花丸「部室からいい匂いが……」クンクン
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花丸「このお腹に染みるいい匂い、もしかして……」
ーーースクールアイドル部 部室
ガチャリ
花丸「やっぱり、クッキーのいい匂いだ!」
千歌「あぁ、まるふぁんふぃふぁっふぁい(あぁ、まるちゃんいらっしゃい)」モシャモシャ
曜「ふぁっふぉー、まるふぁん(やっほー、まるちゃん)」モシャモシャ
花丸「……2人とも、食べながら喋るなんて、はしたないずら……」 梨子「それじゃあ、お言葉に甘えて。ありがとう、マルちゃん」
マキマキ マキマキ
梨子「ふふっ、暖かい……」ヌクヌク
花丸「それなら、良かったずら」ニコニコ
梨子「マフラーから、マルちゃんの甘くて優しい匂いがしてる……」フフッ
花丸「……そう言われると恥ずかしくなっちゃうから、やめて梨子ちゃん……///」 梨子「でも、本当に良かったの?」
花丸「大丈夫ずら、だってマルは健康だもん。ちょっとやそっとの冷たい風なんて……」
ヒュールリー ヒュールリーララー
花丸「……へくちゅん」クシュンッ
梨子「あら、くしゃみ。……マルちゃん、やっぱり寒いんじゃ……?」
花丸「平気、平気ずら。……うさぎさんが身を呈して旅人を救ったように、オラだって……」ブルッ 梨子「……マルちゃん。やっぱりこのマフラー、返すね」
シュルシュル
花丸「でも、それだと梨子ちゃんが……」
梨子「梨子のせいでマルちゃんが風邪ひいちゃったら、それこそ意味無いよ。……梨子は大丈夫、だってマルちゃんの……『お姉ちゃん』だもの」テレテレ
花丸「梨子ちゃん……」 マキマキ マキマキ
花丸(……マフラーから微かに、梨子ちゃんの匂いがする……///)
梨子「……ひっくし」クシュンッ
花丸「またくしゃみ……あのね、梨子ちゃん。……マルにね、寒さを和らげる名案があるんだけど……」モジモジ
梨子「……名案?」
花丸「……梨子ちゃんにマルがピッタリくっつくの。人肌で、温めるって言うと……ちょっと違うかもしれないし、恥ずかしいけれど……///」 花丸「ほ、ほら! おしくらまんじゅう、これはおしくらまんじゅうの理論ずら!だから……」アセアセ
ピタッ
花丸「……ねっ。……マルの体、湯たんぽみたいに暖かいでしょ……///」カオマッカッカ
梨子「すごく、暖かいよ、マルちゃん……///」カオマッカッカ
花丸「それじゃあ、帰ろ、……梨子ちゃん」
梨子「……うん、……マルちゃん」
終わり 1人で巻く用のマフラーを2人で巻くと長さ的に寸足らずになりそう
それはそれでロマンあるんだけど ーーースクールアイドル部 部室
ガチャリ
花丸「あっ、梨子ちゃん」
梨子「あら、こんにちわ、マルちゃん」
花丸「こんにちわ。まだ、誰も来てないんだね」
梨子「うん、私が一番乗りだよ」
花丸「ふふっ。なら、オラは二番乗りずら。千歌ちゃんと曜ちゃんは?」
梨子「2人は居残りで補習授業中。……小テストの点数、悪かったから……。よっちゃんと、ルビィちゃんは?」
花丸「……同じく、補習授業中ずら。ルビィちゃんは小テスト、あと1点足りなくて居残りになっちゃって。よっちゃんは……テストの回答が全部ズレてて……」
梨子「それは……2人とも残念だったね……」 花丸「ところで、梨子ちゃん。机にお裁縫道具が広がってるけど、何を繕ってるの?」
梨子「まだ人が来なくて時間があったから……これを、直してたの」
花丸「……クマの、ぬいぐるみ?」
梨子「そう。この子はね、ジャッキーちゃん、っていうの」
