政府は、宗教法人法に基づく質問権行使に対する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の対応が回答拒否に当たるとして、教団側に過料を科す方向で最終調整に入った。来週にも永岡桂子文部科学相の諮問機関である宗教法人審議会に諮り、了承を求める。教団に対する調査が長期化する中、これまでよりも踏み込んだ対応を行うことで、解散命令請求の可否判断に向けた手続きを最終段階へと進める。

複数の政府関係者が1日、明らかにした。

質問権は宗教法人に法令違反が疑われる場合、文科省などが運営実態について報告を求め、質問できる制度。「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」と判断されれば、裁判所に解散命令を請求する。法人側が質問に対し、回答を拒否したり、虚偽の回答をしたりした場合は10万円以下の過料に処するとの罰則規定があり、裁判所に過料を科すよう通知できる。

霊感商法や高額寄付といった旧統一教会の活動の実態解明に向け、永岡氏は昨年11月、質問権を行使する方針を表明。これまで7回にわたり、組織運営や財産・収支、教団本部がある韓国への送金、高額献金を巡る被害者対応などに関し、質問権を行使してきた。

しかし、教団側が回答として寄せる資料は質問を重ねるごとに減っており、今年8月22日に届いた7回目に対する回答は、封筒1通と宅配袋1個にとどまった。政府は、こうした教団側の対応が回答拒否に当たると判断した。

政府はこれ以上の質問権行使は行わない見通しだ。今後は被害者への聞き取り調査など最後の詰めを行い、年内にも解散命令請求の可否を判断する。

岸田文雄首相は昨年8月に現在の第2次改造内閣を発足させた際、教団について「法令から逸脱する行為があれば厳正に対処する」との方針を示した。同10月には解散命令の要件について、国会で「民法の不法行為も入りうる」と答弁し、法解釈を変更。解散命令請求を視野に対応を進めてきた。

首相は近く政権発足から2度目となる内閣改造を行う予定で、現在の布陣のうちに教団への対応に一定の道筋をつける必要にも迫られている。政府高官は「首相の覚悟は決まっている。解散命令請求に値する材料がそろえば躊躇(ちゅうちょ)なく踏み込む」としている。

産経新聞
2023/9/2 05:00
https://www.sankei.com/article/20230902-JPQYYLYHKBJ3POW4IXMSCGYNPI/