大河ドラマ・『坂の上の日向』〜坂道三国志より

第1話「平氏のけやき」

坂道の上にある、一本の欅が、秋の風に色づいている。
その欅を目指すように、一人の武将が坂道を登っていく。

長濱「この街にも、我を必要としてくれる武者は居るだろうか……」

長濱ねる、坂道の途中で振り返る。
眼下に見える街のあちこちは、戦火に焼かれた跡が生々しい。
御侘(ヲタ)の民はやむを得ず、地下暮らしを余儀なくされているものも多い。

語り「乱世、であった。
   400年続く康帝国は、英慶毘の相次ぐ武将の離反、乃木党の硬直、外来勢力の侵略もあり、崩壊の一途ににあった。
   康帝はこの混乱に終止符を打つべく、新たなる秩序『欅家』を招集。
   物言わぬ民のため、欅家は渋の谷の中心にて、新たな価値観とともに挙兵した。

   しかし――この長濱ねるは中山道を進行するも、行軍に遅れ、その挙兵に間に合う事ができなかったのだ。
   欅家はこれを重く見、長濱は将としてみなされることはなかった。
   代わりに、欅とは別の一族――「平氏」を名乗らせ、あらたな武将を得る募兵の任についていたのだった。

長濱「……わが未来。自ら探し、いつかどこかで合流せんことを――」

 長濱、風の向きを探し出すよう空に掌を伸ばす。
 何かが触れたような感触。日向のあたたかさを手に優しく感じている。

 長濱は一人きり、また歩き始めた。

(語り・宮田愛萌)