花丸「ジャッキーちゃん! 外人さんずら!」
梨子「いや、外人さん、ってわけでもないんだけどね……。日本生まれのキャラクターだから……」 梨子「腕のところがほつれかけてたから、補強も兼ねて、直してたの」
花丸「そうなんだ。……その、ジャッキーちゃん、なんだか随分年季が入ってる、っていうか……」
梨子「……やっぱり、くたびれて見える?」フフッ
花丸「お、オラ、別にそういう意味で言ったんじゃ……!」アセアセ
梨子「ふふ、ごめんなさい。……でも、マルちゃんの言う通り。だってこの子、梨子が小さな頃に買ってもらったぬいぐるみだもの」 花丸「……小さな頃、ってどのくらい?」
梨子「うーん、梨子が5歳の時に、おばあちゃんに買ってもらったものだから……10年以上前に、なるかな?」
花丸「10年! 長い年月ずら。なるほど、道理で……」
梨子「……私ね、子供の頃あんまりお友達がいなかったから……ジャッキーちゃんとよく遊んでたの。一緒におままごとしたりとか、お絵かきのモデルにしたりとか。寝るときも、抱えて一緒に寝たりとか、ね」
花丸「ぬいぐるみと一緒に寝るなんて、可愛いずら、梨子ちゃん」クスクス
梨子「い、今はもちろん、そういうことはしてないからね……本当だから、ね?///」 梨子「本当はね、内浦に来る前に、手放そうかと思ったの。くたくたになってきてたし、私もぬいぐるみ遊びをするような歳でもなくなったし、ね」
花丸「でも、最終的に……」
梨子「……内浦まで連れてきちゃった。だって、小さな頃からずっと一緒だったから、今更手放すのも可哀想に思えちゃって……」
花丸「……優しいずら、梨子ちゃんは」
梨子「優しくなんてないよ。……本当は、捨てる勇気がなかっただけだもの……」 花丸「……梨子ちゃん。このジャッキーちゃんのぬいぐるみは、きっと……付喪神になるずら」
梨子「つくもがみ?」
花丸「付喪神って言うのは、長い間使われた道具や物に魂が宿って、妖怪みたいな存在に変化したものを言うんだけど……」
梨子「よ、妖怪? ……なんだかそれ、ちょっと怖い……」
花丸「確かに妖怪って聞くと、怖かったり、人間を驚かしたりする悪い方を想像しちゃうけど……でもね、中には人間に優しい付喪神だっているんだよ?」
梨子「怖い存在ばかりじゃ、ないの?」
花丸「うん。……梨子ちゃんは優しいもの。ジャッキーちゃんのぬいぐるみは、持ち主に似た優しい付喪神になるずら」フフッ 梨子「……怖い方じゃなくて、人間に優しい妖怪になってくれるなら……これからも、大事にしなくちゃね」フフッ
花丸「うん、これからも大事にしてあげてね」ニッコリ
梨子「ちなみに長い間使われた、って言ってたけど……どれくらいの年月ことを指してるの?」
花丸「えっとね、確か……100年ずら」
梨子「……私の方が先に死んじゃうね、それ……」
花丸「子々孫々、代々受け継いで大事にするずら」
梨子「遺言で、『ジャッキーちゃんのぬいぐるみを、大切になさい』って遺さないといけないね……」 花丸「……あのね、梨子ちゃん」
梨子「なあに、マルちゃん」
花丸「そのジャッキーちゃんの補修が終わったら、後でマルに……お裁縫を、教えてほしいずら……」
梨子「それはいいけれど、どうして?」
花丸「今度、家庭科の授業でお裁縫の時間があるんだけど、マルぶきっちょだから、お裁縫苦手なんだ……」
梨子「……それなら、ルビィちゃんに教わった方がいいんじゃないかな? 私よりルビィちゃんの方が上手だし……」 花丸「ルビィちゃんにはいつも手伝ってもらってばっかりだから……だから、オラ1人で頑張ってルビィちゃんを驚かせたいの、……サプライズずら!」
