0001名無しで叶える物語(奈良漬け)2019/07/08(月) 18:27:33.92ID:cYr0UKPF
prrrr… prrrrrr…
ピッ
希『はいは〜い』
絵里「希、今どこにいるの?」
希『どこって、もうとっくにホテルに着いてるよ〜』
絵里「そうなの?」
希『エリチこそ遅いやん。何かあったん?』
絵里「よくわからないのだけど、車が動かなくなったわ」
希『なんやどっかぶつけたん?』
絵里「知らないわよ。突然速度が落ちてきて、そのまま…』
にこ「あぁ、そういえば昔の動画のどれかだかで、ミスってるのがあるとか言ってたっけ」
絵里「そうよ。先生ぶってえらそうな事言っといてあんなものは見られるわけにはいかないのよ」
希「ミスってのもあれやろ、言われてもよくわからん拘りレベルの小さいやつやろどうせ」
絵里「わかる人にはわかるのよ。あぁ……なんであんなものが永遠に残るのかしら…」
にこ「先生も大変ね」
希「でもその子らのグループって九人なんやろ?」
にこ「私もちょっと見たけど、なかなかのもんじゃない」
絵里「そうね。レベルは十分だと思うわ」
希「そんなグループの一人だけを今さらどうにかする必要があるん?」
絵里「あるに決まってるじゃない」
-次の日
タッ タタタッ タンッ!
絵里「はいストップ」
果南「ハァ、ハァ……」
絵里「カナン。あなた足腰が強いのね、体力も相当なものみたい」
果南「え…まぁ、毎日色々やってるし……」
絵里「でもダンスは自己流……だから全部身体機能で補う傾向にある」
果南「それがダメということですか?」
絵里「ステップやターンのほとんどを脚力とバランス感覚でカバーしている」
果南「ん? そういうものなんじゃ……?」
絵里「普通に踊る分にはまぁ十分よ。ただ、カナンが感じたあなたと私の違いはそこにあるわ」
果南「……………」
絵里「まずターンに関して、ステップからの流れを意識しすぎて脚で回ろうとしているわね」
果南「はい…」
絵里「ターンは腰で回るの。下半身と上半身それぞれのバランスでね」
果南「腰……」
絵里「下から持ち上げるのでもなく、上半身で引っ張るのでもない。直前のステップに流されないで、軸一本で回るの」
果南「んん?」
絵里「例えばそうね……カナンっ」
果南「はいっ」
絵里「つま先だけで立って、足腰を深く曲げることなく飛んで見て」
果南「え、ええ!?」
絵里「そして着地前に綺麗に一回転するの。360度綺麗にね」
果南「………………」
タッ クルッ …トンッ
絵里「んー…260度ってところかしら」
果南「はぁ…ふぅ……むぅ……」
絵里「一回転までもう少しね。はい、もういっかい」
果南「はいっ」
タッ クルッ トッ
果南「………くっ」
絵里「回るための時間稼ぎに高く飛ぼうとしても変わらないわよ。ジャンプ到達点でクルっと回る、これだけ」
果南「はぁ……難しい……」
絵里「基礎を自己流でやっていた分、窮屈に感じるでしょうね」
果南「ん……もう一回……」タッ
―――
――
絵里「………………」
タンッ クルッ トッ タンッ クルッ トッ
タンッ クルッ ザッ タンッ クルッ …ザッ
果南「はぁ、はぁ、もうちょっと…」
絵里「楽しそうね」
果南「え?」
絵里「単純動作の繰り返しなのに、どんどん楽しくなってきてない?」
果南「ま、まぁ……はい」
絵里「どうして?」
果南「んー……」
果南「今まで複雑なステップとかあっても、わりとすぐ出来るようになってたんですけど」
絵里「まぁカナンの運動能力なら色々できそうね」
果南「でも、やっぱり私よりすごい人なんてたくさんいて、自分の世界がいかに狭かったかって思い知って…」
絵里「ふむ………」
果南「だけどアリサさんのこの特訓をきっかけに、私はもっと先へ行ける……レベルアップできるって思うとつい」
絵里「なるほどね」
タッ クルッ ……ストッ
果南「………あ」
絵里「ん、今ほぼ回りきったんじゃない?」
果南「で、出来ました?」
絵里「そうね。正直今日一日かかるかなと思っていたのに、たいしたものね」
