脱炭素社会の実現のカギを握る水素:世界の覇権争奪にも影響/上
先行する欧州と追うロシア

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2020年7月になって、欧州委員会は「水素戦略」を公表する。
@2024年までに、欧州連合(EU)域内に少なくとも6ギガワット(GW)の再生可能水素電気分解(電解)装置を設置し、最大100万トンの再生可能水素の生産を支援、
A2025〜2030年にかけて、水素は統合エネルギーシステムの本質的な部分となる必要があり、少なくとも40GWの再生可能水素電解解装置と1000万トンの再生可能水素をEUで生産することが求められている、
B2030年以降、再生可能水素はすべての脱炭素化の困難な部門に大規模に導入される――というのが工程表だ。

ロシアが注目するのは、メタンの熱分解による水素製造だ。酸素を利用せずに天然ガスから水素を得る方法(CH₄=>2 H₂+C)で、二酸化炭素の生成を排除し、その代わりに固体炭素(すす)が副産物となるが、気候的に中立であり、幅広い用途に利用できるという。
 この水素製造方法は消費エネルギーが少なくてすむという特徴がある。
ロシア国営の総合エネルギー企業、ガスプロムのデータによると、水の電気分解では1立方メートルあたり2.5〜8キロワット時の電力量が必要だが、メタンの熱分解では0.7〜3.3キロワット時ですむ。
ドイツのBASFによると、その差はさらに大きく、3〜4倍どころか10倍近くにもなるという(ロシア語の『エクスペルト』による情報)。