まえがき
作中に登場する人物や関係はすべてフィクションであり実在の人物および団体とは関係ございません。
果南さん「照れてるの? 可愛いよ」
落ち着いたなかに力強さを感じる声が耳元から脳を満たす。
どくん。どくん。どくん。
血液が勢いよく全身を回り始める。
果南さん「ねえ、いいよね?」
そういって果南さんは腰に回していた手でおらのお腹を優しく撫ぜる。
もう今日一日いろいろなことがありすぎておらの頭はとっくにパンクしそうになっている。
ダメって言わなきゃ……ダメって言わなきゃ……。
……本当にダメって言わなきゃ、なのかな……。
……だめだめだめ!! だめにきまってるずら!
ぐるぐるぐるぐると同じ言葉が頭をよぎっても、おらの頭はおらの口に命令を出すことを忘れてしまってただその言葉を思い浮かべることにすべてのリソースを使ってしまっている。
果南さん「ふふっ、黙ってるってことはいいんだね」
果南さんはもう一度おらを抱き寄せる。
あわわ……あわわ……。頭のなかはもうこれからされるだろうことへの恐怖と背徳感と何もできない自分への嫌悪と、それから好奇でいっぱいだった。
果南さん「はい、チーズ」
私「えっ、えっ」
いつの間にかスマホを取り出していた果南さんに言われるがまま、つい左手の人差し指と中指を弱々しくたててしまう。
果南さん「よし撮れた! ばっちりだね」
そう言うと果南さんは腕を引っ込めて、おらに背を向けて、靴を履き直す。
私「えっ……?えっ……?」
訳のわからぬまま、言葉にならない声が口から漏れる。それを聞いてか聞かずか果南さんはくすりと笑いながら振り返った。
果南さん「ふふっ、何されるの期待してたの?」ニヤ
私「なっ……!///」
大きく弧を描く果南さんの口元を見て、はめられたことに気づく。
私「果南さんの……」
私「果南さんのバカーーー!」ベシッ
果南さん「っいたぁ!」
ついかっとなって背中を思い切り張り手して果南さんを追い出した。さすがの果南さんと言えども痛いものは痛いらしい。
私「あ」
そこまで考えて、急に自分が何をやってしまったのか分かりはじめた。おら、果南さんになんてことを……。
このあと、あの人に何されるかわかったもんじゃない。
急に血の気が引いてきた。余計に試着室から出づらいずら……。
善子ちゃん「ずら丸、いる?」
次は善子ちゃんか。もうそっとしておいてほしい。
善子ちゃん「花丸?」
……。
善子ちゃん「あれ、おかしいわね……これあいつの靴なんだけど……」
善子ちゃん「もしかして……誘拐されたとか……?」
善子ちゃん「大変!! け、警察に……」
私「すとっぷすとーっぷ! おらならいるずら」
善子ちゃん「花丸! 良かったわ」
善子ちゃんだけじゃないけど、おらの周りの子達はみんな純粋だから結局どれだけ策を練ってもこうなることは最初から分かっていた。
善子ちゃん「あ、あんたに似合うと思って選んだから、着てみなさい」
そう言って善子ちゃんから渡されたのはサラサラしたベージュのロングスカートに、薄手の白のブラウスと茶色いチェックのベストだった。
さすが善子ちゃん。何となくおらの趣味を分かっているというか、これなら自分でも似合うというのが容易に想像できる。
わくわくしながら服を纏って鏡を見ると、やっぱりばっちり似合っていて、最初からこの服で今日出掛けたのだと言っても驚かれなさそうなほどだった。
私「善子ちゃーん!」
あまりにもぴったりなのでつい得意気に善子ちゃんを呼びながらカーテンを開ける。
善子ちゃん「おお……!」
善子ちゃん「ま、まあ、可愛いじゃない。さすが私が選んだだけのことはあるわね」
そう言いながら善子ちゃんは目をそらして頬を掻いた。
私「善子ちゃん、照れてるずら〜?」
つい面白くなってからかってみる。
善子ちゃん「う、うっさいわね!」