梨子「サプライズかぁ……。ええ、それなら協力するよ。一緒に、ルビィちゃんを驚かせましょ」フフッ
花丸「……うんっ!」ニッコリ
梨子「あともうちょっとだから、ここが終わったら教え……」
チクッ
梨子「あ痛っ!」 梨子「痛た……針で人差し指指しちゃった……」
花丸「梨子ちゃん大丈夫!? あぁ……血溜まりがふっくら出てきた……!」アセアセ
梨子「大丈夫大丈夫、そんな大したことじゃないから……えっと、絆創膏どこだっけ……」
花丸「あわわ、し、止血しなきゃ……!」アセアセ
梨子「そんなに慌てないで、マルちゃん……」 ガサガサ
梨子「あれ、救急箱の中に絆創膏が無い。……切らしちゃったのかな……?」
花丸「大変だ大変だ……そうだっ、梨子ちゃん、指貸して!」
梨子「えっ? ……一体何をするの?」
花丸「血を……血を止めるずら!」
カプッ
梨子「……マルちゃん、なんで私の指を、咥えるの……///」
花丸「……」チウチウ
梨子「指を、指を……す、吸わないで……///」
花丸「……」チウチウ 花丸「……ぷはっ。……これでなんとか、血も止まったよね……?」
梨子「……あのぉ、マルちゃん。血は止まったけど……けど、いきなり指を咥えるのは、ちょっと……///」カオマッカ
花丸「だって、だって……血が出てきてたから……///」カオマッカ
梨子「気が動転してたかもしれないけど、もし人が見てたら……変な誤解されちゃうよ……」
カプッ
花丸「あっ、さっきオラが咥えた人差し指……」
梨子「……///」カオマッカッカ
花丸「か、か、か間接キ……///」カオマッカッカノカー
梨子「い、い……言わないで……!」カオマッカッカノカー
終わり スレタイ、もうちょっとりこまる要素を匂わせるべきだったかな……? ダイヤちゃんを救う会
┏━━━━━━━━━━┓
┃ _____ ┃黒澤ダイヤちゃんは
┃ /:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ .┃生まれつき愛に恵まれず
┃ ./::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ. ┃このスレが落ちる前に|c||^.-^||が必要です。
┃ /:::::/l_/l__l_l/l_l_l::::l::::::::::l ┃
┃ lヽ/ / \ l<l::::::/ ┃しかし|c||^.-^||するには
┃ l/l "" _ """l::::lヽ:::l ┃濃厚な百合が必要です。
┃ l:lヽ ___・________,,l::::l_/:::l ┃ダイヤちゃんを救うために
┃ ヽ:/:/ ,ヽ▽_/ l:/ヽ:::::l. ┃どうか協力をお願いします。
┗━━━━━━━━━━┛
黒澤ダイヤちゃん 17歳 ーーー浦の星 中庭
花丸(ふふっ、お昼ご飯を食べ終えて、陽の当たるベンチに座って本を読む時間は、まさに至福のひととき……)ニコニコ
花丸「……」ペラッ
花丸(さぁ、どんどん読み進めるぞぉ……)
花丸「……」ペラッ
千歌「おっ、あんなところにマルちゃんが。おーい!」 千歌「マルちゃーん、もしかして読書してるのー?」
花丸「……」ペラッ
千歌「何読んでるのー?」
花丸「……」ペラッ
千歌「んー、へんじがない、ただのしかばねの……じゃない。ただの本の虫のようなのだ……」
花丸「……」ペラッ
