6日の参院予算委員会は、日本学術会議の新会員候補の推薦に関し、政府との間で事前調整があったとの菅義偉首相の答弁を巡って紛糾し、度々中断した。野党は「露骨な政治介入だ」と反発し、どのような調整を行っていたかの説明を求めたが、首相は「任命に当たっての考え方を申し上げ、意見交換をした」と繰り返すばかりだった。

 首相は5日の同委で自民党議員に対し「以前は推薦名簿が提出される前に、さまざまな意見交換の中で内閣府の事務局などと(学術会議の)会長との間で一定の調整が行われていた」と答弁。安倍政権下で推薦前の調整があったことを認めた。さらに今回の任命拒否は「推薦前の調整が働かず、結果として任命に至らなかった者が生じた」と主張。任命の判断の基準は「事前調整が行われた場合と、今回とで変わらない」とも述べた。

 共産党の小池晃氏は6日の同委で「一定の調整とは何か。名簿の一部変更が含まれているのではないか」と詰め寄った。首相は、調整は2017年の改選時にあったと明かし、「人事のプロセスの説明は控えるが、任命に当たっての考え方を申し上げ、意見交換を行った」との答弁を続けた。

 小池氏は「個別の人事の調整をやったということだ。政府が推薦に実質的に関わることは断じて認められない。事前調整がなかったから任命できなかったというなら、学術会議の独立を脅かす政治介入そのものだ」と語気を強めた。首相は「推薦前に考え方をすり合わせた」と繰り返した。

 同会議の大西隆・元会長によると、17年改選時に政府の求めに応じて定員(105人)より数人多い名簿を提示したが、会議が推薦した105人全員が任命された。18年の1人の補充人事では政府が難色を示し、当時の山極寿一会長が自ら説明したいと政府に再三申し入れたが拒否された。今回は105人ちょうどの名簿を提示し、うち6人の任命が拒否された。【高橋恵子、宮原健太】

毎日新聞
2020年11月6日 20時58分
https://mainichi.jp/articles/20201106/k00/00m/010/292000c