あの人という思考が湧けば、あの人が現れる。
特定の出来事が思いの中に現れた時、その出来事が活気づく。
しかし、世界を想起しなければ、世界は存在しない。
特定の人や出来事を思い出さなければ、それらも存在しない。
思いとして湧きだした時だけ、それらはある。
耳を澄まして、ただいまの中に佇んでみる。
窓の外の木々の揺らめき
鳥たちの声
流れる空気
畑のモーター音
目の前のパソコン画面
コーヒーの香り
ほんの少しの憂鬱
背中の張り
鼻づまり
椅子のシートの柔らかさ
これがいま起きていること。
ただこれが、こうしてあるだけ。
そしてこれからも、ことは瞬間ごとに起きつづけていくことだろう。
誰かがそれをやっているのではない。
ことはただ、起きているのだから。