海未「幽明境が一になる」
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絵里「――え、海未はお姉さんがいるの?」
海未「はい」
海未「あれ……言ってませんでしたっけ……」
海未「歳もかなり離れていて、今ではとっくに結婚してしまって家にはいませんが……」
凛「初めてきいた!!」
花陽「どんな人なんだろう」
真姫「海未を大きくした感じ?」
海未「いえ……」
穂乃果「海未ちゃんとは随分違うよねー?」
穂乃果「なんていうか……チャラいというか……ギャル?」
真姫「どういうこと?」
ことり「確かに……今思い出すと……」
絵里「どんな感じなの?」
ことり「髪の毛も茶色だったり金髪だったりアッシュ系だったり……色々変えてたような気がするんだけど……」
ことり「そうだったよね?」
海未「そう、ですね……」
絵里「今度会ってみたいかも」
海未「もう……いきなり無茶を言わ――」
プルルルルルルル 真姫「……変な夢?」
ことり「ことりも……」ゴシゴシ…
凛「あのね、なんか――」
絵里「っっっ――……ぅ……」ビクッッ……
真姫「絵里?」
絵里「ぁ、ぅ……り、りん……くび、後ろの、く、び……」ガタガタ…
凛「え……」
穂乃果「ぁ……」
真姫「っっ……。――手の、アザ」
ことり「ひ……」
凛「え、え……?」
海未「ご、く……」
穂乃果「か、鏡、ほら……」
凛「――っっっ、な、なにこれっ!!」
凛「そういえば……ゆ、ゆめで……なにかに、追いかけられて、首を、掴まれたにゃ……も、もしかしてそれが」 ことり「っ……」
絵里「っ……わたし、と同じ」
ことり「絵里ちゃん、も?」
絵里「ほら」ガタガタ…
ことり「っぅ……」
穂乃果「なに、なんなのっっ!!」
ことり「……」ダラダラ…
海未「ことり?」
ことり「ハッ……ハッ……」
海未「ことり、どうしたんですか。落ち着いて」
ことり「や、やだ……」
真姫「ことり?」
ことり「や、だ、やだやだやだっ!!!」
海未「ことり!! ……どうしたんですか」
ことり「――ことりも、似たような、夢……見た」
真姫「え……」
ことり「何かに、呼ばれて……それで」
穂乃果「でも、アザないよ?」
ことり「っっ……掴まれたの、太もも、だから……」
穂乃果「ごく……」
ことり「あはは、脱いでみるね」
ことり「……」ドキドキ…スル
スル……ファサ…
海未「っ……」 ことり「ぅ……ぉえ……なに、これぇ……」
海未「手のアザ、ですが……ひきずったような、指が細く間延びしたような……ぅ」
穂乃果「きもち、わるい……なに、これ」
ことり「……」ガタガタ
海未「……他のみんなも起こしましょう……」
――――
海未「――つまり、みんな同時におかしな夢を見た、と」
海未「その中でも、呼ぶ声についていった人や、何かから追われて捕まった人……文字通り手に掴まれた感覚がある人が、その箇所にそのまま手形として残っている……」
にこ「……お、おかしいわよこんなのっ」
海未「……」
花陽「ど、どうして」
真姫「……わからない」
真姫「ただ、なんか色々……まずそうってことは分かる」
希「海未ちゃん、夢でお姉さんに会ったって言ってたよね? それで海未ちゃんは喉元にアザが出来た」
海未「……ね、姉さんがみんなを祟ったとでも言うのですか……」
希「っ、ごめん……」
穂乃果「何かの偶然てこと、ないかな」
真姫「偶然にしてはおかしすぎ」
絵里「……」ガタガタ…
穂乃果「昨日停電してて怖かったから海未ちゃんにトイレに着いて来てもらったんだけど……そこで悲鳴が聞こえて……」
穂乃果「絵里ちゃんが一人でお姉さんの仏壇の部屋に……」 にこ「暗いところ怖いんじゃないの?」
絵里「こ、怖いわよっ、でも気がついたらそこにいて! 全然意識とかなくって!」
絵里「逃げようとしたら、腕を掴まれて……」サ-…
希「えりち……」ポンポン
海未「……少し落ち着かせてあげましょう。ほとんど眠れていないようですから」
希「その方がいいね」
絵里「うぅ……」
希「じゃあ一旦みんな家に帰って、また学校で練習!」
穂乃果「うんっ」
――――
二日後
絵里「……」
