2017年12月28日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122802000155.html

 磁気治療器の預託商法を全国展開し、二十六日に事実上倒産した「ジャパンライフ」(東京)の行政指導を担当していた消費者庁取引対策課の課長補佐が二〇一五年七月に同社に天下りしていたことが分かった。同庁が初めて業務停止命令の処分をしたのは一六年十二月。被害対策弁護団は「消費者庁担当者とのなれ合いが処分の遅れ、被害の拡大につながった可能性がある」と批判している。

 この天下りを巡っては、内閣府再就職等監視委員会が一六年三月、国家公務員法が定める在職中の求職規制に違反すると認定。再就職先について、委員会と消費者庁は「答えられない」としているが、関係者への取材でジャパンライフと判明した。

 委員会の調査報告書などによると、課長補佐は一四年八月以降、ジャパンライフの行政指導を担当し、同社と継続的に接触。「定年退職する」などと告げたほか、私用のメールアドレスや電話番号を伝え、経営者との面会を要求するなど在職中に再就職を求めた。一六年の会社案内では関連法律担当の顧問として紹介された。現在は退職している。

 消費者庁は課長補佐が再就職した後の一五年九月に立ち入り検査。初めて業務停止命令の処分を出したのは十五カ月後だった。通常は立ち入り検査から処分までの期間は七カ月が目安。ジャパンライフ被害対策中部弁護団の杉浦英樹弁護団長は「ジャパンライフは処分後も営業を続け、契約を拡大してきた。天下りが処分の遅れ、処分内容の甘さにつながったとすれば消費者庁の責任は重い」と話す。

 消費者庁は立ち入り検査の際、課長補佐の再就職を把握し五カ月かけて調査したが、国家公務員法違反を認定しなかった。課長補佐は一二年にも行政処分した別の企業への再就職をほのめかし、庁内で注意を受けたほか、人事担当部署に再就職規制について照会した。

 委員会は報告書で「(消費者庁は)情報を入手したにもかかわらず、十分な対応をせず違反を未然に防ぐ機会を逸したことは問題」と異例の意見を付けた。

 消費者庁取引対策課は「個別事案についての回答は差し控えるが、法と証拠に基づいて厳正に法執行している」としている。