去年の冬にね、ハンターマウンテン塩原スキー場に行く途中にいたの。

後 輪 に チ ェ ー ン 巻 こ う と し て る ア ル フ ァ ー ド の 人 が 。

でね、恐そうな人たちだったけど、僕は言ってあげたんだ。
「アルファードは、後輪じゃなくて前輪にチェーン巻くんですよ」って。
そしたらね、なんか超ブチ切れてんの。
「ああ!?てめー、ふざけたこと言ってんじゃねーぞ!
 高級車は後ろに巻くに決まってんだろうが!クラウンとかセルシオだって後ろだろーが!マーク?だって後ろだろ!
 おまえ、アルファードの値段知ってっか?クラウンと同じなんだかんな!マーク?ですら後ろなのに!
 アルファードが前に巻くわけねーだろうが!一度死ぬか?」

「いや、確かに高級車かもしれませんけど、アルファードは前輪が回るんで・・・」

「適当なコト言うのもいい加減にしとけよ!高級車なんだからFRに決まってんだろうが!
 3リッター以下でFFとか聞いたことねーよ!
 だいたい、おまえのクルマこそなんで後ろに巻いてんだよ!そんな車こそ前じゃねーんかよ!?」

俺の愛車はビーゴ。こう見えてもFR。っていうかもう付き合ってられん。
おそらくこのアルファードは道中でエラいことになり他人に迷惑をかけるだろうが、
俺が危害を加えられることのほうが嫌だ。

「すみませんでした。僕の勘違いでした。先に行ってください。」

「おう。もっと車のこと勉強しとけや。
 それにそんなショボいクルマ乗ってっと、ツマらねーぞ。」

こう言い、爆音マフラーから明らかな直4サウンドを響かせながら、アルファードは走り去っていった。
朝日に輝く「V6」エンブレムが、とても眩しく感じられた。