キリギリスが最期に自分の生きざまを語る

冬が来て食料が無くなり困っているキリギリスに、アリは「夏も歌って過ごしていたのだから、冬も歌えばいいんじゃない?」と言います。

するとキリギリスはこう答えました。
「もう歌うべき歌はすべて歌った。君は僕の亡骸を食べて生き延びればいいよ」

後先を考えずに遊んでいるだけに見えたキリギリスでしたが、実はすべて見据えたうえで、生きている時間を命がけで楽しんでいたのでした。
もしかしたら意地を張って言った言葉かもしれませんが、いずれにせよ考えさせられる結末です。

「アリとキリギリス」の教訓は?解釈を考察

本作に込められた教訓は、それぞれの結末によって異なってくるでしょう。それを踏まえたうえで、どんなことが考えられるか考察していきます。

困った人を助ける優しい人になるべきである

キリギリスが助かる結末では、夏にからかわれたにも関わらずキリギリスに手を差し伸べることができるアリの優しさがわかります。特に日本で広まっている物語では、キリギリスが泣いて感謝をし翌年から勤勉に働くようになったことから、優しさが相手を変えることができるということも伝わってきます。

後先を考えずに過ごすと後で困る

夏に遊んで暮らしていたキリギリスは、結局冬に困ることになり、過去のおこないを後悔することになりました。目の前の楽しさに溺れ、先のことを考えないと、後で苦しむことがわかります。

これはどの結末でも共通していることですが、特にキリギリスが死んでしまう結末では強烈に伝わってくる教訓です。

幸せの尺度は人によって違う

「夏に遊んで暮らすと冬に苦しむ」ということだけを考えると、キリギリスは不幸な人生を送ることになったと考えられるかもしれません。しかしキリギリスにとっては、夏に遊んで暮らすことこそが人生にとって大切だった可能性もあるのです。冬に死んだとしても、夏を陽気に過ごせるほうが幸せなのかもしれません。

キリギリスがアリに対して「歌うべき歌はすべて歌った」と語る結末は、幸せの尺度は個人によって異なり、それぞれの生き方があることを示しているともいえるでしょう。