真姫「絵里、何か変よ?」
絵里「ごめんなさい、眠れなくて……」
海未「またですか?」
絵里「……え、ええ」
絵里「――変な夢を見るの……何かが来て、何かが呼んで……わたし、行きたくないのに、そっちへ、どんどん近づいてるっ……っ」
絵里「あれはなんなのよっ!!」
絵里「わたしどうなってるのっ!!!」
海未「落ち着いて……」
穂乃果「……ねえ、思ったんだけど、さ」
海未「はい……」
穂乃果「――絵里ちゃんのアザ……なんか、大きく、なって、ない?」 絵里「!?」
真姫「確か……ただの、手のアザだったわよね」
海未「アザが……肩の方まで、伸びて……」
絵里「ひっ……」
希「えりち、服、脱いでみて」
絵里「や、やだ……」フルフル
希「えりち」
絵里「いや、いや……」
真姫「……海未、抑えて」
海未「……すみません」ガシッ
絵里「や、いやっ」スルルッッ
ファサ……
穂乃果「っっ……ぅ、肩から胸の方まで……」
海未「明らかに大きくなってます……濃さは薄くなっているようですが、一体これは……」
真姫「――なんか、生きてる、みたい……」
絵里「……ごく、へ、へんなこと言わないでよ」
穂乃果「ことりちゃんと凛ちゃんも調子悪そうだったよ……」
希「コレ……本格的に、なにかに憑かれたとか、かも……」
海未「……」 ――――
三日後 夜
海未「……失礼します」
亜里沙「ここのところずっとそうなんです……全然眠れてないみたいで、フラフラしてて……」
海未(絵里もみんなも、あの日以来……時々へんな夢を見るようになったと、言います)
海未(絵里はとうとう練習にも参加しなくなって……連絡もつかなくなりました)
海未(……一応返事には答えるとのことでしたが……)
海未「鍵はかかっているのですか?」
亜里沙「いえ」
海未「開けても?」
亜里沙「……大丈夫、です」
亜里沙「あの、今日はお姉ちゃんのそばに居てあげてください……」
海未「ええ……ゆっくり眠って欲しいですから」
海未「……絵里、入りますよ」
カチャ…
海未「絵里……」
絵里「ぁ……ぅ……ぃ……は」 海未「絵里、海未ですよ……」
絵里「海未……海未……」
海未「今日は泊まらせて貰おうかと思って居ます……そばで眠らせて貰ってもいいですか?」
絵里「え、ええ……」ガタガタ…
海未「……」
亜里沙「ここ三日くらい……毎日夜になるとこうなんです……」
海未「そうですか……」
海未「絵里、夢の調子はどうですか?」
絵里「くるの……毎日、毎日……寝るたびに黒いのが、私の手を握って、こっち、こっちってっっ!!!!」
絵里「……ひ、ぃ……」
亜里沙「……」
海未「絵里……もう眠りましょう? 私がそばにいますから……」ナデナデ…
絵里「……う、ん」
海未「そういうことなので、亜里沙……」
亜里沙「お願いします……っ」 ――――
あの夜と同じ、土砂降りでした。
横殴りに大粒の雫が、窓を叩きつけます。まるでこの世ならざる場所から、私たちを呼んでいるかのように。
カーテンの隙間から雷光が差し込みました。陶器に例えるのは無粋と思えるくらい、白く透き通った肌。
先ほどまで私に抱きつきながらうめき声を上げていた絵里は、今では静かな寝息を立てています。何かあっても良いように、今夜は眠らないつもりでいましたが……少しくらいなら大丈夫かもしれません。
しかし。そう思った矢先でした。
絵里「……」ムク…スタスタ
海未(……トイレ、でしょうか)
きぃ……と、小さな音を立てて扉を開けて部屋の外へ。
何事もないとは思いつつ、見届けるため私もつられて鉄製のノブを回します。
ばしゃばしゃ、ばしゃばしゃ。
打ち付ける雨。
ひた……ひた。
絵里の足音が奇妙な程に響き渡っている。
海未(トイレではない……お水でしょうか) 絵里の背中は、リビングを目指しているようでした。
……ひた、ひた。
リビングに到着。
ぴた。
絵里は緩やかにでも確かに進めていた歩を止めました。
私が後ろ手にリビングの扉を閉める音。しかし絵里は振り返りません。聞こえないはずない。いえ、絵里の状態ならば正常な判断は出来ないのかもしれません。
海未「絵里」
絵里「……」
微動だにしない背。
がしゃんっ!!
