>>231
購入した

日々ストーカーに捏造に新聞の押売りにと、精力的に働く労働中毒天狗、射命丸の
束の間の休日と秘密のリフレッシュ方法を描いた、そんだけの一般向け漫画である

以前推薦のあった、こいしちゃんが地上に脱走して霊夢さんから焼き芋貰うだけのお話、
『こいしのみち。』をご執筆なされた、そんだけ。さんによる、そんだけ。のお話である

ペンネームが体を現すというか、そんだけ。さんは、他人から見ればありふれた日常でも
当人にとってはかけがえのない幸福の形を描くことを、一つのテーマとしているのだと思う
タイトルの末尾に句点が付くのも、一種のプリセットルーティーンのようなものなのだろう

セリフはごくごく最小限にとどめられながら、後は「絵で読者に話を想像させる」技法によって
ページ以上の奥行きを生ませている。ゆえにぼくなりに話を補完しつつあらすじを纏めると
以下のようになる


ある日、射命丸は仕事の合間をぬって、人里はずれのモダンなカフェへとやって来る。
種族人間の少女が切り盛りするお店ではあるが、客層は人間よりもむしろ人里近辺の
オサレな妖怪ガールたちがメインとなっている。射命丸もまた、この店の大常連である

射命丸は「いつもの席」を希望し、2階の窓辺の席へと通してもらう。これには理由がある
この店の2階の窓には青色が入っており、魚のステンドグラスが施されているのである
ケーキも絶品ながら、射命丸がこのカフェで一番好きなのは、この魚の描かれた窓であった

幸せを噛みしめるように甘い甘いケーキを食した射命丸は、頬杖をついて窓を眺める
薄目に、遠目に窓を眺めていると、窓の青は小さな海に変わり、魚たちは自由に泳ぎ出す
ガラスに照らす陽光はさながら水面の煌めきで、それを見上げる射命丸はさながら海底に
身を沈めたワカメのようなものである。ゆらりゆらりと揺れ、射命丸の意識も眠りへと沈む
それは、幻想郷にやって来る前、射命丸が見た、遠く懐かしく切ない海の記憶でもあった
射命丸が眠りに落ちるのとほぼ同時に、例によって幻想郷に闖入してきた秘封倶楽部が
女子力をかぎつけてこのカフェにたどり着く。外来人が、それも時空を超えてやって来るなど
超大スクープであるが、そんなことはつゆ知らず、まるで険が落ちた年相応の少女の顔で
射命丸はスヤスヤと眠りこむのであった

てなことをクッソふえるワカメちゃんこと早苗に話したところ、滅茶苦茶うらやましがれる
文だけくつろぐのはズルいと、膝枕するハメになった上、「騒動を起こさない事」を条件に
今度早苗もカフェに連れて行くことを約束させられる。多分こいつら出来ている。あやさな

後日、約束通り射命丸は早苗をカフェに連れて行くが、情緒とか欠落しているとしか思えない
ほんさくの早苗は「本物の海の魚を見せてあげます!」とでもほざいたのか、ピチピチの鮮魚を
奇跡的にファフロツキー(召喚)し、射命丸を悪い意味で仰天させるのであった


繰り返しになるが、たまの休暇にシャレオツなカフェに行くことくらい、外界のそこらの女子でも
やっている行為だと思う。ゆえに非常にありふれた、それでいて当人にとっては特別な体験の
物語であると言えよう。射命丸の目が、終始キラキラと光を帯びていることからも、いかにこの
些細な日常を愛しているのかをうかがい知ることが出来た。実際射命丸は幻想郷愛を前面に
押し出すキャラの一人であり、管理人サイドではない一住人としては、過分で純粋な愛をもって
日常を過ごしている稀有なキャラであるという点を、とても上手く描き出していたと思う