さて,そこで「アリとキリギリス」に戻りましょう。
アリとキリギリスはどうなるといいのでしょうか,そこにはどういう問題があるのでしょうか。
キリギリスは夏に汗水たらして働いているアリたちを小バカにしていました。
ここには自分と相手を比較し,自分の優位(と自分で思っているところ)を必要以上に見せつけているところがあります。
そんなことをしないといけないのは,自分の役割や持ち味といったものに本当に満足していないからと見ることもできます。
キリギリスが音楽を奏でるという自分の役割や持ち味(心理学にはアイデンティティという考えがあります)に誇りをもって満足していれば,
一生懸命働いているアリたちを小バカにするようなことはないでしょうし,ひょっとするとアリたちの疲れを癒すようないい音楽を奏でてくれるかもしれません。
また,アリの方も自分は自分,キリギリスはキリギリスということを受け入れていれば(心理学では自他の区別ということで分離個体化とか自我境界という考えがあります),
キリギリスが困った時にやり返すなんてことをしないでしょう。
このようにアリとキリギリスがお互いの持ち味を尊重しあうようになれば,変な自慢や嫉妬,攻撃,嫌がらせといったものは起きないのではないでしょうか。