プライバシー機能の改善
まずはプライバシー機能の改善から説明します。
ブロックチェーン上に取引情報が記載されるビットコインではこれまで、コードを見ると、特定の公開鍵に送付したのか、任意のスクリプト(マルチシグなど)に送付したのかが誰でも判別できてしまうECDSA(楕円曲線DSA)という署名方法を採用していました。タップルートでは「シュノア署名」を採用することで、公開鍵の署名と、任意のスクリプトの署名を同じ形の署名にしたり、複数の署名を一つにまとめたりできます。これによって、取引情報を隠し、プライバシーの向上を可能にします。
プライバシーの向上についてはMASTも貢献しています。MASTはある特定条件のみの内容を公開することで、不必要な条件を隠し、プライバシーを向上させます。しかし、「MASTを使っている」ことが自明になってしまうために、別の条件があることが分かってしまうという欠点が指摘されています。
タップルートでは、シュノア署名の技術を使った「ペイ・トゥ・タップルート(P2TR)」と呼ばれる新たな出力を作成することで、「MASTが使われている」トランザクションを通常のトランザクションと見せかけることができます。これによって単一の公開鍵に資金がロックされた出力にすることができ、プライバシーを向上させることができるのです。