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     r ! ヽ._   _, -' .r'::::::::::::;!:::ヽ、     アルトゥール=ショーペンハウエル 1788ダンツィヒ〜1860フランクフルト
    /::::::´:〉- 二  `/::::::::::::::/::::::::::::::ヽ、

もっともこれをはるかに凌駕するものに、フランス人が首領ボナパルトのもと
に全ヨーロッパを掠奪した昔の例があるけれども。ただこうした征服者は、掠奪行そのものよりもはる
かにしゃくにさわることの多い、例の公式の嘘で事態を言いつくろったりしないで、むしろ堂々と厚か
ましくマッキャヴェッリの学説を採用すべきであろう。というのは、この学説から引きだせることは、
個人どうしのあいだでは、また個人に対する道徳や法学では「他人が汝に加えることを欲しないことは
他人になすなかれ」という原則が通用するけれども、政治においては、その逆の「ひとが汝に加えるこ
とを欲しないことこそ他にむかってやるべし」という原則が妥当するからだ。屈服するのがいやなら、
機を見て、つまり相手の弱みにつけこんで、ただちに隣のやつを制圧せよ。というのは、もしきみが
その機を逸する場合、いつの日か、それは敵陣に寝返りを打って、隣のやつの好機
となり、きみが制圧される羽目に追い込まれるからだ。もちろん好機を逸したいまの世代の罪のつぐないは、
次の世代が背負うことになるわけだ。このマッキャヴェッリ的原則は、大統領演説なんかに見られるみえす
いた嘘のトリックなどより、掠奪をくるむ覆いとしては、はるかに品のよいものだ。ましてや、兎のほうから
犬に襲いかかったという有名なお話に帰着するようなまっかな嘘などより、礼節にかなっている。要するに
すべての国家は他の国を、好機到来と見るやただちに襲いかかる強盗の集団と見ているわけである。