千歌「……そうだっ」ニヤリ トントン トントン
千歌「マールちゃん、こっちむーいて」
花丸「……ん? 何か用……」
プニュ
花丸「……あうっ……」
千歌「へへへ、作戦成功。マルちゃんほっぺプニプニなのだ……」フフッ
花丸「千歌ちゃん、いたずらはやめてほしいずら!」ムスッ 千歌「あはは。めんご、めんご」ペコリ
花丸「その謝り方、全然謝る気ないずら!」
千歌「だって急になんか、マルちゃんのほっぺ突きたくなっちゃったんだもん」
花丸「オラの読書の時間を邪魔しないで!」
千歌「あははは、すんまそん、すんまそん」ペコリ
果南「……」ジーッ 花丸「……さて、千歌ちゃんを追い払ったことだし、読書を再開しよう……」
花丸「……」ペラッ
果南「おーい、マルー」
花丸(……今度は果南ちゃんだ……)
果南「ちょっと、放課後のことで相談が……」
花丸(そうやって理由をつけて、果南ちゃんもオラの読書を邪魔しに……) トントン トントン
果南「ねぇ、聞いてるのマル?」
花丸(右肩を叩かれた……さっきはそのまま右に振り向いて、ほっぺを突かれたから……)
フリッ
花丸(今度は逆を突いて、左に振り向……)
モニュッ
花丸「……おふっ……」
果南「あっはは、なるほど確かに柔らかいね。千歌が突っつきたくなるわけだ」フフッ
花丸「果南ちゃんもやめて! オラのほっぺはおもちゃじゃないずら!」
果南「いやぁ、ごめんごめん……」
モニュモニュ
花丸「謝りながら連打しないで!」
梨子「……」ジーッ 花丸「……果南ちゃんもあっちに行ったし、読書を続けようっと。もう誰も邪魔しないでほしいずら……」
花丸「……」ペラッ
梨子「あのぉ……マルちゃん?」
花丸「……」ムッ
梨子「おーい、マルちゃん……」
花丸「……」プルプル
梨子「マールちゃ……」
花丸「……仏の顔も三度までずらーっ!」
梨子「!?」ビクッ 花丸「梨子ちゃんまで、オラの読書の邪魔をするの!? オラの至福の時間なのに!」プンスコ
梨子「だって……私もその、マルちゃんのほっぺを触りたくって……」モジモジ
花丸「……千歌ちゃんや果南ちゃんに感化されすぎずら。とにかく、もうやめてほ……」
梨子「……ごめんね、悪乗りが過ぎたよね。……マルちゃんが嫌がってるのに、触ろうとしたらダメだよね……」シュン
花丸(そんな、世界が終わりの時を迎えるような、悲しい顔をしないで梨子ちゃん……)
梨子「……私ってば、本当馬鹿。マルちゃんの気持ちも分からないで。……じゃあね、私教室に戻るから……」
花丸「……ちょ、ちょっと待って。梨子ちゃん」 花丸「もう読書はいいよ。本はお家に帰ってからでも読めるから……」
梨子「マルちゃん、……本当にいいの?」
花丸「……梨子ちゃんに悲しい顔をされるくらいなら、オラはほっぺを差し出すずら……」
梨子「そんな生贄みたいに言われると、複雑なんだけど……」
花丸「……ほら触って、梨子ちゃん……」
梨子「恍惚とした表情でそんな風に言われると……なんだか背徳感が出るんだけど……」 モニュッ モニュッ
フニッ フニッ
花丸「……」
梨子「ああっ、柔らかい……。モチっとしたこの肌触り……まるでタピオカ入りのお菓子みたいな……触ってるだけで幸せな気分になってくる……」フフッ
花丸(……菩薩様のような笑顔で、オラの頬をつまむ梨子ちゃんを見てると、本当に幸福に満ち足りてるんだっていうのが分かるけど……)
よしみ「ねぇねぇ、あれってもしかして……」ヒソヒソ
いつき「所謂ひとつの、『キマシ案件』だね」ヒソヒソ
むつ「キマシレベルたっけーな、おい」ヒソヒソ
