持続化給付金の委託問題の焦点の1つは、サービスデザイン推進協議会(サ協)から再委託・外注が繰り返された多重下請け構造の不透明さにある。契約金1億円以上の事業者だけで4次下請けまで64社(元請けを含む)あり、経産省はこのうち8割近くの社名を公表していない。さらに、いずれの社も外注先を選んだりする際、複数業者からの相見積もりを取っていなかった。競争が働かず、外注費が膨らんだ懸念がある。

 社名が明らかになっている15社は元請けのサ協を設立した電通や、パソナ、電通の子会社などで、身内で利益を分け合う構図となっていた。経産省関係者も「身内間で事業を外注すれば、見積もりが甘くなる可能性はある」と認める。

 相見積もりがなければなおさらだ。経産省は「前例のない緊急かつ大規模な事業」だったことを理由に、各社が次善の策として「選定理由書」を作成して済ませたことに理解を示した。

 国の事業を巡っては、大手監査法人の公認会計士は「一般論として、(外注先などで)人件費に見合った勤務実績があるのか疑わしい事例がある」と指摘する。「仮に1日6時間労働なのに、7時間働いたことにして請求しても、書類のつじつまが合っていれば分からない」という。
 外注を重ね事業が複雑になるからこそ、透明性が重要になる。中間検査によると、持続化給付金の事業費のうち69%は人件費が占めた。大半は、全国550カ所以上に開設した申請サポート会場やコールセンター、審査などに当たったスタッフへの支払いだ。だが、経産省は「各企業の取引条件に当たる」として、どの会社がいくらの時給で雇ったのかなど、人件費の詳細は非公表。関連する書類の提出を受けて、国と第三者の公認会計士が確認したと説明するにとどめた。(森本智之)

持続化給付金の委託問題 

 中小企業などに支給する持続化給付金で、経済産業省は2020年度1次補正予算分の事務をサービスデザイン推進協議会(サ協)に769億円で委託した。サ協は749億円で、サ協設立に関与した電通にほぼ丸ごと業務を再委託。電通からは子会社や、パソナなど協議会の関連企業に外注が繰り返され、予算の無駄遣いとの批判が上がった。批判を受け、経産省は業務の執行体制をチェックする異例の「中間検査」を実施した。

東京新聞
2020年10月13日 05時55分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/61417