PCR検査は公的医療保険でできるようになったが、インフルエンザの検査のようにどの医療機関でもできるわけではない。定められた「帰国者・接触者外来」を受診し、医師が必要と認めた場合に限られる。

 「検査を限定しているので隠れた患者がいるのではないか」との声がある。政府の専門家会議メンバーの岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「感染が広がり、隠れた患者がいれば、各地の病院で原因不明の肺炎が増えているはずだが、そのような話はない。
すべての患者を把握できていないかもしれないが、その数は多くはなく、重症者や死亡者としては出てきていないと思う」と説明する。(松浦祐子)


■重症者を優先、治療につなげる

 聖路加国際病院QIセンター感染管理室マネジャーで看護師の坂本史衣(ふみえ)さんに新型コロナウイルスのPCR検査について聞いた。

 ――検査を望む人が増えています。

 感染のあるなしを正確に判定できると誤解があるようです。PCR検査は感染しているのに陰性となる「偽陰性」や感染していないのに陽性と判定される「偽陽性」が出ることが避けられません。
100人の感染者のうち最大でも約70人しか検査では陽性にならないとみられています。
本当は感染しているのに、検査結果が陰性だったら感染を広げる可能性があります。
本当は感染していないのに陽性になれば、隔離のため入院することになり、病床不足につながりかねません。

 ――幅広い人に検査が受けられるようにした方がいいという意見もあります。

 どれくらいの人が感染しているかを調べることに意義がないとは思いません。現在も集団感染がおきた場所では症状によらず接触者を検査しています。ただ、全国的な調査をやる時期ではないと思います。
今検査を行う最大の目的は、重症者を治療につなげ、死なせないことです。そこに医療資源を費やすべきです。軽症者を洗い出す検査を増やすことで、重症者への対応が遅れてはなりません。

 ――早期発見、早期治療とよく言われています。

 新型コロナウイルスの場合、風邪のような症状が1週間ぐらい続き、そのまま治ってしまう人が約8割、約2割が重症化すると言われています。
ただ、早く見つけても重症化を防げるわけではなく、早く病院へ行くメリットはないのです。

 病院へ行って院内感染を起こすリスクの方が大きいです。病院には重症化しやすい高齢者や、循環器系や呼吸器系の慢性疾患の人が集まっています。
こうした点から、不確実性が高いPCR検査を受けるために病院へ行く意味は非常に薄いと言わざるを得ません。

 ――海外ではより多くの検査をしているようです。

 通常、接触歴が追えて封じこめが望める状況では無症状者を含めて多くの検査をしますが、国内に接触歴がわからない患者が増えてくると、重症者を中心に検査する方向に徐々にシフトしていきます。
PCR検査はインフルエンザの迅速検査とは違い、検体を検査機関に運び特殊な技術を使って遺伝子を抽出して、特別な機器で増幅させます。
専門的な訓練が必要で、病院の検査技師なら誰でもできるわけではありません。

 つらくなければ自宅で療養して下さい。高熱が続く場合や息苦しさが出れば、帰国者・接触者相談センターに電話をした上で医療機関を受診してください。
「非感染の証明書」をもらいに病院へ行くのはデメリットしかありません。

(抜粋)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200325-00000010-asahi-sctch