ダブル選する? しない? やれば自民は衆院42議席減の予測も

 安倍晋三首相は今年、参院と衆院のダブル選について問われると「頭の片隅にもない」と否定した。だが、自民党内の解散風は強まる一方だ。

ダブル選について自民党幹部がこう煽る。

「来年は東京五輪など政治日程が目白押し。今年も11月にはAPECが開催される。再来年の選挙となれば、首相任期がわずかになるから、安倍さんは解散を断行する意味があまりない。今年は天皇陛下の退位、即位の時期は絶対に外さねばならない。消去法でいくと、今夏のダブルしかない」

 だが、政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。

「北方領土交渉はいっこうに2島返還が見えず、6月のG20でのプーチン大統領との日ロ首脳会談で進展するとは限らない。日韓関係は悪化の一途をたどり、北朝鮮の核放棄もめどが立たない。国内では沖縄・辺野古への土砂投入が国民の反感を買い、森友・加計問題もまだ引きずっているので、ダブル選は厳しい」

 国会では厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査問題が連日、取り上げられ、安倍政権は防戦一方だ。

 この苦境を打破する策として浮上しているのが、今年10月に予定されている消費増税の再延期だ。その上でダブル選を仕掛けるというのが、自民党が描くシナリオの一つだ。実際、過去2度(1980、86年)の衆参ダブル選で、自民は圧勝している。

 だが、ネックとなるのは与党パートナーの公明党が猛反発していること。今年は、統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「亥年選挙」だ。

 さらに衆院選まで加わることに公明党=創価学会中枢は強い危機感を抱いている。2017年衆院選で6議席減らし、比例票でも初めて700万票を下回ったからだ。

 そもそも衆参ダブル選をいま行えば、国民を混乱に陥れることは必至だ。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が指摘する。

「小選挙区制になって、まだ一度もダブルは行われていません。衆参それぞれの選挙区と比例区、それに最高裁裁判官国民審査と、国民は五つも判断を強いられ、混乱します。4月に行われる沖縄と大阪の衆院補選で自民が勝てば可能性が出てきますが、ダブル選は現時点では野党共闘を牽制するためのブラフでしょう」

 ダブル選が強行された場合、国民の反発は避けられないだろう。衆院選の各党の獲得議席数を選挙プランナーの三浦博史氏に予測してもらったところ、自民は実に42議席減の239議席になるという衝撃的な結果となった。

 また、政治ジャーナリストの野上忠興氏は自民退潮の理由をこう分析する。

「安保関連法や改憲論議に付き合わされ、創価学会内部では婦人部を中心に“嫌安倍自民感情”が広がっています。学会票が自民党候補から2〜3割逃げると思われ、野党候補に投じる“隠れ学会票”現象が起きるでしょう。学会票は1選挙区あたり平均2万票ですから、自民党候補は大打撃を受けます」

 野上氏によれば、17年衆院選で次点候補との差が1万票以内の僅差で自民候補が競り勝った選挙区がおよそ30カ所あるという。学会票が逃げれば、落選の危機だ。加えて、野党が統一候補を立てていれば、自民候補を逆転していた選挙区は約50カ所。学会票離れと、野党共闘が機能すれば、下村博文元文科相、松島みどり元法相、金田勝年元法相、平井卓也IT担当相ら“大物”も落選の憂き目を見る可能性もあるのだ。(本誌・亀井洋志、上田耕司、田中将介)

※週刊朝日  2019年2月15日号より抜粋
2019/2/6 08:00
https://dot.asahi.com/wa/2019020500049.html