果南「あ、ありがとうございます」
絵里「ふふ、いい笑顔ね。それじゃおもしろいものを見せてあげるわ」
果南「ん?」
ス… タンッ クルッ ストッ
果南「え…さっきの一回転……でも……」
絵里「んー、350度ってところかしら?」
果南「…………?」
絵里「私はこれで綺麗に一回転なんて、できないわよ?」
果南「は、え、ええっ!?」
果南「でもこれがアリサさんにあって私にないものなんじゃ?」
絵里「私はできるなんて一言も言ってないし、カナンに必要な事とも言っていないわ」
果南「えっと……どういうことですか? さっきいかにも専門的な説明もしていたのに…」
絵里「ターンのコツとして言ったのは本当よ。でもこれができるからといって、あなたが私に見た印象は得られない」
果南「じゃあどうして…」
絵里「あなたが思うスゴイ私は、あなたが出来る事が出来ない。それはあなたが本来もっている実力の一つ…」
果南「私が……」
絵里「カナン。あなたはもっと自信を持っていいわ。この私が保証してあげる」
果南「アリサさん……それがこの特訓の目的?」
絵里「笑顔っていうのは、伝染するの。同じステージ上の仲間にも、会場のお客さんにも」
果南「はぁ…」
絵里「その笑顔をもっとステキなものにするのは、あとは内からくる自信に満ち溢れた自分自身なのよ」
-夜
希「アイドルは人を笑顔にさせる……偉人の名言であったね」
絵里「そうね」
希「それで、ダンスレッスンは終わったん?」
絵里「そのつもりだったんだけど、明日は明日で細かい部分をもっと見て欲しいって言われて」
希「頼りにされてるやん、先生」
絵里「きっともう大丈夫よ。あの子達なら」
カチャ
にこ「ふぃ〜やっぱリゾートホテルの設備って最高ね〜」ホクホク
希「お、本家や」
絵里「本物だわ」
にこ「んー?」
-次の日
絵里「はい、おはようございます」ビシッ
果南「おはようございます!」キリッ
絵里「それじゃー今日は……」
果南「あの……絢瀬絵里さん」
絵里「……………」
果南「……ですよね、μ’sの」
絵里「ふ、ふふ……よく気がついたわね」
果南「あ、やっぱり…」
絵里「ふぅ、あれだけ動画が出回ってちゃさすがにバレるか……」
果南「いえ、動画は見た事ないんですけど…」
絵里「あら、じゃあどうして?」
果南「最近まであんまり他のスクールアイドルとか見てなかったというか、興味なかったんですけど」
絵里「にこや花陽が聞いたら正座させられそうね」
果南「友達に一人スクールアイドルの、特にμ’sの熱狂的信者がいて、いくつか画像を見せてもらったことがあったんです」
絵里「信者って、もう随分昔の話なのに……」
果南「それで私自身最初に会った時、どこかで見た覚えがあるなーって思ってて、昨日ふいに思い出したんですよ」
絵里「そうだったの。ごめんなさいね、騙すつもりはなかったのよ」
果南「やっぱり今でもおっかけみたいな人はいるんですか?」
絵里「さすがにもう昔の私と今の私を重ねてみる人はいないわ。あなたのお友達が今の私を見ても幻滅させちゃうでしょうね」
果南「……いえ、きっとそんなことはないと思います」
絵里「そう?」
果南「はい。だって、私は絵里さんのダンスに見惚れました。綺麗だって、目が離せなくて」
絵里「ん……」
果南「それに昔の絵里さんじゃなく、今の絵里さんのようになりたいって思えたんですから」
絵里「…………」
果南「だから………絵里さん?」
絵里「んっ……なんでもないわ。ありがとう、カナン」
果南「いえ……」
絵里「さっ、レッスンは今日で最後だけど、時間いっぱい徹底的にやるわよっ!」
果南「はい!」
-夜
にこ「明日帰るまでの時間、まだ行ってないところあるー?」
希「めぼしいところは行ったかなぁ」
にこ「絵里ー、あんたはどっかないの?」
絵里「………」
希「エリチ?」ヒョコッ
絵里「わぁっ!?」ビクッ
にこ「スマホで何見てんの?」スッ
絵里「あ、こら!」
希「ん、写真……エリチと、これは誰?」
にこ「あ、確かスクールアイドルの…」
