■各紙は「石破氏を閣僚には起用しない方針」と報じる

 次の焦点は人事である。自民党総裁選で連続3選を果たした安倍晋三首相は10月初旬、内閣を改造し、新たな自民党役員を決める。

 各紙の報道によると、内閣改造では麻生太郎副総理兼財務相と管義偉官房長官の留任を決めている。これに加え、日米の閣僚級による貿易協議を担当している茂木敏充経済再生相、北朝鮮問題を抱える河野太郎外相、ロシア経済協力相を兼務し北方領土問題解決にあたっている世耕弘成経済産業相の3閣僚を留任させる。

 党役員人事では岸田文雄政調会長と二階俊博幹事長を続投させる方針だという。

 問題は石破茂元幹事長の人事である。

 いまのところ、安倍首相は石破氏を閣僚には起用しない方針だと報じられている。総裁選中に憲法改正や経済政策を巡って考え方の違いが明確になり、石破氏の起用による内閣不一致という事態を避けたいのだという。

 しかしこれは表向きの理由にすぎない。政策面で多少の違いがあるのは当然だ。安倍首相は総裁選で己に立ち向い、そして肉薄した石破氏を恐れているのではないか。

 政治家の器の大きさは、考え方で相反する人物をどこまで起用できるかで決まる。いま安倍首相という政治家の鼎の軽重が問われている。

■党員票の45%を取られる「健闘」を許した

 永田町では、安倍首相は総裁選で勝ったとはいえ、石破氏に“健闘”を許したという見方が強い。

 安倍首相は国会議員票では80%という票を得ながら、37都道府県の党員票では55%しか獲得できなかった。

 前回の2012年の総裁選で石破氏は党員票の55%を獲得し、安倍首相の出鼻をくじいた。今回も45%と安倍首相に迫っている。

 この結果、石破氏を「ポスト安倍の最右翼に躍り出た」と評価する向きもある。安倍首相は石破氏を黙らせることができなかった。石破氏は安倍首相にとって目の上のタンコブなのだ。

 安倍首相は9月28日に国連総会が開かれた米国から帰国し、10月1日の月曜日に党役員人事を決め、2日に内閣改造人事を行う見通しだ。

 人事の調整は難航するだろう。安倍首相を支持する自民党5派閥を中心に入閣を期待する国会議員は多いのに反し、ポストは限られているからである。

■「安倍政治はすでに限界と言わざるを得ない」

 9月21日付の新聞各紙は、前日に行われた自民党総裁選について一斉に社説を掲載した。今回はこのうち朝日新聞と読売新聞の社説を読み比べてみたい。

 朝日社説は大きな1本社説で、「3選はしたものの」「安倍1強の限界明らかだ」との見出しを掲げる。安倍首相を嫌う朝日らしさが滲み出ている。書き出しも手厳しい。

 「1強の弊害に真剣に向き合わず、異論を排除し、世論の分かれる政策も数の力で強引に押し通す。そんな安倍政治はすでに限界と言わざるを得ない。さらに3年の任期に臨むのであれば、真摯な反省と政治姿勢の抜本的な転換が不可欠である」

 「すでに限界」「転換が不可欠」とまで言い切っている。社説としては、かなり強い調子だと言っていいだろう。

 次に朝日社説は「『品格』なき締めつけ」との小見出しを付け、こう書く。

 「表の論戦を極力避けようとする一方で、水面下では首相を支持するよう強烈な締めつけが行われた。『〈石破さんを応援するなら辞表を書いてやれ〉と言われた』。石破派の斎藤健農水相は首相陣営から、そんな圧力をかけられたと明かした。『官邸の幹部でもある国会議員から露骨な恫喝、脅迫を受けた』と、フェイスブックに書き込んだ地方議員もいた」

 斎藤農水相の発言に対し、安倍首相は「もしそういう人がいるんであれば、名前を言ってもらいたいですね」と応じた。斎藤氏は、結局、圧力をかけた人物の名前を公表しなかったが、この内閣改造で農水相を交代させられる見通しだという。一体ウソをついたのはどちらなのだろうか。

プレジデントオンライン) https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180927-00026287-president-pol