https://news.yahoo.co.jp/articles/eca506463c011fe4be5c55259806a4ba95b868df
【桂春蝶の蝶々発止。】

 菅義偉内閣が16日、発足しました。痛快だったのは、河野太郎行政・規制改革相です。私はこの人にとても好感を持っています。発信が庶民的でいいんですよね。

【写真】「こんなものさっさとやめればいい」と発言した河野太郎氏

 そんな河野氏が17日未明、首相官邸で行った就任会見で、着手する行革について「延々とここで(閣僚が順番に会見を)やるっていうのは前例主義、既得権、権威主義の最たるものだ」「こんなものさっさとやめればいい」と語ったんです。

 面白いじゃないですか。そもそも、菅首相は「行政の縦割り」や「既得権益」の打破を、政権の優先課題に掲げています。河野氏は「この記者会見も各省に閣僚が散ってやれば、今ごろみんな終わって寝ている」とも語っていました。とても分かりやすくて国民の胸に届きやすい。私はいつか、この人が首相になればいいと思っています。

 一方で、低支持率に悩まされている野党ですが、また“ブーメラン芸”を炸裂(さくれつ)させていましたね。

 新「立憲民主党」の枝野幸男代表は、菅首相が「自助・共助・公助」を主張していることに対し、「政治家が『自助』と言ってはいけない。責任放棄だ!」と批判していましたが、2005年の国会で、自身が「自助」について語っていたと報じられたのです。

 ホンマか?と思って「国会会議録検索システム」で調べてみますと、確かに枝野氏は同年7月29日、年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議で、「生活保護という仕組みは、本来は、なければない方が望ましい制度なんだ。まさに自助、共助、公助であって、本来は、各個人が自分の責任と自分の努力で生きていければ一番いいんだ…」と発言していました。

 枝野氏が官房長官だった11年に、政府・与党がまとめた税と社会保障一体改革の文書にも「自助・共助・公助の最適なバランスで支えられる社会保障制度に改革」との記載があったとか。なんだそりゃ(笑)。

 そもそも、自助って、そんなにダメですか?

 何でもいい、独立自尊の気持ちで、まず自分自身で頑張って、社会に何ができるかを考えていくことは大切ですよね。ただ、病気だったり、境遇だったり、自助が難しい人たちもいる。社会がその方々を助けていくのは当たり前なのです。

 そのあたりの揚げ足を取ってくる人の多いこと。例外をすぐに印籠のように出し、正義を振りかざす輩って、とても稚拙だと私は思います。

 一部の「日本的リベラル」は自助や自己責任を大否定しながら、「個人主義」の世界を奨励する。それは私から言わせれば大きく矛盾してます。個人主義の命である「自由」は本来、孤独と不安定の中に存在するものです。いわば自由ほど不自由なものはない。

 民主主義の本質は、制約と不自由さの中にあるのです。「義務を怠って、権利ばかり主張する」ということだけで本当にいいのか? その問いかけを常に自分に向けることで、より良く、強固な個人主義が芽生えるのですから。

 ■桂春蝶(かつら・しゅんちょ) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。
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