さらに真っ赤になる善子ちゃん。
私「ふふっ、否定しないの?」
善子ちゃん「〜〜〜!!//////」
私「かわいい♪」
その可愛さに、つい善子ちゃんの頭にぽんぽんと二度掌を当ててしまった。
善子ちゃん「私だって……」
私「?」
善子ちゃんの頭から引っ込めようとした手がまた引っ張られる。そのまま無防備に開かれてしまったおらの腕と胴体の間に善子ちゃんの腕が滑り込んでくる。そしておらの手のひらとクロスするように善子ちゃんの手のひらが結ばれる。
善子ちゃん「私だって、こうやってあんたをリードできるわ///」
善子ちゃんはそっぽを向いたままそう言った。組んだ腕同士が少し擦れるたび、どきっ、どきっと脈が流れ、善子ちゃんの一部が入り込んできてるような気分になる。
近くで見る彼女の横顔は思ったより見上げる位置にあって、ずっと前から知ってるはずの彼女の肌や艶や表情も、おらが知らないくらいに大人になっていたことを思い知らせる。ふと胸が締め付けられて、組まれた腕をぎゅっと掴む。
善子ちゃん「花丸……?」
私「ううん、なんでも……ないずら」
そうしてそのまま二人とも時が止まったかのように、しばらく口も開かずじっとしていた。
私「ごめんね」
そう言って善子ちゃんから手を離す。
善子ちゃん「なんで謝るのよ」
私「………なんとなく?」
善子ちゃん「ぷっ、なによそれ」ニコ
おかしくなって二人で笑い出す。やっぱりこういう気の合うところは、そのままだった。
曜さん「おお、その服似合ってるね!」
果南「善子が選んだのかな? さすがだね」
みんなそれぞれ自分の服を選び終わったのか袋を下げていた。
私「あ、ちょっと待ってて。着替えてくるね」
私「お待たせずら」
着替えを終えて試着室を出る。
曜さん「それで、花丸ちゃんは結局どの服を買うの?」
私「うーん、どれも素敵だから迷ってて……」
もちろんおらはいま3セットすべて買えるほどお金がない。
果南さん「マルが誰を選ぶのか、楽しみだな〜」
私「えっ?!」
なんか語弊があるような……でもよく考えたらないような……。もしかしてこれって重要な分岐選択ってやつずら?!
善子ちゃん「……私は花丸と、そして私自身を信じるわ」
格好良いこと言ってプレッシャーをかけないでほしいずら!!!
曜さん「花丸ちゃんに、私のお姫様になって欲しいな」
私「っ///」
なんでいつもは照れ屋なのにこういうときはこんなことをそんなに真剣な眼差しで言えるんだろうか。その眼差しに焦がされて、耳まで赤くなってしまいそう。
おらの憧れていた王子さまはやっぱりとても素敵な人だ。
▶曜さん
果南さん
善子ちゃん
選ばない
果南さん「マル、身も心も私の色に溺れてみない?」
私「〜!///」
その言葉に教室でのこと、映画館でのこと、さっきの試着室のこと、いろんなことがフラッシュバックして、頭が沸騰しそうになる。
でも、喉に刺さった魚の小骨のような感情が、このちょっと悪い先輩にめちゃくちゃにされてみたいとずっと囁いているのをおらは知っていた。
曜さん
▶果南さん
善子ちゃん
選ばない
善子ちゃん「……私があなたを一番近くで見てきたわ、花丸」
私「……///」
ずっと気づいていなかった善子ちゃんの気持ち。ううん、気持ちだけじゃない、大きくなって格好よくなったことも、いつも側にいてくれたことの有り難さも、今になってやっと気づいた。
胸がじんわりと熱くなる。おらの幼馴染は、きっと世界一の幼馴染みだ。
曜さん
果南さん
▶善子ちゃん
選ばない
曜さん「花丸ちゃん」
果南さん「マル」
善子ちゃん「花丸」
▶曜さん
果南さん
善子ちゃん
選ばない
曜さん
▶果南さん
善子ちゃん
選ばない
曜さん
果南さん
▶善子ちゃん
選ばない
うああああああああああああああ
こんなの無理! 無理ずら!!
