・現代ヨーガの系譜 『宗教研究』2011年3月号 伊藤雅之 愛知学院大学


1990年代後半以降、身体的ポーズ(アーサナ)に力点を置いた現代ヨーガは、アメリカ、イギリスをはじめとする世界各国で流行し、現代社会に広く浸透するスピリチュアリティ文化の主要な担い手となってきている。
アーサナを組み合わせた体操は、ヨーガの実践者、とりわけ熱心な実践者にとってはスピリチュアルな探求として捉えられる場合が多い。

そもそも現代ヨーガは、いつ、どのように発展したのだろうか。

現代実践されている(ヨーガの)アーサナの大半は、十九世紀後半から二十世紀前半にかけて西洋で発展した身体文化を強調する運動に由来する。
この身体文化は、キリスト教の伝導活動であるYMCAによって、またイギリス陸軍によってインドに輸出された。
その後、インドの伝統武術と融合し、伝統的な「ハタ・ヨーガ」の名のもとに(を自称して)まとめられた。
それが現代のアーサナの起源である。

つまり、今日世界的に流行しているヨーガは、『ヨーガ・スートラ』に代表される古典ヨーガや中世以降に発達した(本来の)ハタ・ヨーガとの結びつきは「極めて」弱いと言えるだろう。

現代ヨーガは、1920−30年代頃に、「現代ヨーガ」の父と呼ばれる、T・クリシュナマチャリア(1888−1989)によって行われた。
彼は、西洋の身体文化から発生した数多くの体操法を自らのヨーガ・クラスにおいて積極的に採用し、それをインドの伝統的ヨーガであるハタ・ヨーガの技法として確立(自称)したのである。
同時に、その理論的基盤としてヴィヴェーカーナンダをはじめとするヒンドゥー復興運動の思想および『ヨーガ・スートラ』を援用した。つまりクリシュナマチャリアによって、西洋式体操がヨーガに仕立て上げられたのである。

http://ci.nii.ac.jp/naid/110008514008