花丸(……せめて人の見てないところで触ってもらうべきだったかも知れない……///)カオマッカッカ
終わり 花丸ちゃんがプンスコ怒るイメージというのが微妙に湧かない マルちゃんのぷにぷにほっぺをすりすりしたい…
マルちゃんはイタズラされても怒らずに困りつつ次第に涙目になりそう >>104
やっぱり怒るイメージが湧かないよね
仏の花丸、というベテラン刑事みたいな二つ名がよく似合う(謎) >>106
その二つ名だと逆にめっちゃ怖くなりそう ーーー浦の星 音楽室
ーーー鞠莉と花丸は2人
ーーー梨子の奏でるピアノの音色を
ーーーしばし、聴き入っていました
〜〜〜〜♪
〜〜〜♪
〜〜♪
鞠莉「んー……ブラボーね、梨子」パチパチ
花丸「名演ずら……」パチパチ
梨子「ありがとう、鞠莉ちゃん、花丸ちゃん」ペコリ
鞠莉「私ね、初めて梨子のピアノを聴いた時から、『センスを感じる弾き方だ』って思ってたの」
梨子「そんな、センスだなんて……」テレテレ
鞠莉「謙遜しないの、私は本当のことを言ってるんだもの。ねぇ、あなたもそう思うでしょ、マル?」
花丸「うん、梨子ちゃんの演奏はね……お金がもらえるレベルずら!」
梨子「お、お金?」
鞠莉「あー、なるほどー。確かにお金をもらってもいいかも知れないわ」
梨子「それはいくらなんでも、大袈裟じゃ……」
鞠莉「……そうだ。今度、うちのホテルでディナーショーやらない?」フフフッ
梨子「お断りします、やらないです……」 鞠莉「あらそう。『現役スクールアイドルのピアノ演奏が楽しめるディナーショー』、ナイスアイディア&ビジネスチャンスと思ったのに……残念、フラれちゃったわ」
梨子「全然ナイスでもなんでもないよ……」
鞠莉「まっ、気が変わったら、いつでもマリーに教えてね。ディナーショーのプロデュースは、マリーにお任せアレ、よ♪」フフフッ
梨子「絶対気が変わらないので安心してください、鞠莉ちゃん……」
ブルブル ブルブル
花丸「……あれ、鞠莉ちゃんのカバンの中で何か震えてるよ?」
鞠莉「私の携帯ね。梨子の演奏を聴くために、サイレントモードにしてあったから……」
ガサガサ ゴソゴソ
鞠莉「誰からの着信かしら……ん、『非通知』?」
梨子「非通知って、……怪しい電話には出ない方がいいよ鞠莉ちゃん……」
鞠莉「うーん……でも、とりあえずかけ直してみるわ。もしかしたら間違い電話かも知れないし」
ガララッ
鞠莉「というわけで、ちょっと席を外すわねー」
りこまる「行ってらっしゃーい」 梨子「……鞠莉ちゃんったら、言うことのスケールが大きいしオーバーだよ……。私なんて、別に有名なピアニストとかそういうのでもないのに、ディナーショーやろう、だなんて……」
花丸「……でもマル、『お金がもらえる』っていうのは言い過ぎたかも知れないけど……さっきの演奏はね、華麗だったずら」
梨子「……華麗?」
花丸「あのね、演奏中、梨子ちゃんの指先がね、マルには鍵盤の上で踊ってるように見えたずら」
梨子「私の演奏が、踊ってるように見えたの?」 花丸「よくピアノを弾くことを、『鍵盤を叩く』って言う表現をするけど……梨子ちゃんの場合はね、『鍵盤を跳ねる』って感じだったよ」
梨子「叩くんじゃなくって?」
花丸「指が鍵盤の上を軽やかに跳ねて、ステップをしながら音階を移動して、まるで舞い踊るように動いてたの。音楽室のグランドピアノがね、舞踏会の会場になってたずら」
梨子「……面白い例え方をするのね、マルちゃん」クスクス
花丸「本当にオラにはそう見えたの! 笑わないでほしいずら!」カオマッカ