……外で割れるような音が聞こえました。
雷が近くで、落ちたみたいですね。
海未「……電気、つけますね」
なにかが、おかしい。
次第に心に膨れていく不安。なにに対する不安かもわからないまま、それを拭い去るために、正面に手を――。
絵里「ッひっ……っかッぁ」
海未「え……」
――この世ならざる声が、聞こえた気がしました。 声にならない呻きを発する絵里。両腕で頭をぐしゃぐしゃにかきむしり、ぶちぶちといった小さい音が、微かに聞こえました。
床には一瞬雷光に照らされたブロンドの髪の毛。
――雨は、不自然なまでに止んでいた。
ぶちぶちとその手で髪の毛を引きちぎりながら、絵里は頭をぐわんぐわんと動かしました。
海未「絵里!!」
異常だ。
絵里の手を掴んで、振り返らせる。
海未「――ひ……っ」
もうそれは、絵里ではありませんでした。
闇夜に煌めく鮮やかなブロンドの髪の毛、白磁のようなきめ細かい白い肌、高い鼻、長い睫毛、小さな唇。
誰しもが羨む美貌を持った彼女。
絵里「――ギ……が、っ……ぃ」 しかし、その青かったはずの目は、白目になりかわり、微かに上に見えている青い瞳はギョロギョロと何かを探してのたうちまわっています。
低く地鳴りのような声、ギョロギョロと泳ぐ白目、誰が見ても異常な光景が目の前で起こっていました。
絵里の腕を掴んだ私の左腕を、万力の力で持って掴みかえす絵里。
絵里「っぅ……ぐっぁ、ひっィっ」
海未「っぅ……」
逃げようと、重心を後ろにやっても、まるで動かない。
冷静な判断はとうに出来なくなり、息を吸うのが苦しい。背中を伝う汗はどんどんと量を増していく。
海未「え、り」
海未「はっ……はっっっ」
後ろに倒れこむ。それでもなお、絵里の腕は離れない。私を追うように前かがみに倒れこみ、目と鼻の先に、異形の白眼。
声がでない。
絵里「……ぁ」 もうだめだ。と、何がだめなのか殺されるのか何かされるのか、それすらもわからずに半ば諦めかけていた私の胸に……絵里が倒れこみました。
海未「……っ」
万力だった腕は解けている。
海未「……はぁ、はぁ……」
一瞬静まり返った空間に、途端に雨が降ってきたのか打ち付ける音が響いてきます。
バッ…
海未「でんき、でんき……」パチッ
海未「……ごく……」
照明を点けて、絵里の姿を視界に捉えると……。そこには口から泡を吹きながら四肢を痙攣させている絵里の姿がありました。
海未「絵里!!!」
亜里沙「――ど、どうかしましたか!?」
海未「き、救急車です!! 亜里沙!」
亜里沙「え、おねえちゃ……ひっ……」 ――――
次の日
海未「命に別状はない、と……それだけでした」
海未「脳もどこもかしこも健康だと言うのに、なぜか意識が戻らないと」
穂乃果「……」
希「えりち……」
にこ「なによ……一体どういうことなの!?」
にこ「絵里に……凛、こんな、こんな1日のうちにおかしくなるなんてどうかしてるわよっ!!!」
海未「……」
そう、絵里だけではありませんでした。
昨日は花陽が凛の家に泊まりに行ったとのことでしたが、私が経験したように凛も意識を失ったらしいのです。
海未「真姫と花陽が凛の病院へ行っています、私達もあとでいきましょう」
にこ「一体何がおきたの!?」
海未「――わかりませんっ!!!」
海未「……でも、亜里沙から聞きました。腕のアザは……胸、心臓の方まで広がっていたと」
にこ「なによ、それ……」
