欧州のエンジニアには、終身雇用という考えは毛頭ないようです。彼らは、
自分がエンジニアとして成長を遂げるために「優れた実績」を心底欲しています。
機会ががあれば、どんどん手を上げて、意欲的に挑戦します。そして、
そのチャレンジを通じて成長し、実績を(多少大げさに)履歴書に書き込んでは、
自らの才を発揮できる環境を選んで次の企業へと移っていきます。

ただ、弊害も少なくありません。彼らの動機はすべて「自分のため」ですから、
愛社精神のカケラもありませんし、ひと度経営が傾くと蜘蛛の子を散らすように
エンジニアたちは逃げていきます。部長級が部下を誘ってゴッソリ辞めるなんて
事もあって、プロジェクトは中断を余儀なくされます。一番驚くのは、彼らが一切
「引き継ぎ」をしないことです。メールの返信が無いので、バカンスかな?と
思っていると、実はもう辞めていた、なんてのは日常茶飯事です。彼らには、
立つ鳥跡を濁さずという言葉は無いようなのです。

日本では、最後まで責任を以て勤めることが、美徳とされてきました。
転職するにしても、キッチリ引き継ぎを行います。それが、日本人の「当たり前」
です。部下を誘ってゴッソリ辞めるなんてことは、「通念上」起こりにくいのかも
知れません。

しかし、極端に人の入れ替わりが少ないがために、硬直した組織体系を生む遠因と
なっているのは、間違いありません。そして、そうした組織体系が、日本車から
先進性と斬新さを失わせているのも確かです。

技術的困難を克服することこそ、日本車が最も得意とすることでした。驚くような
先進技術を意欲的に投入し、世界をアッと言わせて来たのです。
ハイブリッドだって、電気式4WDだって、PHVだって、FCVだって。
みんな日本が先手を打った技術です。しかし、ここ数年、そんな勢いを感じることは
スッカリなくなりました。特に、BEVの導入は、欧州・中国に完全に遅れを取ってしまっています。