みんなとっても大切だし、それにやっぱりおらには恋なんてまだ分かんないよ……。
曜さん
果南さん
善子ちゃん
▶選ばない
でも……それでいいんだろうか。
おらは三人の気持ちにちゃんと向き合わず、逃げてるだけじゃないのか。
曜さんはあのとき泣きそうな目をして胸に手を当てていた。
果南さんは顔色は変えなかったけど、言葉選びが不安を語っていた。
善子ちゃんも悩んで悩んで、それでも一歩踏み出した。
ルビィちゃんだって、善子ちゃんのために涙を流した。
みんな何かを変えたくて、このままじゃだめだって自分を奮い立たせたんだ。
おらはただ怖がって、分からない、分からないって言い訳してなにも決めようとしないまま、この関係に甘えてるだけだ。
おらも、おらの中に芽生え始めてるこの小さな感情と向き合って、「好き」を見つけていかなきゃいけないんだ。
そして、この目の前の三人と大好きな親友にそれをちゃんと話さなきゃいけない。
もちろん、今のおらが持ってる最大限のみんなへの応えも。
それがおらに真摯な気持ちをぶつけてくれたみんなへの最低限のお返しなんだ。
だから、今は「選べない」でも、いつか来る次は必ず「見つける」。それが単純な三択なんかじゃなかったとしても。
そう覚悟を決めて口を開く。
私「全部とっても素敵なお洋服だから、今度来たときに買うずら。今日は全部は買えないから」
曜さん「……そっか! 楽しみにしてるね」
果南さん「そ。まあまたいつでも着てきなよ」
善子ちゃん「ふふっ売り切れて後悔しても、知らないわよ」
みんな、どこか寂しそうではあるが、それでも笑顔で答えてくれる。やっぱり、とても、とても、強い人たちだ。あるいはそれぞれの一歩を踏み出して強くなったのかもしれない。
それからしばらくはぎこちなかったものの、みんなすぐに調子を取り戻してぎゃーぎゃー騒ぎながらデパートを見て回っては、周囲に白い目で見られた。
すっごくすっごく恥ずかしかったけど、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけそんな空気が幸せに感じたのは内緒ずら。
日が傾き始めて、おらたちはデパートから海岸へと移動した。本日最後の目的地だ。堤防の階段にみんなで腰掛ける。
曜さん「いやー、やっぱり海は良いね!」
善子ちゃん「いっつも見ててよく飽きないわね……」
果南さん「海は生き物だよ。毎日顔つきが少し違うんだ」
私「ほえ〜」
よくわからなかったけど、海とずっと触れ合ってきた二人が言うんだからきっとそうなのだろう。
果南さん「……マルは、今日楽しかった?」
少し眉を下げて視線を下へと傾けて果南さんはそう言った。
私「もちろん、すっごく楽しかったずら!」
果南さんはほっとしたように一息ついて、「それなら良かった!」とにかっと笑った。
善子ちゃん「私も楽しかったわ」
そう言う善子ちゃんの顔は晴れ晴れとしていて、どこか満足気であった。
曜さん「花丸ちゃんだけじゃなく、この4人で来れて良かったよ」ニコ
4人。おらと、この3人。
みんなそれぞれ素敵な3人で、そんな3人と一緒にこうやって遊べるおらは幸せ者なんだ、と思う。
善子ちゃんもうんうんと頷いている。でも。
果南さん「まあね。でも私は次はマルと二人でおでかけしてみたいかなー」
そうだよね、きっとみんな本当はそうなんだ。
善子ちゃん「果南さんに任せたらあなたが何されるか分かったもんじゃないわ。二人で出掛けるなら私にしなさい」
善子ちゃんも続く。
人を好きになるってきっとこういうことなんだ。
曜さん「あはは……。でも、私も花丸ちゃんと二人で遊んでみたいな……なんて」
