本誌は前号で、十全な総裁選実施なら石破首相誕生かと報じたが、党員投票なし、安倍政権への総括なし、菅義偉氏の政策への吟味なしで、菅政権が後継となる様相だ。それは安倍政権の内実強化政権であり極めて危険だと警鐘を鳴らす前川喜平元文部科学事務次官が、安倍―菅ラインの正体を暴く。

 かつての自民党であれば石破茂氏を選んでいたであろう。病気を理由に突然辞任を発表した安倍晋三氏の後継首相である。コロナ対応だけではない。その基本政策・路線そのものが深刻な行き詰まりを見せていたからだ。出口なき異次元金融緩和政策、外交なき従米軍事抑止力至上路線、説明責任なき「モリ・カケ・桜」政治不信がそれである。

 トップの顔を変えることは、その基本政策・路線に軌道修正を図る好機になる。金権・田中角栄の後にはクリーン・三木武夫を、日米関係悪化を招いた鈴木善幸の後には「ロン・ヤス関係」の中曽根康弘をと、持てる人材を巧みに振り当て、いつの間にか政権のイメージ、路線を変更することによって権力の命脈を保ってきた。本格的政権交代ならぬ疑似政権交代の知恵とも言われた。その伝で言えば、安倍政治に距離を置いてきた石破氏の出…

サンデー毎日
2020年9月10日 05時00分
https://mainichi.jp/sunday/articles/20200907/org/00m/010/003000d