海未「一体なんだというのですか!! こんな、こんな!!」
海未「おかしいですよ!! なんで絵里が、なんであんなアザが!! なんで、なんでなんでなんでっ!!!」
穂乃果「海未ちゃんっ!!!」
海未「っ……」
穂乃果「落ち着こ……」
海未「すみ、ません……」
希「……あのさ、えりちがおかしくなってから色々聞いてみたり、調べてみたりしたんだけれど……心霊とか祟りとかそういう類に強いお寺があるんだって……みんなで行ってみない?」
にこ「……行かないより随分ましだと思う」
海未「そうですね……明日にでも行ってみましょう」 ――――
病院
真姫「凛……どうして」
花陽「凛ちゃん……ぐす」
真姫「……ねえ、花陽」
真姫「凛は、何か言ってなかった?」
花陽「なにかって」
真姫「なんでもいいの、なんでもいいから……凛がこうなってしまった理由、私達が巻き込まれていることなんでもいいから解決しなくちゃいけないの!」
花陽「ぅ、でも」
真姫「口にするのが怖いのはわかる、でも……お願い」
花陽「……」 えっと……その日はいつもみたいに凛ちゃんが私の家に来ていたの。練習終わりだからっていうことで、凛ちゃんは家でご飯を食べて着替えて来ていたの。
その時まではね、本当にいつもと何も変わらない笑顔だった。絵里ちゃんほどではないにしろ、首筋のこととか怖がっていたはずなのに。
思えば、それが最後の輝きだったのかも? なんて。ご、ごめん……わかってる、最後ってそういう意味じゃなくって。うん……うん。でもそうとしか思えなくて。元気になってくれたのかなって思ったけど。
そう、それでね……泊まりに来るのは本当にいつものことなの。そこで眠る時に、どんな感じなのかな? って聞こうとしたんだけれど。いざその時、テレビを二人で見ていて何気なく笑って、そろそろ遅い時間だから眠ろうかって電気を消した時。
雷が鳴ったの。
すぐ後に、すごい雨だねって、窓を叩くような音が部屋の中に響いてて。眠れるか不安だったんだよね、でも凛ちゃんとなら平気かなってそっちを、見たら。
――首筋を凛ちゃんが掻いていたの。
かゆそうに。
なんども、なんども。
あつそうに、なんども、なんども。
つよく、いたいたしく、なんども、なんども、なんども、爪を突き立て引き裂くみたいに。 そう、うん、異常だった。
掻いてるんじゃなくて、まるで――自分の首筋のアザを取り除こうとしているみたいに。
血が出ていたの。
ぽたり、ぽたり。凛ちゃんの細い指から腕にかけて、何度も強く掻きむしったせいで。
そう、ここだよ……痛そうでしょ? これが傷の原因。
なんで止めなかったのって……止めようとしたよ。でも、凛ちゃん――無表情なの。
強く激しくなっていく搔きむしりと対照するみたいに目はどこか違う方を向いて、この世じゃないどこかを向いているみたいで……っていうのはイメージなんだけど。
思えば窓の方だったかな……雨がうるさかった外の方。私もつられてそっちを見てみるとね、さっきまでの雨が嘘みたいに――不自然なほど静まり返っていて。
その時なの……。うん、うん……へいき、はな、せるよ。だから真姫ちゃん、きいて、ね?
り、凛ちゃんが、喉のあたりを搔きむしり始めたの!悲鳴をあげて!さっきの雨にも負けないような金切り声が部屋だけじゃなくていろんなところに響いているみたいで! 私までぐわんぐわん脳みそがゆさぶれるみたいな感覚になって!!
