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福島の中学でムタマよりすごいピッチャーなどいなかった。
135km/hを投げたのはムタマだけだったし、アメリカ代表との交流試合で三振を取ったのもムタマだけだった。
だが、高校に進学し彼女は世界の広さを知った。
奈良県の強豪校で野球部に入った初日、早速テストが行われた。新入生の基礎能力を測るそのテスト結果によって、彼らの所属が一軍から三軍に振り分けられる。
30人近くいるピッチャー希望者のほとんどが、140km/h近い速球を投げた。だけでなく、抜群の制球力や変化球も持っていた。
福島の神童は、たちまち烏合の衆の一人となった。
二軍監督との面談では野手転向を勧められた。だが断った。私の七年間が無駄になると。
監督は、外野手になれば一年で過去の七年を越えられる才能があると説いた。ムタマは聞かなかった。
投手ムタマが二年後にどうなっているか、誰にも分からない。