おらだってそうだ。もし誰かを好きになったら、絶対、二人きりでおでかけしたくなるんだ。
だから、きっと、いつまでも「4人」ではいられないんだ。たとえそれでこの時間が終わったとしても、おらは今、おらの気持ちを伝えなきゃいけない。
私「……ぁ、あの……」
声が詰まりそうになる。おらも勇気を出してちゃんと言うって決めたんだ、負けるな、負けるな。震え出しそうな体を止めるため胸の下に力を込める。
私「……おら、みんなに伝えたいことが、あるんだ」
善子ちゃん「……!」
言え。
果南さん「へえ……?」
言うんだ。
曜さん「っ……」
言うんだ。
私「みんな、おらを……好きになってくれてありがとう」
かなようよし「……」
1つ。なんとか言い終えて一度息を飲む。
私「……ちゃんと返事しなくちゃだよね」
果南さん「…」
曜さん「!」
善子ちゃん「……」
私「おらは……」
おらのことを守りたいと言ってくれた曜さん。
おらをめちゃくちゃにしたいと言う果南さん。
おらと一緒に並んで歩いていきたいと言う善子ちゃん。
みんなの顔を順番に見回す。もう答えは決まっている。
あとちょっと。あとちょっと。もう少しだけ頑張れ、おら。
私「おらは……」
私「……ごめんなさい」
私「おらは……みんなの気持ちには応えられない」
言いきった。よく頑張ったね、おら。
曜さん「あっ……」
果南さん「……」
善子ちゃん「そう……」
気持ちを伝え終えて、視界に彩度が戻ってくる。自分の気持ちに向き合うのに精いっぱいだったおらは、そこで初めてみんなの表情を認識できた。
曜さん「は、花丸ちゃんならきっと良い人見つかるよ!」
声を震わしながら、それでもいつもと変わらないような笑顔で応援してくれる曜さん。
果南さん「……納得できない。どういうこと」
少し潤んだ目をキッと鋭く細め、歯を食い縛って、率直な理由を求める果南さん。
善子ちゃん「あなたの決めたことなら応援するわ」
あくまで冷静に、おらを落ち着かせてくれるかのように淡々と受け入れる善子ちゃん。
善子ちゃん「でも、その理由は聞かせて」
そう言うとさきほどまでの静かな雰囲気とは一転して力強い視線をこちらに向けてきた。
曜さん「わ、私はちょっと、もう帰ろうかな……よ、用事あったの思い出したし……」
そう言って急に立ち上がろうとする曜さん。思わず手が伸びて、曜さんの腕を掴む。
果南さん「曜。一緒に聞こう」
同じく曜さんを掴んで立ち上がるのを止めた果南さんがこちらも一転落ち着いたような口調で曜さんに訴える。
曜さんも諦めたように座り直したあと、胸に手を当てて深呼吸をすると、飛び込みの大会のときの写真で見たような強い強い眼差しをこちらへ向ける。
私「おらは……やっぱりまだ好きって、恋って、なんなのかわからなくて」
みんなの真剣な眼差しがおらに力をくれる。さっきよりもはっきりと、しっかりと、おらのそのままの気持ちが声になって、言葉になって、紡がれていく。
私「でも、曜さんも、果南さんも、善子ちゃんも、おらにとっては大切な人で、」
かなようよし「!」
私「だから、3人にいつまでも、おらのことを待ってもらうのは申し訳なくて、」
私「だから、だから……」
むき出しになったそのままの気持ちは口だけでなく、目からもじんわりと溢れ、零れ落ちていく。
私「みんななら、きっともっと素敵な人と、幸せになれるから……」ポロポロ
私「おらじゃ……おらじゃなくても……」ポロポロ
曜さん「なーんだ、そんなことか!」
私「……え?」
曜さん「花丸ちゃんに嫌われたのかと思ってびっくりしちゃったじゃん」
私「え? え?」
