プロジェクトX 〜朝鮮者たち〜
SABORU奇跡の利益率 ―残業代までも利益へ

工場長は、スバル首脳陣からもっと利益率を高めろと迫られていた。思案に暮れていた時、社長は意外な事を言った。
「完成検査の手を抜いてみたらどうだろう」 工場長は戸惑った。 ただでさえすきま風が吹いて目張りしてある様なボロボロの検査場で、無資格者に検査をさせコストを下げていたのだ。
「無理です!出来ません!」工場長は思わず叫んだ。
「俺たちがやらずに誰がやるんだ!俺たちの手で成し遂げるんだ!」社長の熱い思いに、工場長は心を打たれた。
「やらせてください!」それから、ありとあらゆる完成検査の項目を省き、更には電気ポットを使い手動で湿度調整までさせてみた。
しかし、あと僅かにコスト削減が足りなかった。内装は既にギシギシ言うくらいにコストを下げてある。コストカットの塊の様な車を造ってきたスバルにとって、これ以上は限界だ。
工場長は、運転をしながらPC仕事をこなし、来る日も来る日もコストと戦い、絶望していた。そこへ社長が現れ、そしてこうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。コストは車にだけ掛かっている訳じゃないだろう?」
そうだ。人件費だ。どうせ無資格の検査員や居眠りをしている従業員達だ。安月給でたまには徹底的に働かせればいい―
暗闇に光が射した気がした。工場長は試しに部下の残業代を未払いにしてみた。利益率が、上がった…!
「これだ、これが探してた俺たちだけのコストカットなんだ!」
社長と工場長は、工場の片隅で朝まで飲み明かした。 工場長は、更に自身の残業代までもカットされ、涙が止まらなかった。
「社長、部下に八つ当たりしてきてもいいですか!?」工場長は言った。
「ああ、いいとも。だがあまり叱責するなよ。過労死するかもしれんからな。」 社長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。