわかりづらいけど。とにかく、そういうことだよ」
曜「ほー、つまり梨子ちゃんは毎日マルちゃんのこと、抱いてるわけだ……」
千歌「それはちょっと語弊が生じ……ないね、うん、そのまんまの意味だね」 ドアガチャリ
梨子「お待たせ。森永のココア探してたら、遅くなっちゃ……」
千歌「『もう、梨子ちゃんってば遅いずらー』」
曜「『オラ、待ちくたびれてお冠ずらー』」
梨子「……!? そ、それ、マルちゃ……ちょ、ちょっとなんで……///」 ガバッ
曜「うおっ、マルちゃんすんごい力でひったくられた」
梨子「……なんでマルちゃんの寝そべりちゃん、見つけたの……///」
千歌「なんで、って言われても……ベッドの布団が妙にもっこりしてたから、気になって……」
曜「まーた、もっこりって言っちゃったよ」
梨子「……ベッドとか、机の引き出しとか……そのっ、そういうお部屋のプライベートなところは詮索しないようにって言われてるでしょ……!?」
曜「それ男の子限定だよ」
千歌「マルちゃんの寝そべり、エッチな本と同レベルなのー?」
梨子「ど、同レベルじゃないよっ! ……マルちゃんはエッチじゃないもん……///」 曜「梨子ちゃーん、毎晩毎晩、マルちゃんのこと抱いて寝てんのー?」ニヤニヤ
千歌「お熱いねぇ、お盛んだねぇー……」ニヤニヤ
梨子「い、言い方がっ、……いやらしいよ……///」
曜「でも間違ったことは言ってないもんね」
千歌「うん、そのまんまの意味だよね」
梨子「……夜、寂しいときだけよ、抱いて寝てるの……」
千歌「じゃあ昨日の夜はとってもとーっても、寂しかったんだ」
梨子「……///」コクッ
曜「黙って頷いたね」
千歌「反応が可愛いね」 曜「でもさー、いくら寂しくったって、マルちゃんの寝そべり抱いて寝なくたって、ね」
梨子「……だって、寂しいときにマルちゃんの寝そべりちゃん抱いてると……マルちゃんの柔らかい体を、抱いてるような気がして安心するの……」モジモジ
曜「依存の度合いが病的だね」
千歌「これもう麻薬だよ、麻薬。マルちゃん中毒だ」
曜「そんなべったりだとは思わなかったよ」
千歌「……もし、マルちゃんがこの世からいなくなっちゃったりしたら……」
梨子「……そんなの想像したくないよ……」グスッ
ようちか「うわ、べそかいてる」 梨子「……このこと、マルちゃんには絶対言わないでね?」
千歌「……言わないよ、ねぇ?」
パシャリ
曜「私たち、友達だよ?」
シュッ シュッ
曜「天地神明に誓って……」
シュッ シュッ
曜「このことは口外しないから、ね?」
梨子「今流れるようにシャッター押す音が聞こえたんだけど……」 曜「……よし、送信っと」
ポチットナー
梨子「……今何を送ったの?」
曜「え、マルちゃんの寝そべり抱いてる梨子ちゃんの写メ」
梨子「……誰に?」
曜「よっちゃんに」
千歌「そういえば、一年組はマルちゃんの家に集まってたっけ」
梨子「……なんで送るの! なんで教えるの!? 口外しないって言ったじゃない……!」
曜「言ってないよ、言ってない。文章にして教えただけだよ」
梨子「それ言ってるのと一緒だよぉ!」 梨子「消してよぉ……! メール消してよぉ……!」
曜「ごめーん、一度送っちゃったからもう無理ー」
千歌「うーん、この策士。悪知恵ばっかり働くのだ」
梨子「ひ、ひどいよ……曜ちゃんの鬼……」グスッ
ピローン
曜「あっ、よっちゃんから返信が来た」 曜「なんか写メ添付されてる……」
千歌「なになに、どんな写メ?」
チラッ
曜「……マルちゃんが、梨子ちゃんの寝そべり抱いてる写メだ……」
千歌「マルちゃん顔真っ赤っかだね、梨子ちゃんと同じ顔してる……」
曜「メッセージも来た。『相思相愛ね』……だってさ」
千歌「お互い考えることは一緒なんだねー」 レス数が950を超えています。1000を超えると書き込みができなくなります。