果南さん「マル相手じゃなかったらビンタしてるよ」
私「?」
果南さん「元から意地でもマルを振り向かせるつもりだから、覚悟しなよ」
私「……」
善子ちゃん「そんなことだろうと思ったわ」
私「う……」
善子ちゃん「あなたはあなたの気持ちを大事にしなさい。私も私の気持ちを大事にするから」
私「……!」
おら、馬鹿だ。大馬鹿だ。
みんなのことを想うあまり、みんなのこと、ちっとも信じてあげられていなかった。
みんな、それぞれちゃんと自分の幸せは自分で決められるんだ。
おらが何て言ったって、その結果の行動を決めるのはみんな自身だ。そんな当たり前のこと見落としていた。
私「ごめん……ごめんねみんな……」ポロポロ
私「ありがとう……」ポロポロ
果南さんが背中をさすってくれる。曜さんが頭を撫でてくれる。善子ちゃんがハンカチで涙を拭いてくれる。どこかで見たような光景に吹き出しそうになるが、とても心が暖かくなる。
私「おら、みんなのこと好き。大好きずら」
私「曜さんのいつも格好よくておらのこと良く考えてくれるとこや、本当は乙女なところが大好き」
曜さん「えへへ/// すっごくすっごく嬉しいよ! 私も花丸ちゃんが大好き!」
私「果南さんの頼もしくておらのこと気にかけてくれるところや、ちょっと強引なところも大好き」
果南さん「ふふっ、もっと好きにさせるからね。大好きだよ、マル」
私「善子ちゃんのおらと同じペースで同じものを見てくれるところや、真っ直ぐなところが大好き」
善子ちゃん「……/// ふんっ私の花丸への大好きの方が上なんだから!///」
私「みんな、みんな大好きずら」
私「この4人でいる時間もとっても楽しくて大好きで、だから、だから……」
私「もう少しだけ、お返事、待ってくれる……?」
曜さん「もちろん! いつまででも」
果南さん「私を選ぶことは変わりないからね」
善子ちゃん「何年気持ちを押し込めてたと思ってるのよ、今さら変わらないわ」
私「ありがとう……みんな本当に……」
私「大好き」
そう言うと三人はおらにハグして、そのまま少しだけ泣いた。
〜エピローグ〜
私「いってきまーす!」
おらは国木田花丸、15歳。好きな食べ物はみかんとあんこ、趣味は読書。浦の星女学院に通っているごく普通の女子高生ずらっ♪……あっ、ずらって言っちゃった……。
おらはこの大好きな内浦のお寺で大好きなお爺ちゃんとお婆ちゃんとずーっと一緒に住んでるからか、たまーに方言や訛りが出ちゃう時があるんだ。
他のみんなは訛りなんてないのにおらだけ訛ってると少し恥ずかしいから普段は気を付けてるの。だからもうずらなんて絶対言わないずら!……てへ。
いけないいけない。考え事ばっかりしてたら朝練に遅れちゃうずら。
「あなた昨日また抜け駆けしようとしたわね!」
「やだなー、早い者勝ち、恨みっこなしだよ」
「あはは、二人とも落ち着いて……」
「昨日曜がこっそり図書室に行ってたの知ってるよ」
「なっ……! 善子ちゃんだって体育のあと二人で片付けしてたって聞いたよ!」
「ちょっ…それは……あれよ……」
毎朝毎朝賑やかな三つの声が今日も変わらず聞こえてくる。おらもすっかり習慣になったおはよう代わりの挨拶を投げ掛けよう。きっと今日も素敵な日になるに違いない。
私「もう〜……みんな!」
私「マルのために争わないで!」ニコッ
おわり
あとがき
お読みいただいた皆様、ありがとうございます。初めに、作中に登場する人物や関係はすべてフィクションであり実在の人物および団体とは関係がないことを断らせていただきます。
