「エンジン車は暖まるまで暖房が使えない」というのは事実ですが、それは「できない」のではなく「必要性が低いから採用されていない」というのが正確な表現です。
1. 技術的には「エンジン車版ヒートポンプ」も可能
エンジン車にも冷房用のコンプレッサーは既に搭載されています。技術的には、これを逆転サイクルで動かす(ヒートポンプ化する)ことや、電気的なPTCヒーターを補助的に載せることは十分に可能です。
これを行えば、エンジンが冷えていても始動直後から温風を出すことができます。
2. BEVとエンジン車の「暖房」に対する切実さの違い
BEV(電気自動車)とエンジン車では、暖房に対する設計思想が根本的に異なります。
• BEVの場合:
走行モーターは効率が良すぎるため、暖房に使えるほどの「廃熱」がほとんど出ません。そのため、航続距離を大幅に削ってでも、電気を熱に換える(PTCヒーターやヒートポンプ)しか選択肢がありません。
• エンジン車の場合:
エンジンは動いているだけで膨大な熱(廃熱)を生み出します。数分走れば「使い切れないほどの熱源」が無料で手に入るため、わざわざコストや重量を増やしてまで、短時間しか使わない電気暖房システムを組み込むメリットが薄いのです。
3. コストと効率の合理的な判断
エンジン車で電気暖房(PTCヒーター等)をフル活用しようとすると、発電のために燃料を消費します。
「どうせすぐにタダの熱(廃熱)が手に入る」と分かっているものに対して、コストをかけて二重の暖房システムを載せるのは、ユーザーにとっても車重増加や価格上昇というデメリットの方が大きくなるという判断です。