0001名無しで叶える物語(たこやき)2018/04/03(火) 00:02:04.76ID:5s9OjtC1
代行
真姫「…」
「はぁ…教師も大変だわ」
真姫「あ、あの…」
「ごめんなさいね?本当は色々と話を聞きたかったんだけど…」
「私の生徒がちょっとオイタしちゃったみたいで、帰らなくちゃならないのよ」
真姫「はぁ…」
「それじゃあね?素敵な演奏ありがと!」ガラッ
バタン
真姫「……」
真姫「…普通ってなんだっけ」
ガチャ
真姫「!?」
「桜高けいおん部もよろしくね!」
バタンッ
真姫「…」
真姫「どこよそれ…」
【6day】
真姫「よく考えてみれば、別にこれと言って何かされた訳でもないのよね」
真姫「むしろ、色んな人に褒められてばっかりだったし」
真姫「…私のピアノってそんなにいいのかしら?」
真姫「……」ガタッ
ポロロ〜ン♫
___
_
真姫「〜♪」ジャ-ンッ
パチパチパチパチ
真姫「…っ」クルッ
「素晴らしい…いや、実にね」
真姫「あ、ありがとうございます…」
真姫(また普通っぽい人…?)
「ここまで心を揺さぶられたのは初めてだ」
「そして、曲調や演奏技術もさる事ながら、何よりも素晴らしいのは」
「音を奏でている君のその…」
「"手"だよ」
真姫「っ」ゾワッ
「雨の日の室内と言うシチュエーションと、容姿の美しさも相まって更に輝いて見える…」ド…
真姫「ぇ…」ドドド…
「抑え難い衝動だ…」ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
真姫「ひぃっ!?」
pipi!
「…おや、もうこんな時間かね」
真姫「〜っ!!」
「そろそろ奴がボロを出す頃…か」
「そして…我が絶対無敵の能力が発動する時……フフッ」
「ハーッハッハッハッ!!!」ガチャ
バタン
真姫「……警備ロボでも…」
真姫「いえ…きっと無駄ね…」
【7day】
真姫「これだけ間を開ければもう来ないんじゃ…」
真姫「……」
真姫(ホント…音楽は麻薬だなんてよく言ったものだわ)
真姫(たった一週間弾かなかっただけで、もう心がムズムズしてしょうがないもの…)
真姫(それでも嗜好品の域は超えていないのでしょうけど)
ポロロン♫
___
_
真姫「〜♪」ジャ-ンッ
真姫「…ふぅ」
真姫(ダメ元で警備ロボを置いてみたけど…)
真姫(ど、どうかしら…?)クルッ
キンッ!!
真姫「!?」
ゴトッ…
真姫(ロ、ロボ太郎が真っ二つに…っ!?)
「…嬢ちゃんよ」
真姫「は、はい!?」
「そいつはなんて楽器なんだい?」
「ヤケに染みる音を出すじゃねぇか」
真姫「ここ、これは…っ、その…」
「柄にもなく聴き入っちまったよ」スゥ
真姫(み、ミイラ男!?それに刀って…)
「なんてツラしてんだ?」
真姫「あ…あの…っ」
「この俺が褒めてんだからもう少し喜んだらどうだ?」
真姫「あ、ありがとうございます…」
「ただ…一つだけ気に喰わねぇ事がある」
真姫「〜っ」
「それは、テメェ自身に迷いがある事だ」
真姫「……えっ?」
「愉悦道楽なんざ人間の数だけ有るが、要は愉しんだ奴の勝ちなんだよ」
「だからテメェも、今有る現実を受け入れ、そして愉しんでりゃいいんだ」
「分かったか?」
真姫「…」
「…ん?」ジャラ
「なんだ、半刻近くも居たのかよ」
「地獄巡りの余興にゃ丁度良かったぜ」カチンッ
ボワァッ
真姫「…今ある現実ですって?」
真姫「そんなもの、とっくの昔に受け入れてるわよ…」
真姫「……」
真姫「愉しむ…か」
真姫「今までは、ほんの息抜きのつもりで弾いていただけだったけど」
真姫「本当に愉しんで弾く為には…」
真姫「…」
【8day】
〜♪
真姫「…こうじゃない」
真姫「私のメロディ…私の歌詞…」
真姫「そして私の演奏……でも、」
真姫「愉しくない…」
パチパチパチパチッ
真姫「っ」
「理解し難いな」
「だが、何かを感じ取っているのも確かだ」
真姫「…」
「この感覚は、あの探偵から赤子を取り返した時に感じたものと似ている」
「これは一体なんだ?」
真姫「…貴方は何故、聴きに来たの?」
「分からない」
「ただ一つだけ確かなのは、得体の知れない何かが…私の胸を強く叩いたという事だけ」
真姫「…」
「それが思考よりも早くこの体を動かし、ここまで足を運ばせた」
「君には、何か特別な能力でも有るのか?」
