東京都は十六日、在日コリアンに対する不当な差別的発言があったとして、都の人権尊重条例に基づき、都内で行われた街宣活動などでの言動二件を、ヘイトスピーチ(憎悪表現)と認定した。四月に同条例が全面施行されて以来、認定は初めて。

 都がヘイトスピーチと認定したのは、五月に練馬区であった街宣活動と、六月に台東区で行われたデモ行進での参加者の言動。練馬区の街宣活動では参加者が拡声器を使い「朝鮮人を日本からたたき出せ、たたき殺せ」などと発言した。台東区でも参加者が「朝鮮人をたたき出せ」などの発言をした。

 都民らから訴えがあり、有識者でつくる審査会が「不当な差別的言動に該当する」と指摘。これを受けて都がヘイトスピーチにあたると判断した。

 街宣活動やデモ行進の詳しい場所、主催者名などの公表は見送った。都は「啓発を目的とした条例の趣旨などに照らし、今回は非公表が相当と判断した」としている。

 人権尊重条例は都が昨年十月、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに向け、五輪憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指すとして制定。都道府県では初めてヘイトスピーチを条例で規制した。罰則はない。より厳しい規制を求める声がある一方、表現の自由の観点から慎重論も根強い。

 ヘイトスピーチを巡っては、一〇年代に入って過激化。一六年には川崎市内で、在日コリアンが多く住む地域で排除デモが繰り返されるなど社会問題となった。

 同年、川崎市は在日コリアンの排除デモを繰り返していた団体に対し、公園二カ所の使用を認めない決定をした。 (岡本太)

東京新聞
2019年10月17日 朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019101702000138.html