モリカケ、セクハラのドサクサに紛れて、安倍政権はまた強行採決するつもりだ。ささやかれているのは、残業代踏み倒し法案といわれる「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の導入だ。 高プロは、データ捏造で提出が見送られた裁量労働制よりタチが悪い。しかも、安倍政権が強調する「成果主義」や「高年収要件」には巧妙なワナが仕掛けられている。

 労働問題に詳しい塩見卓也弁護士が言う。

「今回、提出されている法案では、成果に応じて賃金を支払う規定は書かれていません。裁量労働制のように、業務の遂行が労働者の裁量に委ねられているわけでもない。しかも、労働時間規制から全面的に外れるため、法文上は無制限に所定労働時間を設定することも可能と解釈できます。休憩、残業代、深夜割増賃金も必要ありません」

 今回の対象は平均年収の3倍である1075万円だが、いずれ年収要件を引き下げて対象を拡大することは間違いない。2015年4月、塩崎厚労相(当時)は高プロについて「小さく生んで大きく育てる」と本音をポロリ。高プロのもととも言える「ホワイトカラーエグゼンプション」検討の際(05年)、経団連は「年収400万円以上」と主張している。

さらに危険なのは、今回の法案でも「欠勤控除」を悪用し、年収要件を割った労働者にも高プロが適用できることだ。

「政府の答弁によれば、年収1075万円の要件は『見込み』でいいのです。年収1075万円の見込みで、所定労働時間を長時間に設定した契約を交わした上で、勤務時間実績が契約時間に不足していれば、“欠勤控除”として減額するというやり方も、法文上は排除されていません。そうすると、試算では、実支払いを400万円以下に抑えられることもあり得ます」(塩見卓也弁護士)

 共同通信の世論調査(5月)では「働き方法案」の今国会成立を「望まない」が68・4%。主要企業約100社の調査(4月)でも、高プロ賛成はたった28%だ。それなのに安倍政権は早ければ23日か、遅くとも25日に衆院厚労委で採決を強行する意向とみられている。

「裁量労働制のデータ捏造問題の炎上は一段落し、今なら高プロは世論の反発も少ないとみているようです」(永田町関係者)

 野党は体を張って阻止すべきだ。

日刊ゲンダイ
2018.05.16
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/229072