希「これが例の一番弟子?」
絵里「そんな大袈裟なものじゃないけど、まぁそうね」
にこ「あらら、いい笑顔しちゃってまぁ」
希「このツーショット可愛いやん。デカイし」
にこ「デカイわね」
絵里「もう、勝手に見ないの」サッ
希「んっ…。それでエリチは明日行きたいとことかあるん?」
絵里「ええあるわよ。三人分で予約しておいたから」
にこ「私らも? どこいくの?」
希「………はっ!?」
絵里「レッスンは車のお礼のつもりだったんだけど、なんだかこっちも貰っちゃったからね。あらためてお礼よ」
にこ「……まさか」
希「はぁ、仕方ないなぁ…」
-東京 とある宿泊施設
果南「〜♪」ニコニコ
鞠莉「カナン、さっきから何を楽しそうに見てるの?」
千歌「スマホの画像?」
果南「な、なんでもないよ。今日撮った観光写真っ!」
ダイヤ「まぁ、明日が本番だというのに呑気なものですわね」
果南「今さら何をどうしたってやる事は変わらないからね」
曜「なんだかカナンちゃん、雰囲気変わったね」
梨子「あ、私もそう思ってました」
果南「そう? 私は特になにもしてないけど?」
花丸「変わったというか、吹っ切れた感じずら」
果南「はは、そうかもね」
善子「なんかあったわけ?」
果南「んー、あったといえばあるかなー?」
ルビィ「え〜気になる」
鞠莉「なになに、白状しなさ〜い?」
果南「そんな大した事じゃ……あ、やっぱり大した事かも?」
ダイヤ「どっちですの?」
果南「はは、じゃあちょっとみんなに明日の秘訣とともに話してあげようかな」
おわり
0054名無しで叶える物語(茸)2019/07/08(月) 19:11:14.47ID:b3Ot71h5
みてるぞ
0055名無しで叶える物語(茸)2019/07/08(月) 19:11:42.09ID:b3Ot71h5
と思ったら終わった
gj
0056名無しで叶える物語(たこやき)2019/07/08(月) 19:15:33.29ID:Q5u7Mz7b
面白かったよ
0058名無しで叶える物語(こんにゃく)2019/07/08(月) 19:23:58.07ID:ibG9Pacy
すごくよかった!!乙です!
0060名無しで叶える物語(鮒寿司)2019/07/08(月) 19:43:23.33ID:U8hChtnG
μ'sとAqoursのss増えて欲しい。
面白かった>>1おつ 乙!μ'sとAqoursのSS、良いねぇ。良かった!
おつ
ダンスコーチ一人占めとか果南ちゃん贅沢ですなあ
おつ!
このssがSSラブライブの最後の更新だったよ
0070名無しで叶える物語(庭)2019/07/09(火) 00:53:18.58ID:TCZmQ3U1
サイトも壊れたか
バトンを渡すとかそういう雰囲気の有るSSに弱いんだ
コピペのクソアホ絵里ちゃんかと思ったらかっこよかった
0080名無しで叶える物語(SB-iPhone)2019/07/09(火) 13:26:54.07ID:eZUP1whK
ハラショー
0081名無しで叶える物語(茸)2019/07/09(火) 14:16:35.65ID:r1Uiz5vB
果南 綾瀬のパクり
コピー元
0082名無しで叶える物語(関西地方)2019/07/09(火) 22:39:04.75ID:6ESdZHl0
乙です、素晴らしい
絵里も果南もスクールアイドルに真剣に向き合う姿が見れて良かった
0083名無しで叶える物語(関西地方)2019/07/09(火) 22:41:43.00ID:6ESdZHl0
>>69
あのサイトのトリを飾ったのがこの綺麗なSSで良かったよね 0084名無しで叶える物語(たこやき)2019/07/10(水) 15:39:31.10ID:o6/1sWiG
呼んだれよ
ダンス周りの特訓、なんか良かった
我流の天才を超一流が育てる系好きだからかな
0086名無しで叶える物語(庭)2019/07/10(水) 19:23:05.17ID:JDOSil/h
終ったSSばかり伸びて現行SSが伸びない可哀想な作者