政府は18日、日本産ホタテの殻むきなどの加工業務を、受刑者の刑務作業に加える方針を固めた。東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を受け、中国は日本産水産物の全面的な輸入停止措置を続けている。中国で日本産ホタテの加工ができなくなっていることから対応策を決めた。

 農林水産省と法務省の幹部が同日、自民党幹部に経緯を説明した。中国に輸出されるホタテは、加工後に中国から米国に再輸出されるケースがあった。日本では加工業務を担う働き手不足が課題となっており、受刑者の刑務作業に加えるなどして日本国内での加工を促し、中国への依存脱却を図る考えだ。

 農水省などによると、刑務所内でホタテを加工すると、欧米などに輸出するために必要な食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」を満たすことができないため、受刑者を加工場に派遣して作業させる予定だ。

 仮釈放の決定など一定の要件を満たしている受刑者は、刑務官らの同行なしに刑事施設外の民間事業所に通勤して作業に従事することができる。事業者側は労務賃を国側に払う必要があるが、一般の労働者に必要な福利厚生費や保険料などがかからないメリットがある。

 ホタテの2022年の国内生産量は51・2万トン。このうち北海道が42・5万トンを占めており、殻むきの刑務作業を行うのは主に北海道内を想定する。

 日本全国から中国への輸出は14・3万トンで、このうち冷凍の殻付きは9・6万トンを占める。農水省は中国で加工後に米国に約3万~4万トンが輸出されていると推定する。

 農水省幹部は「大事なのは地元の理解。社会復帰の支援になる。手を挙げてくれる事業所があれば調整したい」としている。【山下貴史】

毎日新聞
2023/10/18 20:09
https://mainichi.jp/articles/20231018/k00/00m/010/261000c