大学の夏休み、地元に帰ってきた俺は幼なじみの薦めで祭りの御輿を担ぐことになった。
御輿は2基、6人ずつ2組に別れて町内を練り歩く。
俺は友人とは別の神輿を担ぐことになった。
御輿の左右に3人ずつ、先頭の2人は何度か参加したことがあるらしい人が立つ。俺は右側の真ん中。
自治会のおっさんの説明もそこそこに、御輿は境内から出発する。
この神社の参道には、どんな謂れがあるのかは知らないが北側だけに狛犬が何体も並んでいる。横を通りすぎるたびに狛犬に睨まれてるような気味の悪さを感じて、俺はなるべく前だけ見るようにして鳥居へ向かった。

30分ぐらい歩いただろうか。
住宅街の中の小さな十字路を右に曲がったところで神輿は突然止まった。
前列の2人が立ち止まってしまったようだ。俺の位置からは前の人の横顔しか見えないが、左側の人の方を見てなにやら話している。
しばらくして、御輿はまたゆっくりと進み始めた。「道を間違えたのかな?」などとぼんやり考えていた時だった。
コトン
マンホールの蓋だ。しかも一ヶ所に4つ。

御輿は神社へとなにごともなく帰ってこれた。
行きはあれほど不気味に見えた狛犬も俺の帰りを歓迎してくれている様に見えて、横を通り過ぎるたびに一体一体に愛想笑いして通りすぎた。

御輿を倉庫に降ろすと俺は大きく安堵のため息をついた。
無事に戻ってこられた。当たり前だが。
それにしても、もう一基の御輿、なかなか帰ってこないな…