苦し紛れに、止めなきゃって思って……凛ちゃんの手止めようとしたけど。わたし、何もできなくて……!!!!! 凛ちゃんは、両手でがりがり、がりがり、血が滴りながら皮がむけ落ちて、それでも続けて。
凛ちゃんね、言ってたんだ。
あつい、あついって。目をぎょろぎょろ回して唾液が口の端から吹き出て、ひっ、ひっぃって。
――たすけて、たすけてって。
悲鳴の中に、確かにそう聞こえたの。
……悲鳴が聞こえなくなると、ぼんやりしていた頭も覚醒してきて……倒れている凛ちゃんがいたの。肩を揺すって胸を叩いて、顔をさすって、なんとか反応がないか試していたのに何も反応はない。
息はある、それだけわかって救急車を呼ぼうとしたの、でもね――
「――がよ、ち………ァ゛ぁ……」 ぅ……そんなことを言いながら、突然起き上がった凛ちゃんに、私は壁際に押し付けられて首を絞められて、何がなんだかわからなくてがたがた震えちゃって。
白目を向いて、がしがし掻きむしった手が私の首筋を掴んでひんやり冷たかったの。
どうなるのかな……なんて考えている暇も無くて……気がついたら首筋の手は離れていて……今度こそ凛ちゃんは倒れこんでいて。
しんと静まり返っていた部屋が、雨の音で満たされてなんとなく安心したような気もする。
それでね……救急車を呼んで、来るまでの間にお母さんや近所の人に聞いてみても誰一人凛ちゃんの声を聞いた人はいなくて。
今まで聞いたことのないような禍々しい叫び声だったの。他の人が聞こえないはずないの!! あれはなんだったのっ、一体あれはっ……。
大丈夫、落ち着いてるから……はぁ、はぁ。 うん、凛ちゃんなんでそうなったのかわからないでしょ?
でもね、一つわかることがあるんだ。凛ちゃんのアザが、一気に胸のところまで伸びてた。
ベッドに入る前は首すじのところに薄くあっただけなの。でもほら、みて……凛ちゃんの……。
でしょ?
あの瞬間、アザが伸びてたのかもしれない。凛ちゃんの命を狙って、何かが凛ちゃんを脅かそうとしていて。
うん……しかもね、あのね……。
私にもアザが出来たの。 真姫「え……!?」
花陽「気がつかなかったでしょ? 真姫ちゃんもみんなも私に意識向けてる暇なんて無かったと思うから。ほら……首のところ……うっっっすらだけど……」
真姫「ほん、とだ」
花陽「これ――凛ちゃんに絞められた時の跡だと、思うの」
真姫「……ごく」
真姫「ちょっと待って……一旦休憩にしましょう? 飲み物でも買ってくる。みんなももう少しで来るだろうし」
花陽「うん……」
ガチャ……
花陽「はぁ……りんちゃん……なんで、なんで」 ――――
真姫「凛が絵里がどうしてああなったか……」
真姫「……アザがあったからというのは間違いない」
真姫「他にもなにか……」
真姫「花陽も疲れていたみたいだし、甘いものの方がいいかしら」
真姫「……」
ポチッボトン
真姫「みんなはまだ?」ポチポチ…
シト……シト
ポタポタ…
真姫「雨……?」
ザ----ッッッ………
真姫「……最近多いわね……」 真姫「全く……傘持ってきてないんだけど」
真姫「はぁ」
スタスタ
真姫「……」ガラ
バタッ
真姫「え」
花陽「」
真姫「――ひ…………は、はなよ?」
真姫「は……花陽、なんで……気絶してるの、ねえ、起き――」ユサユサ…
花陽「――ア゛ぁ……っィ」ガシッ
真姫「ひぃっっっ」
花陽「」
真姫「は……は……なに、いまの」
真姫(白目で、あんなに)
真姫「はぁっ、はぁっ……」
海未「――真姫?」
真姫「ぁ、みん、な……」
穂乃果「花陽ちゃん!?!?」
真姫「先生、先生呼んで……」ガクガク…
海未「わ、わかりました!!」 ――――
ポツポツ…
花陽「……?」
ザ---
花陽「あ、め……スコール……?」
ザ---ッッッザ---ッッッッ
花陽「ご、く……」
バチッッ
花陽「へ、停電!?!?」
花陽「な、ななななんで!? でもでも病院での停電はすぐに予備電源が……」
花陽「……」
花陽「……」ドキドキ…
シ----ン…………
花陽「……ご、く」
花陽「あ、め……やんだ?」
ドクドク 花陽「な、に……首筋、あつ、い?」
花陽「あつい、あつい……あついっ」
花陽「はっ、はっ……なにこれ、なにこれ!?」
花陽「かがみ、かがみっ……」
ガシッッッ!!!!
