昨年11月、安倍晋三首相から招待を受けたトランプ氏の反応は「その行事は日本人にとってスーパーボウルより大きいのか?」。退位に伴う新天皇の即位を、米プロフットボールNFLの王者を決める一大イベントにたとえて聞いた。首相は「もちろん。200年ぶりですから」。トランプ氏は5月の訪日を決めた。

 日米貿易交渉が合意に至る前のこと。政府関係者は「これで関税が安く抑えられるなら安いものだ」と言ったが、こうした経緯にも「天皇の政治利用」との批判は高まらなかった。

 かつては違った。

 天皇は戦後の新憲法で象徴となると同時に、国政への関与を禁じられた。天皇は首相の任命や法律の公布といった「国事行為」のみを行う、と憲法は定める。

 1951年10月、昭和天皇が国会開会式での「おことば」で、前月のサンフランシスコ講和条約締結について「諸君とともに、誠に喜びに堪えない」と述べると大きな議論が巻き起こった。全面講和論もある中、政府が西側中心の片面講和に踏み切ったことから、天皇の政治的発言として批判を受けた。国会開会式でのおことばや天皇が各地をめぐる巡幸は、そもそも憲法上許されるのかという憲法議論に発展し、「公的行為」の考え方が生まれた。

■増加する「公的…

朝日新聞
2019/11/3 22:00
https://www.asahi.com/articles/ASMB23GT2MB2UTIL00K.html