西村康稔経済再生担当相は8日夜の記者会見で、新型コロナウイルス対策で行う酒類提供停止などに応じない飲食店に対し、金融機関から対策順守を働きかけてもらう考えを表明した。資金面から飲食店への圧力をかけたと受け止められかねない発言だけに、飲食店や金融機関の反発も広がり、野党は辞任を要求。西村氏は9日、方針を撤回した。

 西村氏は8日の記者会見で、酒類提供停止や休業要請などに応じない飲食店が増えているとし、酒類販売事業者にそうした飲食店との取引停止を要請するのに加え、「お店の情報を金融機関と共有しながら働きかけをしていただく。金融機関は日常的に(飲食店と)やりとりを行っている」などと述べた。

 この発言に対し、インターネット上で「協力金を増やせばいい」「金を人質にした手法だ」などとした批判が相次いだ。西村氏は9日の会見で「法律に基づく要請ではなく、日常のコミュニケーションの中で感染防止策の徹底を呼びかけてほしいということだ。融資を制限するといった趣旨ではない」と釈明したが、批判は収まらなかった。

 このため、与党は政府側に対応を要求。西村氏は9日午後、加藤勝信官房長官に金融機関を通じた働きかけをとりやめると伝えた。加藤氏は会見で「西村氏に気をつけてほしいと伝えた。閣僚には発言の趣旨が伝わるよう対応していただきたい」と述べた。ただ、政府は酒類販売事業者への取引停止は求めていく構え。

 野党は批判を強めている。立憲民主党の安住淳国対委員長は記者団に「感染対策の失敗のつけを関係者に回している。強圧的な態度で、即刻辞任をしたほうがいい」と述べた。来週、衆参両院で開かれる内閣委員会の閉会中審査で追及する方針だ。【花澤葵】

毎日新聞
2021/7/9 20:05
https://mainichi.jp/articles/20210709/k00/00m/010/312000c