梨子「ごめんなさい……でも、そう褒められると……なんだかちょっと嬉しいかも」フフッ
花丸「ちょっとじゃなく、もっとたくさん喜んでほしいよ……嘘じゃないんだから」 花丸「……オラも、こんな上手にピアノが弾けたらなあ……」
梨子「マルちゃんも、ピアノを弾いてみたいの?」
花丸「うん。もしもピアノが弾けたらね……マルの思いの全てを歌にしてみたいずら……」
梨子「それじゃあ、私と一緒に練習してみる? 偉そうなことはあんまり言えないけど、少しは私も力になれるよ」
花丸「……でも無理。前にもね、試しにピアノの前に座って弾いてみたことがあったんだけど……指がもつれて、全く弾けなかったの……。梨子ちゃんのさっきの演奏を『華麗な社交ダンス』と例えるなら、マルは……『どじょうもすくえないどじょうすくい』ずら……」シュン
梨子「……それはいくらなんでも、自分を卑下しすぎじゃ……」
花丸「オラには、みんなや梨子ちゃんに聴かせる腕もないずら……」グスン 梨子「……マルちゃん。無理だと決めつけずに、やってみようよ、ね?」
花丸「……オラ不器用だからダメだよ……」
梨子「上手く弾くことより、楽しむことから始めましょ? 『音楽』って、名前の通り『音を楽しむ』ことが大事だから……」
花丸「……」
梨子「……そうだ、マルちゃん。今から鍵盤の前に座って、一曲弾いてみない? 私も手伝うから」
花丸「……うん」 花丸(……梨子ちゃんに促されて、いざ椅子に座って鍵盤を目の前にすると、あの時の記憶がフラッシュバックしてくる……あぁ嫌だなあ……)
梨子「マルちゃん。ほら、鍵盤に指を軽く乗せて?」
花丸「……ところで梨子ちゃん、『私も手伝うから』って言ったけど、……教えるとは違うの?」
梨子「違うよ。……さっきマルちゃん、『指がもつれて』って言ってたから……まずは、きちんと弾けるように、もつれないようにアシストしてあげないと」
花丸「アシスト……?」
スッ
梨子「うん……マルちゃんの手に、私の手を添えて……一緒にピアノを弾くの。そうすれば、指ももつれなくなるでしょ?」 花丸(マルに添えられた梨子ちゃんの手、温かい……なんだか、ドキドキしてくる……///)
梨子「……それじゃあ、ドレミの音階を順に弾いていこう?」
花丸「うん……///」
梨子「まずは……ド」
花丸「ド……///」
ドー♪
梨子「次は、レ……」
花丸「レ……///」
レー♪
梨子「ミ……ファ……」
ミー♪
ファー♪
花丸(……マルのこの胸のドキドキ、手と手を通して梨子ちゃんに伝わってるのかな……///)カオマッカッカ
梨子(……勢いでこんなことしちゃってるけど……私のこの胸の高鳴り、マルちゃん気づいてるのかな……///)カオマッカッカッカー ーーーそして
鞠莉「はぁー、電話をかけ直したのも結局骨折り損だったわー。まさか非通知の相手が『ヘンタイさん』だったなんて……」
鞠莉「『はぁはぁ、キミの今履いてる下着の上下何色?』って……私初めての体験だったわ……」
鞠莉「あーあ……『正直者はバカを見る』って言うらしいけど、本当ね。動揺して馬鹿正直に答えるんじゃなかったわ。おかげで長々と捕まっちゃった……」
〜〜〜♪
〜〜〜♪
鞠莉「あら、これってさっき梨子が弾いてた曲……にしてはさっきよりもテンポが遅いわ……なんていうか、スローなブギ、って感じ」 ーーー浦の星 音楽室
鞠莉「このスローなブギ、誰が弾いてるのかしら。ドアからチラッと覗いてみてましょう……」
チラッ
花丸「……///」カオマッカッカ
梨子「……///」カオマッカッカ