いかがでしたでしょうか。作中に登場する三人の素敵な女性に迫られるようなドキドキを皆様も味わっていただけたならこの上ない喜びです。
この小説を書き始めたのは、自分の憧れの人との青春の一幕がきっかけでした。若い頃にしか味わえないような激しい胸のときめき、心を引っ張って勝手に突き動かしてしまう体の熱さ、そういったものが私にこの小説を書かせました。
なんとか書き終わるまで時間がかかってしまいましたが、こうして書き上げられて、私の気持ちを小説に保存することができて、非常に嬉しく思います。
みなさんは恋してますでしょうか。私も恋多き乙女の一人として、恋する皆様の毎日が素敵であることを遠くから祈っております。
最後に執筆に際し、支えてくれた母、父、祖父母、二人の先輩と幼馴染み、友人たちにここで感謝の意を表します。
H.K
0200名無しで叶える物語(しうまい)2019/11/02(土) 21:44:04.04ID:M+ApDc5A
―――
――
―
ダイヤ「……なんですの、これは」
黒澤ダイヤは部室で呆然としていた。
休日だと言うのに一人部室の片付けをしようと学校を訪れていた彼女はふとロッカーの中に見つけた一冊のノートに目を奪われ、気づくと読み耽っていた。
なんとそこに書かれていたのは同じグループのメンバーであり友人である人たちの小説であったのだ。
黒澤ダイヤが呆然としていたのは、その内容もそうではあるが、小説自体に思わずのめり込んでしまったこと、そしてここに書かれている内容が事実なんじゃないかという疑いなど、様々な思考が混濁した故だった。
ガラガラガラ
部室のドアが突然開き、小麦のような綺麗な茶色の髪を靡かせ、背の小さい美少女が部室に入ってくる。
花丸「ダイヤさん、手伝いに……きた……ずら……」
黒澤ダイヤは思わず手元のノートを隠そうとするも、間に合うはずもなく、国木田花丸は見覚えのあるノートが黒髪の綺麗な少し怖いが優しい先輩の手の中にあるという事実から何があったかを推測する。結論は―――。
逃げるッ―――!
花丸「ちょっと用事思い出したずら」ダッ
黒澤ダイヤは一瞬呆気にとられるも、このノートについて追求せねばならないことに気がつき一歩遅れて走り出す。
ダイヤ「こら、待ちなさい!!」
花丸「い・や・ず・ら!」
ダイヤ「ここに書かれてるのは事実なんですの?!?!」
花丸「えへへそれは……」
ダイヤ「それは……?」
国木田花丸は言葉を一旦止めて頬を少し赤くしてからいたずらっ子のように、でもどこか艶を含ませて微笑んだ。
花丸「なーいしょ、ずら♪」
ダイヤ「教えなさい〜〜〜!!!」
二人の少女の楽しそうな叫び声が校内に響いて、そして消えていった。
ほんとのほんとにおわり
お読みいただいた皆さん、応援コメント、貴重な意見をくれた皆さん、ありがとうございました
無事完結できてよかったです
また分岐を見たいと言ってくださった方もありがとうございます
今回は構成の都合上分岐はできなかったのですが、また機会があれば参考にさせていただきます
0205名無しで叶える物語(SIM)2019/11/02(土) 23:48:50.10ID:8VvaEX7Z
乙やで
おもろかったからまた書いてや〜
やはり国木田先生の夢小説だったか……
花丸の台詞が私「」の形だからかな、乙女ゲームのテキスト読んでるみたいで新鮮だった
すごいにやけてしまったよ
0209名無しで叶える物語(SB-iPhone)2019/11/03(日) 11:07:08.16ID:cSUujMTB
女の子の考え方ってこんな感じなんか?
流されるマル嫌いとか言ったけど
女の子がこういう思考してるとなると俺が考え方を改めなきゃだな