7月の参院選の応援演説中に銃撃され、この世を去った安倍晋三元首相の国葬が9月27日、日本武道館(東京都千代田区)で執り行われた。各社の世論調査などでも反対の声が多いなか、岸田文雄首相が決めた。

 国葬への批判を高めていた一つに、安倍元首相をはじめ、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係がある。

 安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者は、

「旧統一教会に母親がのめり込み、多額の献金で家庭崩壊に追い込まれた。その恨みで、旧統一教会と近いと思った」

 などと犯行動機を説明していた。

 この供述から、多額の寄付による家庭崩壊や過去の霊感商法などがクローズアップされ、国民の多くは、旧統一教会への不信感が拭えないなかでの安倍元首相の国葬に、納得がいかないという展開となった。

 旧統一教会は22日、記者会見を開き、新設された「教会改革推進本部」の勅使河原秀行本部長が、

「はじめに今回の安倍元首相の銃撃事件以降、さまざまな報道を通じて、世間をお騒がせし、日本国政府、そして国会議員の皆様に、大変なご迷惑をおかけし、心からおわび申し上げます。大変申し訳ありませんでした」

 と頭を下げた。勅使河原氏は1992年、旧統一教会が注目された際に、日本の元オリンピック選手とのマッチングで注目を集めたことでも知られる。

 そして、多額の献金については、

「今後、過度な献金などがないようにする」

 などと話した。

 世間を騒がしていることへの陳謝であり、霊感商法や合同結婚式などの被害者、二世信者らへの謝罪はなかった。

 そして、自民党との関係や国葬についての質問に、

「家庭連合として正式な見解は出していない。議論もされていないと思います。私の考えで言うと、個人的に安倍元総理を大変尊敬しておりました。歴史的に見ても、まさに偉大な政治家であったと私は思っております。そういう点においては、丁重に国を挙げて葬儀をするということに、私は賛成です」

 との考えを述べた。

 安倍元首相が、旧統一教会の関連団体にビデオメッセージを贈っていたことや、旧統一教会に選挙支援や票の取りまとめを国政選挙で依頼していたといった話が銃撃事件後に報じられると、岸田首相は、自民党国会議員と教団との関係についての調査をし、

「(旧統一教会との)関係を断ち切る」

 と述べた。

こうした政治とのかかわりについて、勅使河原氏は、

「宗教団体が自分の政治信条を主張することは何ら問題ない。、信徒さんたちが、私たちの考えと合う政治信条を持った政治家を応援するのは、当然あっていいこと」

「(岸田首相の発言は)誠に残念なことだ。たとえば、霊感商法が今でも行われているような報道、それを主導していると思える左翼弁護士の方々、その影響が国民をミスリードしている」

 などと反論し、別の「敵」を設定するような対応だった。

 9月末、近畿地方のある旧統一教会の教会であった日曜の礼拝に参加した現役信者はこう話す。

「記者会見の後で国葬の直前。どういう話があるのか注目していました。他の信者も同様だったと思います」

 と前置きし、礼拝で旧統一教会の幹部が語った内容を紹介した。

「批判もあるなかで、国をあげて安倍元首相の国葬をするというのは、家庭連合と強い結びつきがあったからに違いない。真のお父様お母様(旧統一教会の創立者故文鮮明氏と妻で現総裁の韓鶴子氏)が安倍元首相や、そのお父様(安倍晋太郎氏)、おじいさま(岸信介氏)と強く結びついていたからだ」

「安倍氏が総理になれたのは、我々がトップにつけるように祈っていたからだ。そのおかげで、国葬という形で霊界に旅立たれるのです」

「安倍元首相がもう少し長くトップにいれば、日本は家庭連合を国の宗教としたはずだ」

「安倍元首相は、総理をおやめになれば、食口(シック・信者の意味)になられるとも聞いていた」

 などと主張していたという。

 この現役信者は、選挙応援に借り出され、自民党の国会議員を支援したことがある。今年7月の参院選でも、問題になった自民党の井上義行参院議員に投票するように旧統一教会側から求められたという。


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AERA
9/28(水) 7:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e38f21923a3c04a6617e1bb3ebbe45097733dd9