鞠莉「ワーオ、誰かと思ったらマル……というか梨子と2人で手を取り合って弾いてる、って様子ね……」
鞠莉「……なんだか今音楽室に入るのも悪いわ。2人の邪魔をしてしまいそうで」クスクス
鞠莉「オッケー。ここはまた改めて出直すとしましょう。……オハラマリーはクールに去るわよ……」フフフッ
鞠莉「まっ、マリーはスマイルだけどね♪」
終わり もしもピアノが弾けたなら…
今回のお話にピッタリでいい曲ですね
梨子ちゃんに優しくピアノの弾き方教えてもらいたい… ーーー浦の星 中庭
ーーー梨子と花丸は並んでベンチに腰をかけ
ーーーお弁当の包みを広げていました
花丸「わぁ、梨子ちゃんのお弁当、サンドイッチだぁ!」
梨子「マルちゃんのお弁当は、おにぎり弁当だね」
花丸「今日の梨子ちゃんとオラのお弁当、対称的ずら」
梨子「和と洋、だもんね。マルちゃん、梨子のサンドイッチと、マルちゃんのそのおにぎり、交換してもらってもいい?」
花丸「もちろんずら!」 モグモグ
花丸「むふふ、梨子ちゃんのサンドイッチ、美味しいずら……」ニコニコ
モグモグ
梨子「このおにぎりの具の梅干し、す、す、すごく、すっぱぁ……」ヒーッ
花丸「だって、ばあちゃんお手製の梅干し入りおにぎりだもん、ばあちゃんの漬ける梅干しはよだれがいっぱい出るんだぁ……」ンフフ
梨子「た、確かによだれたくさん出てくるけど……」ヒーッ
花丸「ふふ、すっぱさで梨子ちゃん顔がくしゃくしゃになってるずら」クスクス 梨子「……うぅ、まだ口の中にすっぱいのが残ってる気がする……」
花丸「梨子ちゃん、お口直しに、オラの卵焼き食べる?」
梨子「ありがとう、じゃあいただくね……」
アーンッ
モグモグ モグモグ
梨子「……ふふっ、甘い卵焼きね、だんだんすっぱさが中和されていくよ」フフッ
花丸「ばあちゃんの卵焼きはね、すっごく甘いの。伊達巻と同じくらい甘いんだぁ」ニコニコ
梨子「この卵焼きも、マルちゃんのおばあちゃんが作ったの?」
花丸「うん。おにぎりも、卵焼きも、煮豆も、あとこのレンコンのお煮しめも……全部ばあちゃんが作ったずら」 梨子「へぇ……。このお煮しめも、もらっていい?」
花丸「どうぞ、どうぞ」
アーンッ
モグモグ モグモグ
梨子「……いいお味。甘さと辛さのバランスが絶妙で、食感もレンコンの固さがちょうどよく残って歯ごたえが良い……」
花丸「でしょ? ばあちゃんの作るお煮しめはね、食べた人みんなが絶賛するんだよ!」ニコニコ
梨子「へぇ……そうなんだ……」
花丸「マルのばあちゃんは、沼津一の料理自慢ずら!」
梨子「……」 花丸「ごちそうさまでした、あぁ、美味しかった!」フフフッ
梨子「……ねぇ、マルちゃん。今度……マルちゃんの分も、お弁当作ってきてあげる」
花丸「えっ、そんな……なんかそれは悪いずら……」
梨子「いいの、いいの。1人分も2人分も、作り出したら変わらないから、ね?」
花丸「……じゃあ、オラ楽しみにしてるずら!」フフッ
梨子「うん、楽しみに……しててね?」 ーーーそして
ーーー浦の星 中庭
梨子「マルちゃん、この間の約束通り、お弁当……作ってきたよ?」
花丸「わぁー、ありがとう梨子ちゃん! 早速お弁当の蓋、開けてもいい?」ワクワク
梨子「えぇ……どうぞ」
花丸「んふふ、どんなお弁当かなあ……」ドキドキ
パカッ
花丸「おにぎりと、卵焼きと、煮豆と、それとレンコンのお煮しめ……」
梨子「……マルちゃん。卵焼きから、食べてみて?」 花丸「卵焼きから? それじゃあ、お手を合わせて、いただきまーす……」パチン
