安倍政権が総力戦で支援した候補の敗北は、与党内に衝撃を与えた。安倍晋三首相は自民党総裁選でも地方票で苦戦しただけに、地方で人気があまりないとの見方が広がったためだ。来夏の参院選の勝敗を左右する三十二の改選一人区での苦戦を予想する声も出始めている。首相が目指す改憲論議にも影響しそうだ。 

 「自民党総裁選と沖縄知事選で、地方での首相の不人気が決定的になった。参院選はかなり負けるのではないか」。自民党関係者は、首相が総裁に連続三選された直後に出ばなをくじかれる形となった沖縄での敗北を、こう総括した。

 首相が石破茂元幹事長を大差で退けた九月の党総裁選。国会議員票で八割超を得たものの、地方票は55%の支持にとどまった。特徴的だったのは、都道府県別にみると、十県で敗北したことだ。そのうち茨城以外は、鳥取・島根など合区を含む参院選一人区となる県だった。地方からは経済政策アベノミクスの恩恵を実感できない、との不満が出ている。

 来年の参院選は一人区が勝敗を左右する。複数区で与党が議席を独占するのは難しいからだ。

 さらに、改憲を目指す首相は参院選で、改憲勢力として三分の二の議席を維持する必要がある。現在、与党だけでは三分の二を確保していない。

 一人区のカギを握るのは、野党が候補者を一本化できるかだ。

 野党が共闘できなかった二〇一三年参院選は、一人区三十一(当時)のうち自民党が二十九を押さえ圧勝。これに対して、野党共闘が実現した一六年は、一人区三十二のうち自民が勝ったのは二十一で、野党側が善戦したとの評価がある。

 立憲民主、共産、社民などの野党が玉城デニー氏を支援した沖縄県知事選での勝利で、参院選の野党共闘に弾みが付きそうだ。

 立民の福山哲郎幹事長は一日、「一本化すれば十分勝機を見いだせることが明らかになった。(参院選の)調整を加速させたい」と記者団に語った。共産党の小池晃書記局長も記者会見で「本気の共闘をやれば、自民党を追い詰めることができることが示された」と話した。 (金杉貴雄、木谷孝洋)

東京新聞
2018年10月2日 朝刊
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