真姫「そんなもの…有るわけないじゃない」
「凡そ、種の保存には何ら関わりのない非生産的な行為。だが…」
「それら合理性を否定し、遂にはこの体を支配した命令にも似たあの衝動…」
「この先に一体何があるのか」
真姫「…少なくとも」
「ん?」
真姫「少なくとも、私の行く先はもう決まっているわ」
「ほう」
真姫「そしてそれは、今ここにいる事となんの関係もないもの」
真姫「つまり、蛇足の様な時間なのよ」
「では、君は一体何のためにここに居る?」
真姫「……」
「何の為にそれを弾いているんだ?」
真姫「…分からない」
真姫「でも…弾いていたい、弾かなくちゃいけないって言うその気持ちだけが…」
真姫「何故か消えないの」
「ふふ…」
「広川とは違った面白味を感じさせるな」
「お互い、きっとこの先に何かがあると、そう予感したから此処に居るのだろう?」
真姫「予感…」
「そしてそれは、やがて君たち人間の未来に繋がって行く」
真姫(そんな壮大な話じゃ…)
「安心するといい」
真姫「えっ」ドキッ
「この予感はきっと正しい」
真姫「あ、あの…」
「…泉新一なら、何と言っただろうな」
ガチャ
バタン
真姫「…」
真姫「予感…か」
真姫「私は今…何かを予感してる?」
【9day】
真姫「ほんと不思議だわ」
真姫「まさか、見ず知らずの他人に人生相談する日が来るなんてね」
真姫「でも、みんな褒めてくれてたな」
真姫「それに…」スッ
パカッ
真姫「…っ」
ジャラララ〜ン♫
真姫「〜♪」
ジャ〜ン♪
真姫「〜」
ポロロン…
真姫「…」
「あら、どうして止めてしまうのかしら?」
真姫「…分からないわ」
「それは不思議ね」
「貴方のそのどっち付かずな精神に、とうとう身体が叛逆したのかしら?」
真姫「っ」イラッ
真姫「…今日はえらく口の悪い人が来たみたいね」クルッ
「貴方ほどではないわ」
真姫(え…高校生…?それとも中学生?私とそんなに変わらないわよね…?)
真姫(でも、あの制服…何処のかしら?)
「何か珍しいものでも見つけた?」
真姫「…いえ」
真姫「今まで散々珍しい物ばかり見てきたから、今更どうということもないわ」
「そう、見た目の割に順応性は高いのね」
真姫「っ」
真姫(なんか腹立つわこの子…) キッ
「ふふ、そんなに恐い顔しないで?」
「今日は貴方にいい情報を提供しに来たのだから」
真姫「いい…情報?」
「まず一つ」
「貴方への訪問客は、私で最後よ」
真姫「!」
「次に」
「貴方はコレから、人生の分岐点とも言うべき出来事に遭遇するわ」
真姫「え…?」
「一つは、あなた自身が望んだかも知れない未来」
「もう一つは、他の誰かが望んだかも知れない未来」
「貴方はどちらを選ぶのかしら?」
真姫「……」
真姫「…意味わかんないわ」
「そう」
「貴方、結構バカなのね」
真姫「っ!」
「これだけ分かりやすく説明してるのに言葉の意味が分からないだなんて」
真姫「そ、そう言う事じゃないっ!!」
「あらそう」
真姫「どうしてなの!?」
真姫「どうして貴方たちは…っ」
「こんなお節介をするの?かしら」
真姫「〜っ」
「暇だからよ」
真姫「なっ!?」
「例外も何人かいたけど、私達はそれぞれが、既に存在を完結させた人達の集まりなのよ」
「つまり、お役御免の暇人ってワケね」
真姫「??」
「まぁ、そんな事はどうでも良いわ」
真姫「分かるように説明しなさいよ」
「…本当は」
真姫「え?」
「いえ、何でもないわ」
真姫「なんなのよ…」
「さぁ、どうするの?」
「実のところ、貴方の向かえる道は中々に多いわよ?」
真姫「…」
「例えば」
「これからクラスに突撃して一人漫才を始めたり」
真姫「や、やる訳ないでしょ!?」
「そこの窓から飛び降りてみたり」
真姫「…馬鹿にしてるのね?」
「このままピアノをやめたり」
真姫「っ!」
「ホント、人生は忙しないわね?」
真姫「他人事だと思って…っ!」
真姫「大体道が多いって、そんなの誰にでも言える事じゃないのよっ!」
「そう、誰にでも言える事なのよ」
「だから、人よりちょっと選択肢が多いクセに、勝手に決め付けてる貴方にも理解できる様、こうしてわざわざ説いてあげてるのよ」
真姫「〜っ」
「これだけ言ってもまだ分からないと言うの?西木野真姫」
「貴方はどこまで愚かなのかしら?」
真姫(ホンットに腹立つわこの子っ!)
