今、日本の物価と給与水準は明らかにおかしい。牛丼が一杯380円という水準はOECD加盟34カ国の中で、もはや最貧国レベルの物価だ。

 筆者の友人に企業再生コンサルタントがいる。多くのリゾート物件再生を手掛けてきた彼に話を聞いて驚いた。
少し前から、ニセコのスキー場にはオーストラリアやニュージーランドからの旅行者が多数押し寄せている。
外国人旅行者はスキー場の2300円のカニ・ラーメンを「日本は物価が安い」と喜んで食べているという。
驚くべきことに、この店ではこのカニ・ラーメンが一番人気のメニューだと言うのだ。

 こうした旅行者のおかげでニセコでは物価がぐんぐん上昇している。
マンション価格も坪単価600万円に達しているという。ニセコの山の中のマンションの坪単価が山手線目黒駅前のタワーマンションに匹敵するのだ。
もちろんこれが平均的な話なのかと問われればそうとは言い切れない。
欧米ではスキーは富裕層の遊びである。ましてや海外にスキー旅行に出掛けるともなれば選ばれた人々なのだろう。
とはいえ、彼らはそういう富裕層だからこそ母国と日本しか知らないわけではない。
あちこちのリゾートで遊んだ末、日本の物価が安いと言っているのだ。

 だから、こうした外国人にヒヤリングすると、2300円のカニ・ラーメンでは飽き足らず、ミシュランの星付きレベルのレストランがなぜニセコにないのかと尋ねられるらしい。友人は「夏の間どうやって生きていくのか」と苦笑いするが、それほど世界から見て日本の物価は低い。

 もう少し普通の例を見てみよう。大手町あたりのサラリーマンが昼食にちょっと良いものを食べたとする。
それでもせいぜい1000円から1500円というところだろう。
ところがロンドンあたりで同じ感覚で食事をすると2500円から3000円の相場になっているという。

今や日本の物価は全く先進国水準ではない。
そこにグローバル価格の商品を置けば割高に見えるのは当然のことになる。
クルマは高くなった。ただし日本人にとってだけだ。