九州豪雨で大規模に氾濫した熊本県の球磨川で、豪雨から1か月を経ても、水が濁った状態が続いている。「泥水」のような状態は薄まったが、5日現在、緑と茶色が混ざったような色になっている。川に流れ込んだ大量の土砂などが原因とみられるが、かつての「清流」にいつ戻るかは見通せず、観光などへの影響を心配する声もあがっている。

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 熊本県森林保全課などによると、今回の豪雨では7月29日時点で、球磨川が流れる八代、芦北、球磨地域で山地崩壊が計346か所(総面積45・7ヘクタール)確認された。大量の土砂や木々が球磨川に流れ込んでおり、濁りはこうした土砂や流木の影響とみられる。

 国土交通省八代河川国道事務所の担当者は「これほどの濁りが1か月も続くのは、記憶にない」と話す。水質調査を毎月実施しているが、7月は濁りがひどいため中止となった。8月末に調査を再開する方針だが、「かつての水質にいつ戻るかは分からない」とする。

 地元の人吉高カヌー部顧問の大瀬修平教諭(45)も「ずっと球磨川を見てきたが、こんなに濁りがとれないのは初めて。いつになったら元の透明感が戻るのだろうか」と心配する。球磨川を練習拠点とするカヌーの指導歴は20年以上だが、「川底にある岩も確認できず、練習に支障が出ている」と話す。

 球磨川は昨年まで4年連続で「九州で水質が最も良好な河川」の一つに判定されてきた。「清流の女王」と呼ばれるアユ釣りの名所としても有名だ。アユは川底の石に生えたコケを食べるが、石の表面に泥がたまり、濁りで日光が当たらないと、アユの生育にも影響が出るという。また、ラフティングや川下りなど体験型観光も人気を集めるが、まだ再開を見通せない業者が多い。県国際観光推進室は「水質の良さと景観の美しさが売りなので、観光に与える影響も心配だ」としている。
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