花陽「ひっっっ」
花陽「あっ……ぁぁ……なにこれっ、手が手がっっ!!!」
首筋の急激な暑さを確かめようとカバンに手を突っ込んだ時でした、それを阻むようにして地面から――手が生えてきていた。
真っ黒で、ゆらゆらと、人の手でした。
掴まれた個所は万力に掴み潰されたように感じ、また、灼熱の釜に入れられているようにも感じられた。
花陽「あ、つ……ぁっ゛゛゛」
花陽「やめて、ゆるじて、ゆるじてぇ」
願いが通じたのかどうか、ふっとその手が離れた瞬間に私は震える四肢に力を込めて、扉の方へ。 停電は復旧しない。
静かすぎる。
おかしい、おかしい。
私はいまどこにいるの?
ここは、現実、それとも?
吹き出す汗をぬぐって、がちゃがちゃと扉に手をかける。
引き戸、鍵なんか誰もかけてないんだから開かないはずがないの。でも。
花陽「あかないっ、あかないっ、なんで!?」
花陽「あいて、あいてよっ!!!!!」ガチャガチャッッッ
凛「――かよちん」
花陽「え」
聞き慣れた声、パニックに陥りかけた私を救ってくれるかのような優しく甘い声。
花陽「凛ちゃん?」
ベッドに眠っていた凛ちゃんは、その場にゆらりと起き上がっていて……ゆっくりとベッドから足を踏み出す。
俯いていて、前髪がだらりと落ちていて表情は見えない。 凛「かよちんと、りん、ずっといっしょだよね」
花陽「う、ん」
花陽「目が覚めたの? 痛いところは!? くびとか」
凛「だから凛を無視して逃げようだなんて、おもったりしないよね」
花陽「え、あ」
凛「ちがうの」
花陽「そ、そうじゃなくてさっきのは」
凛「ちがうんだ」
距離は一歩のところまで迫っていた。気がつけば扉に追い詰められるような形になっていて。
花陽「ど、どうし」
凛「チぃ゛がヴん゛だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」ガシッッッ
花陽「ぃっっ」
花陽「あっ、がっ……」 凛「ぎ、ぎぎぎィ……っっ」
それはもう凛ちゃんじゃありませんでした。
目全部が黒く染まり、肌も焼け焦げたように黒く爛れ落ち、私の首を締め付ける。
――ばりんっっと、窓が割れました。
そこから這うように、うねうねと大量の赤黒い腕が勢いよく、私目掛けて飛んできました。
一本巻きついて。
もう一本が巻きついて。
数十本が巻きついて。
何本も灼熱のそれが巻きついたところで意識が白む。
最後に凛ちゃんがドロドロの黒い塊になって、私にのしかかってきてそこから――。 正直速報は面白いSSあっても見逃しやすいから
こうやって一度ここで宣伝するスタイル普及してほしい 速報確定なら見つけられると思うけど、このスレ残ってたら誘導してくれると助かる 板移動する意味って?
そこまで荒らされてるでもないし、今のところ落ちる気配もなさそうなのに
好きなところで書けばいいとは思うけど色んな所でスレ立てして何がしたいんだか 移動先見つけるの面倒になって読まなくなるんだよなあ
我儘なのはわかってるけどみんな誘導して欲しいわ…… 海未「幽明境が一になる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1511156223/
一期投下したかったんですが改めてここが不便すぎたのでこっちに全部投下しました。付き合ってくださった方はどうもありがとう。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています