ではどうすべきなのか。日本人はデフレ経済に慣れすぎた。
2500円のランチを普通に食い、300万円のクルマをポンと買うようになれば、物価は急速に先進国水準に戻るだろう。
だが、それを消費者に丸投げされても困る。
筆者自身もとても2500円のランチは食べられない。
牛丼にトッピングして500円オーバーになっただけで、ちょっと節約が足りていない気分になる。

 では企業が賃金を上げればいいのか。それができればいいが、企業の側にも都合はある。
バブル崩壊以降、人件費に圧迫されて窮状に陥った記憶が骨身にしみている。
厳しい労働法規のせいで、正規雇用人件費の弾力性がゼロなのだ。
慎重にならざるを得ない。鶏が先か卵が先かの話そのものだが、企業が賃金を上げないから消費が伸びず、消費が伸びないから賃金が上がらない。

 日本の労働者の質は高い。世界に冠たるサービスを安い賃金で提供する状況にすっかり慣れてしまっているのだ。俯瞰(ふかん)的に見れば、製品やサービス、労働のクオリティを正しく評価し、対価を支払える人が減ったことがその原因であることはほぼ間違いない。
では、それを解決するにはどうすべきなのかという決め手が今のところどこにもないように思える。
企業は適正な人件費を払わず、顧客は商品やサービスに適正な対価を支払っていない。
教育の問題と言えばそうなのだが、それを誰がどこでやるのか。その先が見えてこないのだ。