アーンッ
モグモグ モグモグ
花丸「……この卵焼き、なんだなすっごくふわふわ! まるでわたあめを食べてるようずら……」
梨子「食感がふわふわになるようにね、卵をよく濾してみたの、あと焼き方も気をつけてね……」
花丸「ばあちゃんの卵焼きとは違った感じで、美味しいずら」ニコニコ
梨子「……お煮しめはどうかな?」 花丸「この人参、お花の形になってる!」
梨子「それはね、人参をクッキー用の型抜きでくり抜いたんだよ?」
花丸「じゃあこのレンコンも、型抜きでくり抜いてお花の形にしたの?」
梨子「そのレンコンは……花形蓮根っていって、お花の形に飾り切りをしたレンコンなの」
花丸「へぇー。……ここまで形が可愛いと、なんだか食べるのがもったいないずら……」
梨子「……そう言わずに食べて? マルちゃん」
花丸「……うん、もちろん食べるよ!」
アーンッ
モグモグ モグモグ
花丸「んふふ……美味しい……美味しいずら……」ニコニコ
梨子「……」 花丸「ごちそうさまでしたっ」パチンッ
梨子「はい、お粗末さまでした」
花丸「梨子ちゃん、美味しいお弁当、ありがとう。お腹いっぱいずら……」
梨子「お腹いっぱい食べてくれて嬉しいよ……、あのね、マルちゃん……」
花丸「どうしたの?」
梨子「……えっと……」モジモジ
花丸「何を聞きたそうに、してるの? 梨子ちゃん……」
梨子「……梨子の作ったお弁当と、マルちゃんのおばあちゃんの作ったお弁当……どっちが美味しかった?」
花丸「……えっ?」 花丸「どっち、って言われても……」オロオロ
梨子「……どっちが、美味しかった? やっぱり、おばあちゃんが作った方が……」
花丸「えっと……どっちも美味しかったよ……?」
梨子「……味付けとか、食感の出し方とか……色々工夫してみたんだけど……ねぇ、どっちが……」
花丸「り、梨子ちゃん! ……なんでそんなこと……聞くの?」
梨子「……なんで、って……」
花丸「だってどっちも美味しかったんだもん、どっちがなんて、そんなの決められっこないずら……」 付け足し
花丸「だって、本当にどっちも美味しかったんだもん、どっちがなんて、そんなの決められっこないずら……」 梨子「……」
花丸「俯かないで、梨子ちゃん。……なんでそんなこと聞いたの?」
梨子「……ごめんね、マルちゃん。実はね……マルちゃんのおばあちゃんに、対抗心を燃やしちゃったの」
花丸「……対抗心?」
梨子「だってマルちゃん、この間、おばあちゃんは沼津一の料理自慢だ、って自慢してたでしょ? 」
花丸「うん……」
梨子「それを聞いてね……『梨子ちゃんの作ったお弁当の方が、美味しい!』ってマルちゃんに言ってもらいたくって……だからね、マルちゃんのおばあちゃんが作ったお弁当と同じメニューにしてみたの……」
花丸「……そうだったの……」
梨子「……ごめんね、変なこと聞いて……戸惑わせちゃって……」 花丸「……梨子ちゃんは、沼津一の料理自慢ずら!」
梨子「……マルちゃん、無理に答えなくてもいいんだよ……?」
花丸「本当のことだもん!ばあちゃんの作ったお弁当も、梨子ちゃんの作ったお弁当も、どっちも同じくらい美味しかっただもん、だから、オラにとっては2人とも沼津一ずら! 一位が2人いたらいけないなんて、そんなことないずら!」
梨子「……マルちゃん……」
花丸「沼津一の料理自慢が、身近に2人もいるなんて……オラはなんて幸せ者ずら……」ニコニコ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています