2018年2月6日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020602000150.html
五日午後四時四十三分ごろ、佐賀県神埼(かんざき)市千代田町の住宅に、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)所属の二人乗りAH64D戦闘ヘリコプターが整備点検後の試験飛行中に墜落、炎上した。乗組員の男性隊員一人が死亡、別の隊員の行方が分かっておらず、捜索が続いた。炎上した二階建て住宅には四人が暮らしており、このうち小学五年の女児(11)が右膝を打つ軽いけが。隣接する平屋も燃え、女児の祖母(69)がいたが無事だった。自衛隊機が住民を巻き込む重大事故となった。
神埼署によると、ヘリが墜落したのは会社員川口貴士さん(35)宅で、当時家にいたのは川口さんの長女の女児だけで祖母と墜落後に逃げた。
小野寺五典(いつのり)防衛相は記者団に、管制が午後四時三十五分に離陸許可を出した後、ヘリとの通信が途絶えたと述べた。機体に微量の放射性物質が含まれているとも明らかにした。
写真
県警によると、捜査は陸自が主導し、六日に現場検証を実施。業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の容疑を視野に入れている。
防衛省や陸自によると、ヘリは第三対戦車ヘリコプター隊に所属。午後四時三十六分に目達原駐屯地を離陸し、七分後に機首から墜落した。死亡したのは副操縦士の高山啓希(ひろき)一等陸曹(26)で操縦士の斉藤謙一二等陸佐(43)の行方が分かっていない。記者団の取材に山崎幸二陸上幕僚長は、事故調査委員会を設置したと明らかにし、被害家族らに謝罪した。
小野寺防衛相は「目達原の管制塔から見た状況では、東側から西側に飛行中、落下したもようだ。その後煙のようなものを確認したとの報告が入っている。フライトレコーダー(飛行記録装置)を搭載しており、回収して解析すれば詳細が分かると思う」と述べた。
現場はJR神埼駅から南約四キロの農地に囲まれた住宅密集地。周辺を国道264号が走り、近くには市立千代田中部小学校や大立寺(だいりゅうじ)幼稚園を運営する認定こども園もある。
<AH64Dヘリコプター> 陸上自衛隊が導入している米ボーイング開発の戦闘ヘリ。通称アパッチロングボウ。乗員2人、全長約18メートル、最大総重量約10トンで、最大速度は時速約270キロ。100以上の目標を同時に捉える高性能レーダーや、複数の航空機や地上部隊と情報を共有するためのデータ転送システムを搭載する。2001年に導入が決まり、陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀)と明野駐屯地(三重)、霞ケ浦駐屯地(茨城)に計13機を配備。当初は62機の予定だったが、途中で発注が打ち切られ、日本で製作に当たった富士重工業(現SUBARU)が防衛省を訴え、国が敗訴した。米陸軍も採用しイラク戦争にも投入された。
◆首相「同型機の飛行停止」 全自衛隊ヘリ点検も指示
佐賀県神埼市での陸上自衛隊ヘリコプターの墜落事故を受け、政府は首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置するなど対応に追われた。小野寺五典防衛相は事故発生から間もなく、官邸に入り、安倍晋三首相と菅義偉(すがよしひで)官房長官に状況を報告。首相は事故機と同型機の飛行停止と、陸海空全ての自衛隊ヘリの整備点検を指示した。
小野寺氏は防衛省で記者団に「住宅に墜落したことは大変申し訳なく、重く受け止めている」と謝罪した。佐賀県の山口祥義知事と松本茂幸神埼市長には電話で謝罪し、徹底的な原因究明と再発防止に取り組むと伝えた。対応に当たるため現地入りした大野敬太郎防衛政務官は松本市長らと面会。被害に遭った住民におわびしたことを報告した。
米軍機の事故やトラブルを巡り、政府は安全が確認されるまでの同型機の飛行停止などを米側に求めた。自衛隊機が民家に墜落した深刻な事故では、一層厳しい対応を求める声が強まりそうだ。 (新開浩)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020602000150.html
五日午後四時四十三分ごろ、佐賀県神埼(かんざき)市千代田町の住宅に、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)所属の二人乗りAH64D戦闘ヘリコプターが整備点検後の試験飛行中に墜落、炎上した。乗組員の男性隊員一人が死亡、別の隊員の行方が分かっておらず、捜索が続いた。炎上した二階建て住宅には四人が暮らしており、このうち小学五年の女児(11)が右膝を打つ軽いけが。隣接する平屋も燃え、女児の祖母(69)がいたが無事だった。自衛隊機が住民を巻き込む重大事故となった。
神埼署によると、ヘリが墜落したのは会社員川口貴士さん(35)宅で、当時家にいたのは川口さんの長女の女児だけで祖母と墜落後に逃げた。
小野寺五典(いつのり)防衛相は記者団に、管制が午後四時三十五分に離陸許可を出した後、ヘリとの通信が途絶えたと述べた。機体に微量の放射性物質が含まれているとも明らかにした。
写真
県警によると、捜査は陸自が主導し、六日に現場検証を実施。業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の容疑を視野に入れている。
防衛省や陸自によると、ヘリは第三対戦車ヘリコプター隊に所属。午後四時三十六分に目達原駐屯地を離陸し、七分後に機首から墜落した。死亡したのは副操縦士の高山啓希(ひろき)一等陸曹(26)で操縦士の斉藤謙一二等陸佐(43)の行方が分かっていない。記者団の取材に山崎幸二陸上幕僚長は、事故調査委員会を設置したと明らかにし、被害家族らに謝罪した。
小野寺防衛相は「目達原の管制塔から見た状況では、東側から西側に飛行中、落下したもようだ。その後煙のようなものを確認したとの報告が入っている。フライトレコーダー(飛行記録装置)を搭載しており、回収して解析すれば詳細が分かると思う」と述べた。
現場はJR神埼駅から南約四キロの農地に囲まれた住宅密集地。周辺を国道264号が走り、近くには市立千代田中部小学校や大立寺(だいりゅうじ)幼稚園を運営する認定こども園もある。
<AH64Dヘリコプター> 陸上自衛隊が導入している米ボーイング開発の戦闘ヘリ。通称アパッチロングボウ。乗員2人、全長約18メートル、最大総重量約10トンで、最大速度は時速約270キロ。100以上の目標を同時に捉える高性能レーダーや、複数の航空機や地上部隊と情報を共有するためのデータ転送システムを搭載する。2001年に導入が決まり、陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀)と明野駐屯地(三重)、霞ケ浦駐屯地(茨城)に計13機を配備。当初は62機の予定だったが、途中で発注が打ち切られ、日本で製作に当たった富士重工業(現SUBARU)が防衛省を訴え、国が敗訴した。米陸軍も採用しイラク戦争にも投入された。
◆首相「同型機の飛行停止」 全自衛隊ヘリ点検も指示
佐賀県神埼市での陸上自衛隊ヘリコプターの墜落事故を受け、政府は首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置するなど対応に追われた。小野寺五典防衛相は事故発生から間もなく、官邸に入り、安倍晋三首相と菅義偉(すがよしひで)官房長官に状況を報告。首相は事故機と同型機の飛行停止と、陸海空全ての自衛隊ヘリの整備点検を指示した。
小野寺氏は防衛省で記者団に「住宅に墜落したことは大変申し訳なく、重く受け止めている」と謝罪した。佐賀県の山口祥義知事と松本茂幸神埼市長には電話で謝罪し、徹底的な原因究明と再発防止に取り組むと伝えた。対応に当たるため現地入りした大野敬太郎防衛政務官は松本市長らと面会。被害に遭った住民におわびしたことを報告した。
米軍機の事故やトラブルを巡り、政府は安全が確認されるまでの同型機の飛行停止などを米側に求めた。自衛隊機が民家に墜落した深刻な事故では、一層厳しい対応を求める声が強まりそうだ。 (新開浩)