「…ふふっ」
「冷静そうに見えて、その実…心の中は炎が渦巻いている」
「最初に見た時、そんな印象を受けたわ」
真姫「…」
「でも…猛る炎も何れは消えゆく」
「貴方は、それを最後まで眺める人?」
真姫「…」
「それとも」
真姫「…私は」
真姫「私はまだ…弾いていたい」
真姫「私の人生の本懐は…此処じゃない気がするの」
真姫「曲を作って、弾いて…そして歌う」
真姫「そうしている内に、段々湧き上がって来る気持ちがあったの」
「…」
真姫「誰かにこの曲を知ってほしい」
真姫「誰かの助けになって欲しい」
真姫「そして…」
真姫「誰かと一緒に歌いたい」
「…そう」
「なら、思う存分弾くといいわ」
「それが貴方のやりたい事なら、迷わずそうすべきよ」
真姫「…」
「何かしら?」
真姫「貴方…」
真姫「その赤いリボン、よく似合うわね」
「……フフ、」
「夜が明けるわ」
パチンッ
真姫「!」
真姫「……」
真姫「……あれ?」
真姫「私…何してたんだっけ?」
真姫「思い出せない…」
【0day】
真姫「〜♪」
真姫「あいしてる〜ばんざ〜い♪」
真姫「ここで〜よか〜った〜♪」
ジャンジャン♪
真姫(ここ数日の記憶がなんだか曖昧だわ…)
真姫(それに、ピアノはもう辞めるつもりだった筈なのに)
ポロロ〜ン♪
真姫(何故だか今は…全然辞める気がしない…)
ジャーン
真姫「……どうして…」
パチパチパチパチッ
真姫「えっ!?」
ガラガラッ
「上手だねーっ!」
真姫「!?」
「いやー、歌声もとっても素敵だったよ!」
真姫「ま、また来たの!?」
「え?なんの話?」
真姫(あれ…?また?)
「今日が初めてだよ?」
真姫「…あ、あなた誰よ!?」
「おっとっと、ごめんね?」
「私の名前は…」
「高坂穂乃果って言います!」
【幕外】
「お疲れさま」
「…アレで良かったのかしら?」
「えぇ、ありがとう」
「あのままだと、本当にピアノを辞めかねなかったから」
「それも一つの人生よ」
「…そうね」
「ところで」
「ん?」
「あの人選は一体何だったのかしら?」
「あぁ…そのこと」
「事情を知った穂乃果が、勝手にあっちこっち声を掛けちゃったのよ」
「”私の親友がピアノを辞めそうなんで励ましてあげて下さい!”」
「なんて言いふらすのよ」
「要は、リーダーさんが来るまでの時間稼ぎがしたかっただけなのでしょ?」
「あの強面連中相手に良くやるわ」
「本当よ。まるで授業参観日の気分だったわ」
「…それにしても」
「あのリーダーさんがこっちの世界に居なくて本当に良かったと思うわ」
「なぜ?」
「だって、あれだけの影響力を持った人間だもの」
「絶対に契約させられてたわ」
「…なるほど」
「ところで」
「なに?」
「今し方、紅茶を淹れたのよ」
「あら、それじゃあ頂くわ」
「良ければスコーンもどうぞ?」
「えぇ。漸くティータイムが出来るわね」
「それならあの子達も良く開いているじゃないの」
「…彼処は騒がしいから嫌なのよ」
「穂乃果たちは毎日の様に混ざってるけど」
「私の先輩だった人も入り浸ってるわね」
「一度、合同ライブしてからずっとお祭り状態なのよ。まったく…」
「その割には楽しそうに話してるけど?」
「…フン」
「それにしても…ふふっ」
「なんなの?」
「さっきから気になっていたのだけれど」
「?」
「そのサイドテールは、一体どう言った心境の現れなのかしら?」クスクスッ
「…」
「…ほっといて」
終
Special thanks
【1day】利根川幸夫と黒服ブラザーズ
【2day】範馬勇次郎
【3day】フリーザ様
【4day】鷹野三四と小此木造園(山狗部隊)
【5day】山中さわ子
【6day】吉良吉影(川尻浩作)
【7day】志々雄真
【8day】田宮良子(田村玲子)
【9day】暁美ほむら
0072名無しで叶える物語(庭)2018/04/03(火) 11:49:31.87ID:SBSM1/f2
乙、こういう雰囲気のすこすこのすこ
おつおつ
懐かしのキャラ勢揃い感
田宮は後半の怒涛のヒントでわかったわ